episode1:yumeka and suzuka
子供は四人。生まれた順から
夢花、女
鈴花、女
壺花、女
寿次、男
「お父さんなんてだいっきらい!」
突然店中に響いた大きな声。
振り返れば出入り口で向き合っている彼と夢花の姿があった。
またか、と思いながら溜息吐くと義母が「代わるから」と接客の交代を申し出てくれる。
「代わるから止めて」という略なのも慣れてきたのでわかり、二人のもとへ向かう。けれど着く前に夢花は店を出て走って行ってしまった。
慌てて追おうとするが彼に止められた。
「すぐに帰ってくる」
そう言ってくるりと背を向けると奥へ行ってしまう。
近くにいた常連のお客さんに「いつも元気だねぇ」と声をかけられたが苦笑いしかできなかった。
「お母さん。お姉ちゃんは私がどうにかするから、お父さんのところ行ってあげて」
袖をつんと引っ張ったのは次女の鈴花。いつもながら聡く、優しい子。
「いつもごめんね、鈴花」
「気にしないで、お母さん。みんながぎくしゃくするのはやだもん。行ってくるね」
頭を撫でれば、そっと背を叩かれる。安心して、というように。
走り去って行く鈴花を見送った後、義母と義父に事情を説明し彼のもとへ行く。
思っていた通り廊下に突っ立って魂が抜けたかのような顔をしていた。
「あなた」
「だいっきらいっていわれた……」
うなだれてしまっている彼を部屋に引きずり込み座らせると、ぎゅっと抱きしめられた。
その背と頭をそうっと撫でる。すると更にきつく抱きすくめられる。
「なにがあったのですか」
「最近帰りが遅いから注意したんだ。最初はそれだけだったのに……」
それからまたしょぼしょぼと話し出す。
「またよけいなこと言ったんですね。もう」
二人の喧嘩はいつも彼の一言から始まり、負けず嫌いの夢花が反論し発展してしまう。それを彼が抑えられればいいのだが、どうもうまくいかなくて喧嘩後、こうして落ち込んでいるのを無理矢理引っ張って仲直りさせる。鈴花も手伝ってくれるので、あの子には本当に感謝している。
「すまない、壺鈴」
「私ではなく夢花に謝ってください」
わかっているのだ。彼が怒るのも子供を思ってのことだと。けれど子供にそれをわかれというのは難しい。それを理解しているのは鈴花くらいだから。
「あなたは間違ったことを言ったわけではないと思いますよ。ただ、頭ごなしに言っても子供にはただ“怒っている”ということしか伝わりません。何がだめなのか、どうしていけないのか、それじゃあどうすればいいのかを、子供の目線に合わせて教えてあげてください」
寄りかかってくる彼の頭を撫でながら話せば、小さく「わかってる」という呟きが聞こえた。
理屈はわかっている、ということだろう。それでも感情が高ぶりそれもできなくなるのは、それだけ子供を心配し気にかけてくれているから。
どちらも悪くない。
「お仕事終わったら夢花に謝りましょう。私もいますから」
「壺鈴」
「はいはい、お仕事に行きましょう」
子供のように抱きついてくる彼を立たせ、そっと背を押す。
「鈴花にお礼言ってくださいね」
彼は鈴花、と彼女の名を呟くと眉を寄せる。
「あの子は良い子すぎないか」
その言葉にはっと顔を上げる。
「一度きちんと話さなければだな」
彼はいつも通りに颯爽と店へ戻って行く。少し遅れてその後を追った。
川べりに二人の少女が座っている。
一人は長い髪を高い位置でひとつにまとめ、赤地で蝶の飛び回る着物。
もう一人は同じように長い髪を低い位置でまとめ、着物は黄地の球の柄。
生い茂る草で器用に舟を作り流す。ゆらゆら揺れ消えていく様子を見つめながらぽつりと赤い着物の少女が呟く。
「お父さんなんて大っきらいだもん」
同じように舟を流した黄色の着物の少女はそれに答える。
「でもお父さん、お姉ちゃんのこと心配してたよ」
「どうせお母さんに泣きついてるんでしょ!お父さん、私のことが嫌いなんだよ。だからいっつもいっつも怒って。いいよね、鈴花は。お父さんもお母さんも鈴花には怒らないもん」
黄色い着物の少女―鈴花は俯く。けれどすぐに顔を上げた。
「でもお父さん、お姉ちゃんのこと一番好きだよ。お姉ちゃんに怒った後、いつも落ち込んでるもん」
けれど赤い着物の少女―夢花は首を振り、そばにあった石を川へ投げる。
「違うよ。お父さんはね、寿次が大事なんだよ。お母さんの次にだから私たちの中では一番。だって男だもん。“後継ぎ”なんでしょ?」
「だから寿次もきらい」と呟き、夢花はまた石を投げる。それは綺麗に弧を描いて沈む。
「壺花は? 壺花もきらいなの?」
心配そうに見上げる鈴花の方を見ないで、夢花は「きらい」と答えまた石を投げる。
「でも鈴花はいいよ。何にも言わないから」
石を手渡された鈴花はできないよ、と抗議するも逆らえずえいと投げる。あまり遠くへは飛ばず、はねた水が少し足にかかる。
「もっと大きく伸ばすんだよ。見てて」
そう言って飛び上りながら投げた夢花はうまく着地できず、危ないと叫ぼうとした鈴花の声は驚きの声に変わる。
「っと、危なかったな。夢花ちゃん」
「にゃあ! って……梅おじちゃん」
夢花の脇を支えるのは梅おじちゃん――もとい梅都だった。
「梅おじさんすごいね! さっきのどうやったらそんなにうまくすべってこられるの?」
少し興奮気味の鈴花にそっと夢花を下ろした梅都はへへっと頬を掻く。
「そういう二人はどうやってここに降りたんだ?」
梅都は自分が降りてきた道とはいえない崖に近い場所を見上げる。
「梅おじちゃん知らないの? ここ階段があるんだよ! きてきて!」
夢花と鈴花に手を引っ張られ梅都がつれてこられたのは、相変わらず草が生い茂るところ。どこも同じように見えるが、そこだけ草の背が小さい。掻き分ければ、石段が続いていた。
「何十年も住んでるがこれは知らんかったなぁ。よく見つけたなぁ、二人とも」
「見つけたのは鈴花だよ。鈴花ねぇ、他にもいろんなとこ知ってるんだよ。ね、鈴花」
「そんなことないよ。たまたま見つけただけだから……」
控えめな声で頬を染める鈴花の頭をぽんぽんと撫で、梅都はほめる。それを見ていた夢花は突然叫ぶ。
「ねぇ、梅おじちゃん。おじちゃんのおうちに泊まってもいい?」
「いつでも大歓迎だぜ!いやぁ、嬉しいな。鈴花ちゃんもか?」
首を振る鈴花だったが、夢花がそれを止める。
「鈴花も泊まるって。ねぇ、お父さんとお母さんには言わないでね」
「お姉ちゃん、だめだよ。心配してるよ」
「そうだなぁ、それはできないなー。おじちゃんから言えばいいか?」
少し頬をふくらませて機嫌を損ねたらしい夢花も、それに頷く。
「でも絶対会わないからねっ!」
一人階段を上り始めた夢花の後ろで、梅都と鈴花は意味ありげに視線を合わせた後、階段を上った。
「……というわけで二人はうちにいますんで」
途端にガタンと何かがぶつかる音が店内でした。
思わず額に手をやり溜息を吐く。
「あなた。落ち着いてください」
「連れ戻す」
「まだお仕事中です。行かせるわけにはいきません」
きっぱり言い切れば渋々と引き下がる夢次。おお、と梅都が声を上げる。
「変わりましたね」
「うるさい、黙れ」
「梅都殿にあたっても仕方ないでしょう。もとはといえばあなたがよけいなことを言ったのが原因なんですから」
再度溜息を吐けば、梅都がまぁまぁと苦笑う。
「きちんとお預かりしますんで心配しないでください」
「当たり前だ! 何かあったら……」
「あ・な・た」
今店に誰もいなくてよかったと心から思う。店内をうろうろと歩き回っていた彼は「店は閉める!」と突然叫び出す。
そんな彼の後ろからぬっと人影が現れる。
義父だった。
もともと少しばかり厳めしい顔つきに眉を寄せているので、怖さが倍増する。彼と本当に親子なのかと失礼ながら思ってしまう。たしかにところどころのパーツは似ているかもしれないが、どちらかといえば母親似なのかもしれない。
「馬鹿者め。とっとと迎えに行け」
「でもお義父さん」
「こんな状態で店にいられても困る。君もついて行ってやってくれ」
普段口数の少ない義父からの申し出を断るわけにもいかず、一人さっそく出て行った夢次の後を、梅都と顔を見合せてから追った。
「お姉ちゃん、お母さんとお父さんが来てるって」
部屋で反物を眺めて満喫していたらしい夢花は途端に機嫌を悪くする。
振り返らずに「会いたくない」と言い、また反物を眺め始める
「ねぇ、鈴花。これ可愛い。似合うかなぁ」
夢花が手に取ったのは薄桃色の花弁が散らされたもの。流れるような線が幾筋が描かれ、早春らしい柄。
「お姉ちゃん」
良い気分に浸っていた夢花はいつもなら放っといてくれる妹の呼び声が気に入らなかったらしく、彼女を睨む。怯えた鈴花は小さく謝った。
「鈴花は私の言うこと聞いてればいいの」
「鈴花はおまえの人形じゃないぞ。妹にそんなこと言ってどうする」
いきなり現れた夢次の姿に驚くも、夢花は負けじと見上げ叫ぶ。
「こっち来ないで!今日は帰らないから」
そっぽを向いてしまった彼女に夢次は息を吐くも、部屋に入る。それを拒もうと布や紙などが飛んでくるのを全部受けながら彼は進む。
「鈴花、こっちに来なさい」
そっと母に手を引かれた鈴花は驚く。そして自分が部屋を出ると母は襖を閉めた。
姉と父が二人きりになったことに慌てて母をの方を向けば、微笑んでいた。
そのまま別の部屋に連れて行かれる。
「お母さん」
「大丈夫よ。お父さんも反省してるから」
どう見てもあれは悲惨な事態になりそうだと思った鈴花だったが、母の言葉が間違ったことはないので頷き、母と同じようにその場に座る。するとすぐに襖が開き梅都がお茶を持って現れた。
「なんか……よけいなことしちまったみたいで」
「梅都殿は悪くありませんよ。それより巻き込んでしまって」
「それは別に構わんからさ。しっかし鈴花ちゃんはほんとにしっかりしてるなぁ」
鈴花に菓子を進めながら梅都は笑う。
「そんなこと、ありません。お姉ちゃん止められなかったし……ごめんなさい、お母さん」
しょんぼりしてしまった鈴花の頭を壺鈴は優しく撫でる。梅都は一人うんうんと首を振っているが壺鈴はあえてそれを無視した。
「鈴花はよくやってくれているわ。いつも助かってるもの。ありがとうね」
その言葉にぽっと頬を染める鈴花。梅都はまた一人首を振る。
「何一人で納得したような顔しているんですか、梅都殿」
「いや、うん。子供心ってのは複雑だよな」
そうしてお茶をすする彼に壺鈴は首を傾げる。よくわからないといった顔で鈴花は菓子を口にした。
とりあえず彼を放っとくことにした壺鈴は改めて鈴花に向き直る。彼女も不思議そうな顔で母を見つめた。
「鈴花。いつも色々と手伝ってくれて本当にあなたには感謝しているわ。お父さんもお母さんも、あなたは自慢の子供よ。でもね」
怒られるのかと身構えた鈴花を仄かな香りが優しく包む。母に抱きしめられているとわかった瞬間、ほっと力が抜ける。
けれど「でもね」と繰り返した母の言葉にびくっと体を縮める。
「我慢しなくていいの。もっとわがまま言ってくれていいのよ。お父さんもお母さんもね、あなたがたくさん話してくれるのを待ってるから」
その瞬間、一筋の涙が鈴花の頬を伝い流れたのを見て梅都は微笑む。
鈴花はおそるおそる母の背に腕を回す。
「お母さん」
「なに? 鈴花」
「大好き。お母さん大好き。お父さんも、お姉ちゃんも、壺花も、寿次も、お祖母ちゃんもお祖父ちゃんも。梅おじさんも」
「梅おじさん」は照れたように頭を掻く。
そっと壺鈴は鈴花から離れる。
「お母さんも鈴花のこと大好きよ。もちろんお父さんもお祖父ちゃんもお祖母ちゃんも。梅おじさんも、ね」
「もちろんだとも!」
一人立ち上がって宣言する梅都に二人は笑う。
しかし鈴花の顔が急に翳りだし、梅都と壺鈴は顔を見合せる。
「でもお姉ちゃん、お父さんも壺花も寿次も大嫌いって言ってた」
「鈴花ちゃんも嫌いって言われたんか?」
「ううん。鈴花はいいんだって。何にも言わないから」
俯いてしまった彼女の手に壺鈴はそっと手を重ねる。鈴花は顔を上げた。
「他には何か言ってなかった?」
一瞬動きを止めた鈴花だったが、ぽつぽつと話し出す。
「お父さんは、お母さんの次に寿次が一番大事で、自分のことは嫌いなんだって……あと、私はお父さんとお母さんに怒られなくていいよねって……言ってた」
壺鈴は息を吐く。子供らしいといえば子供らしいが、きちんと見ていることを教えられる。
夢次に末の寿次を特別扱いしているつもりはなくとも、やはり「男の子」だからと力が入ってしまうのはいた仕方ない。他の子供達にはそれが「特別」に見えてしまう。
「でも私は……お父さんはお姉ちゃんが一番好きなんじゃないかと思う。お姉ちゃんは違うって言ってたけど……」
鈴花らしい視点だと二人は思う。一人目の子だからかなり溺愛していたのは事実だったので二人で何も言えない。その結果があのようになったのだが。
それでも“誰が一番”かを子供が考えていたことに驚き、そしてそう思わせてしまっていたことに親としての責任を感じ、壺鈴は目を伏せる。
ただ「大好き」というだけでは伝わらないもの。
一度彼と相談しなければならないと、壺鈴は瞼を開く。そっと鈴花をもう一度抱きしめた。
「教えてくれてありがとう、鈴花。お父さんに聞いてみるといいわ。ちゃんと話してくれるから」
「うん」
素直な返事にほっと胸をなで下ろし、「そろそろ終わったか」と立ち上がった梅都に続いて二人も部屋を出た。
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自分でも何を叫んでいるのかわからなかった。手当たり次第に投げて、喚いて、それでも父は近づいてくる。無言で。
いつもの怒った顔でも、笑った顔でも、母に見せる泣き顔でもなく見たことのない無表情。
ふと指先に触れた桐の箱を掴む。投げようとして手が止まる。
これを投げたら父は避けるだろうか。
今まで投げた物は紙や布は全て体で受け止めて避けようともしなかった。そんなもので引くものかといわれている気がしてこわかった。ここで負けるのが悔しくて、でも泣くのも癪に障るからぎゅっと唇を結ぶ。
「投げないのか」
いつもより低い感情を殺したような声。
父にとって私はどうでもいいんだと、思った。
自分が何をしようとも父にとっては何も意味を為さない。
ここに来たのだって母に言われたからなのだろう。祖父や祖母かもしれない。そんな程度の存在が自分。
部屋の半分ほどの距離。父はそれ以上は足を止め近づいてこない。
安心したような、何か期待していたような複雑な感情が入り乱れて自分でも何がしたいのかわからなくなっていた。
しばらく無言で睨む。父も絶対目を逸らそうとしない。
「投げたいのなら投げても構わない。避けたりしない」
はっきりと宣言され、思わず手から箱が落ちる。また掴むのも馬鹿らしくなって、そのまま腕も下げる。
「馬鹿……できるわけないじゃん」
俯いた耳に畳を踏む音が聞こえる。ふわっと体を包むぬくもりと、仄かな香り。母のと似ているようで少し違うその匂いに、なぜかほっとする。
「ごめんな、夢花。父さんが悪かった」
何度も父は謝って、ぎゅうっと抱きしめられる。
我慢していた涙がこぼれる。父の着物を濡らしてしまうと思ったけれど、父の手が大丈夫だというように頭を撫でてくるから、よけいに涙は溢れ出る。
「ごめんなさい」
息が苦しかったけれどやっと声に出す。父は頬の涙を拭ってくれる。
いつもの優しい顔した父がいた。
「夢花、父さんと約束しよう」
「やく、そく?」
そっと耳元で囁かれた“約束”に、首を振れば父は嬉しそうに笑う。
そのまま昔みたいに抱き上げられて、恥ずかしかったけど嬉しくてぎゅっと首元に抱きつく。
「お父さん、大嫌いなんて言ってごめんなさい。本当は……」
恥ずかしくて小さくなった言葉も父はちゃんと拾ってくれて、よしよしと頭を撫でられる。もっとしてほしくてねだれば額に唇を寄せられた。
「それは恥ずかしいからっ」
「夢花は可愛いな」
「やーだー!」
さらにぎゅっと頬を寄せてくる父を必死に引きはがそうと奮闘していると突然襖が開いた。
「あ、大丈夫みたい」
見上げてくる鈴花は笑顔で。後ろにいた母と梅おじちゃんもにこにこしている。
急に恥ずかしくなって父の肩を叩けばやっと解放してもらえた。
「もう、お父さんったら」
そっぽを向いて誤魔化したけれど母はくすくすと笑っていた。
「お父さん、鈴花にもやって」
隣にいた鈴花が突然両手を伸ばす。いつもそんなこと言わない妹だから、きっと何か言われたのだろうと母を見るが、微笑まれる。
「鈴花……」
感極まりないといった様子で鈴花を抱き上げると、同じように頬を寄せる。嬉しそうな二人にむっとすると、梅おじちゃんが手を出してくるがそれは遠慮しておいた。
「嫌われた……?」
「お父さんがいい」
父の服を引っ張れば鈴花が「やだ」と言い出す。
「お姉ちゃんいつもやってもらってるからたまにはいいじゃん」
「やだやだ!なんで今日はそんなに意地悪なの! お父さん、次私だから鈴花下ろして」
父は慌てていて一向に鈴花を下ろしてくれないから、足を蹴って部屋を出た。
後からばたばたと追いかけてくる足音がしたけれど、振り返らない。
「お姉ちゃん」
手を引っ張られる。母でも父でも梅おじちゃんでもなかったことに驚いた。
「お姉ちゃん大好きだから」
だから交代する、と言う妹の頭を軽く叩く。
「最初っからそう言えばいいの」
えへへ、とそれでも鈴花は笑った。
何をするのも動作の遅い妹が一番に駆けつけてくれた。
「ありがとう、鈴花」
聞こえないように呟いたつもりなのに、聞いていたかのようにまた妹は微笑んだ。母のように。
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→梅都&壺鈴
「まさか娘二人に足蹴り喰らうなんて……ご愁傷様です、夢次様」
「鈴花のお腹の蹴り、見事にきまってましたもんね。大丈夫ですか?」
「……嫌われた」
「体の痛みより心の方が大変みたいだな、壺鈴」
「面倒ですね」
「いや、それ言っちゃおしまいだろ……」
「夢花ー! 鈴花ー!」
「大丈夫でしょう、あれなら」
「おまえだんだん母親に似てきてるのな」
「……」