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第17話 ダンジョン配信ひとまず終了!!

「シキータ……っ!?」

「ここは模擬スキルってのを使うんじゃなかったのかよ? こっちがいざ戦おうって前から一発で潰そうって魂胆か。ハッ、さすがナンパ野郎はやることが違うねぇ」

「なっ……!? なんだコイツ、剣が――クソっ! 動かねぇ!」

「おかげで――私の酔いも醒めてしまったぞ」


 リーダー格の男が何とかシキータから大剣を取り戻そうと四苦八苦するが、彼女がたった二本の指だけで掴んだ大剣はびくともしない。


 俺に一歩遅れる形で様子を見ていた取り巻きも、自分たちにとって予想外の事態だと気付いたようだ。慌てた様子で各々の武器を取り出す。


 ……もはやなりふり構ってはいられなくなったらしいな。


「な、なんなんだよあの女……!?」

「知るかよ! どうでもいい、こうなったら全員でこいつらを」

「させるとでも?」


 こいつらのやることは何もかもが遅い。


 取り巻きたちがシキータたちの戦いへ乱入しようとするよりも先に俺が動いていた。


 この程度の連中を相手にスキルなど必要ない。

 一陣の風が吹き抜けるよに、俺は取り巻き共を殴りつけ、蹴とばして、迅速に無力化を行った。


「かたじけない、入浪(いろう)どの」

「いいさ。それよりもアドバイスだ。アリーナでの模擬戦は確かに攻撃用スキルの使用は禁止だが――防具での攻撃はおとがめなしだぞ」

「なるほど」


 シキータの瞳が「キラーン」と煌めく。

 瞬間、彼女は大剣をポイっと放り投げた。


 リーダー格の男の抵抗すら許さず、大剣は奴の手からすっぽ抜けるように軽々と宙を舞ってから明後日の方の地面へと突き立った。


 いきなり大剣の重量が消えたことで男はバランスを崩す。

 その隙を見逃すシキータではなかった。


 大剣を掴んでいた方の拳をぎゅっと握り締め、男へと振り上げる。


「《選廻武装(アーマーセレクション)片手甲(ワングローブ)――」

「くそっ、てめぇこの(アマ)ァ! テメェはここでぶっ殺」


 男の御託は、そこで途切れた。


 ゴッズガアアアアンッッッ!!


 大剣を掴んでいた方の手に鎧の手甲を纏わせて、シキータは男の顔面を真正面から思いっ切り殴り飛ばした。



◇――――――◆



 ダンジョン配信終了。


 まあ、他の配信者に攻撃されるなんてアクシデント、配信事故が起きてしまえばそのまま続けることはできない。

 すでにリスナーの誰かがギルドへ通報してくれてたようで、ナンパ連中を無力化した俺たちが連絡するまでもなくギルド職員が駆け付けた。


 状況と俺たちの証言によってナンパ連中は一発で永久BAN。

 こいつらの場合は余罪もあるだろから警察に身柄を引き渡したのちこのライバータウンからも強制退去となることだろう。


 もう二度と会うことはないが、自業自得だった。


 それから俺たちはギルドと警察の事情聴取に協力することになり、もろもろの事後処理を終えてギルドを出たのは、すでに夕日も沈みかけた頃合いであった。


「う~ん、ようやく終わった~っ!」

「…………ソウデスネ」


 やっと解放されたことで大きく背伸びをする俺に対し、シキータの面持ちは暗い。


 さすがにギルドたちも問題配信者を倒したご褒美にお酒をくれるわけもなく、リーダー格の男に見事な一撃を喰らわせたシキータは素面のまま。

 まるで二日酔いに耐えるかのように暗い顔で俺の隣でうなだれていた。


「なあシキータ、結果オーライなんだしいいじゃないか」

「よくありませんよ……」


 暗い面持ちのまま首を横に振るシキータ。


 こういう時はお酒を飲ませるのが手っ取り早い、と行きがけにラッカリカが話していたが残念ながら手元にはお酒がない。帰りがけにスーパーで買い出しをしてほしいと彼女からチャットがあったので、その時までの辛抱であった。


「あ~その、元気だせよ? 確かに今日は色々とトラブルもあったりしたが、結果としてシキータの活躍が話題になったし登録者もうなぎ上り――」

「それです!!」


 ガバッと顔を上げたシキータが俺の両肩を掴んだ。


「あ、あんなにたくさんの人が……私のふがいない姿を見、見て――きっと嘲笑しているんですよ! 恥ずかしくてこれからどうやって外に出ればいいんですか!?」

「配信者が何を言ってんだ」


 あなた泥酔して服脱ごうとしたから一回BANされましたよね?


 ……そりゃ、ほとんど素手でダンジョン配信者を一人ぶっ飛ばしたようなもんだからな。目撃者はたくさんいるのだから話題にもなるだろうさ。


 アプリによる補正があるとはいえ、あれだけの大剣を指だけで軽々と放り投げられる者となるとそう多くはない。ダンジョンの深部まで潜るような配信者でさえあんな芸当ができるのは少数だろう。


 しかも、どうやら決着の瞬間にシキータが素面に戻っていたことに気付いたリスナーもいたらしく……


『なんか最後のシキータ変じゃなかった?』『ひょっとして酔い醒めた?』『もしかして素面ですか!?』『素面のシキータつええええええ!』『このまま逆らう奴ら以下省略』『やはり酒は悪い文明よ……』『酒! 飲まずには』『酒は拘束具だったと』『いやシラフがすごいってだけじゃね?』


『シ、ラ、フ! シ、ラ、フ!!』


 ――なんて、SNSなどで大盛り上がりだった。

 

「いいじゃないか。これでバスればしばらくは安泰だ」

「確かに、そうですが……でもっ。でもぉ~!!」

「……酔ってる間は普通に配信してたクセに」

「酔ってたら気にならないんです! あれは私じゃないんですから!」

「え……多重人格?」

「いえ? 普通に同一人物ですが?」

 

 じゃあどっちでもいいじゃん……


 しかし、そこにはシキータなりの線引きがあるのだろう。

 彼女は不満を示すように顔を青くしてガクガクと俺の身体を揺らしてくる。


 やはりシキータの力は強い。

 俺は成す術なくガクガクと体を揺らされ、それと一緒に俺の胸元に密着したシキータの形のいい胸もぷるんぷるんと揺れる。


 ……これでよく恥ずかしい云々を言えるもんだよ。


 というかちゃんとブラをつけているのかも怪しい動きだった。さすがにタンクトップはちゃんと着ているようだが……え、まさかそれだけでダンジョン配信してたの?


「やっぱり配信なんて――飲まなくちゃやってられません!!」

「……おー、ならまた飲んで頑張ってくれ」


 飲んで済むのなら、飲んでもらってしっかりと頑張ってもらおう。


 もちろん、飲みすぎには注意しなければだが。


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― 新着の感想 ―
まあ、剣と魔法の異世界から転移してきて、その上ラッカリア姫と知り合いと言うことは、王宮勤めの騎士団長辺りだろうから、素面のシキータなら余裕だったのかな
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