第二話
熱い荒野に陽が沈み始めた頃
咎人に最後の食事が与えられた。
明日とも知れぬ日を前にしても
矢張り可成り渇くのであろう。
彼等は、日照りの日の畑の様に
水を干した。
未明に成って、
暗がりに尋ねて来た男が居た。
「し、師よ。」
深い眠りから醒まされた彼は
怪訝な様子で、
耳を傍立てた。
「その声は、
お前だね。」
「お解りで…。」
「ははっ。
忘れようも無いであろう。」
「私の魂は、この闇の様に暗いです。」
哀れむ声で
「皆神から遣わされた筈であろうに。」
「私はどう致したら宜しいので。」
「償う事だ。」
「はい。」
「何の、誰の為に…。」
「師の受難の為に。」
「いや、そうでは無い…。」
「お前の魂の為だ。」
「はい…。」
「…。」
「それから…。」
「儂は眠る。」
遠くから
「誰か居るのか。」
賭け去る足音が聞こえた。
地平の彼方に
陽炎の立つのが見えた。
冷たい風が
ひょうと
流れて行く。
しだいに明るさは
増して行った。
熱い荒野の陽はやや落ち始めた。
空に雲が出て
丘にも涼風が吹き渡り
三人の咎人の疲れも
和らいだように見えた。
役人の命令の許
一時の休憩があった。
一行を取り巻く群集の中に
一人の初老の羅馬人の男が居た。
「近付くでない。」
「罪人に勝手に語りかけるでない。」
可成り衰弱し切った男に
初老の男が近付くと
「遣わされしお方。」
何ごとかと振り向くと
「お静かにトラピでございます。」
「…。」
遣わされし者は
安らかな微笑みを見せた。
「来たか。」
照れくさそうに
「師よ、教えて下さい。」
「…。」
「遣わされし者の罪とは
如何なるものであろうか。」
「判らぬか。」
「はい。私には判りませぬ。」
「であろう。
儂にも判らぬ。
強いて云えば
彼等信仰薄き者達の
心の迷いであろう。」
トラピと名乗る男は
納得し得たように頷いた。
「しかし、私には為す術が
有りませんでした。」
それに対しては
彼は責めはしなかった。
ぴしり。
と鞭が唸った。
「語ってはならぬと云うに…。」
トラピは憎悪の目で役人を
睨み返した。
「もう、良い。」
咎人を囲んで一行は又
長い道を進んだ。
風は吹き
暑い陽はいよいよ
暑く
人々の悲しみは
深かった
されど友よ
ひとびとの迷い
罪を
購う為に
遣わされし
ひとの
しるしは
とこしえに
輝く
人は肉に非らず
その魂は
既に
癒されたりと
知れ
輝かしいあしたは
また来る
宵の闇は
静かに
暮れて
やがて
陽は昇る
暗い夜道を
人々は
白く輝く
星を頼りに
町へ帰る
いつもの暮らし向きに
戻るため
その行く手を
星は
明るく照らす
とりとめの無い
物語を
認めました。
日々の暮らしの中で、
しずかなる
時を過ごしたいものです
みなさまの
明日が
しあわせでありますように




