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第15話 突発コラボ

 俺たちがいるのはダンジョンだ。


 当然ながらここには他のダンジョン配信者も配信をしている。


 ダンジョンへ入る際には一緒に入る配信者やサポーターなどのチーム――いや、探索パーティの方が分かりやすいか。

 まあギルドは一緒に配信する人数の申請も徹底しているが、知っての通りダンジョン内では何が起こるか分からない。


 そのためダンジョン内では冒険者同士が「偶然合流して協力する」ケースがよくあるのだ。


 要は、突発コラボというヤツである。


「こんにちは~お姉さん。配信は一人ですかぁ?」


 声をかけてきたのは三人組の男たちだった。


 おそらく大学生くらいだろうか。

 今までスポーツなどをやってきた後に大学デビューを果たした、みたいながっしりとした体格と()()()()()()()顔つきをしている。


 シキータから解放されてそそくさと配信カメラの画角から外れた俺をナチュラルに無視するあたり、おそらく相当に()()()()()連中なのだろう。


 リーダー格らしき男がニヤついた顔でシキータに言う。


「ねぇねぇ、実は今さあっちの方でまだ手付かずのお宝を見つけてね」


 ……ダンジョン配信は今でこそ娯楽としての側面が強いが、その名目はあくまでも「探索」だ。

 競争はともかく、他の配信者を直接攻撃するなどの行為は固く禁じられている。


「けど、オレたちだけじゃギミックを解くには難しくてさ。協力してそうな子がいないか探してたんだよねー。そこでどう? 一緒に? もちろん報酬は――」


 よって、この手合いはターゲットをわざとダンジョンの罠などにハメて、インフラ整備士などが救助へ来るよりも早くダンジョンの外へと連れ出して、その後「助けてやったんだから」などと称して色々と要求する――


 俺もインフラ整備士だった時に手を焼かされた手口。


 配信者をターゲットにしたナンパ行為。


 文字通り、ダンジョン配信で()()()()()連中だ。


「シキータ――」

「おっと、裏方が出しゃばんなよ」

「これはコラボの誘いだぜ? コォ、ラォ、ボォ? つかさっさと失せろよ? オッサンはお呼びじゃねぇっつうの」


 おっと、あまりにも露骨な言動だな。


 サポーターである俺がいてもお構いなしとは。

 明らかに場馴れしている手口だ。


 奴らのカメラゴーレムから飛び出しているはずのコメントは他のパーティからは見えない設定になっているが、おそらくリスナー層も彼らと似たような種別の者たちなのだろう。


 ……このまま無視してダンジョンを出るか?


 こちらはそろそろ配信を終えるつもりだった。

 無論、奴らも簡単に逃がしてくれるとは思わないが直接攻撃が禁じられている以上はどうとでもなる。


 もしもダンジョンの外まで執拗に追って来たとしたら、それこそ俺たちだって直接攻撃ができるんだし。連中だってそこまで追ってくるほど本気でシキータを狙っているわけじゃない。


 ……むう、これは困ったな。


 俺はまだシキータのチカラを知らない。

 今回の配信は彼女が普段どんな配信スタイルをしていて、そしてどれくらいのモンスターを倒せるのかを確かめるため、という目的もあった。


 モンスターと遭遇していればおおよその片鱗くらいは分かったかもしれないが、それもまるで俺たちが避けられているかのようにさっぱりだったし。


 シキータがどこまでやれるのかが分からない以上、無理をさせるワケには……


「悪いけど――」

「いいぜ、ノった」


 逡巡の末に俺が断ろうとした矢先、シキータが手を叩いた。


 思いもよらない返答だった。

 たまらず唖然としてシキータを見る俺に対し、男たちはすぐに顔へ胡散臭い笑顔を張り付けた。


「いいねお姉さん。そうこなくっちゃ」

「やるぅ! ノリよすぎ!」

「一緒にがんばろうぜ!」


『おいシキータッ! コイツらは』

『分かってるって』


 オレはすぐに念話で警告するが、シキータはどこ吹く風だ。


 そんなことをしている間にも、リーダー格の男がシキータの肩を抱こうと手を伸ばす。


「んじゃ、さっそくオレたちだけで一緒に――」

「ただし、アンタらはいらねぇな」


 シキータは男の手を弾いた。


 男たちの動きがフリーズする。

 まるで凍り付いたかのような彼らへ、シキータはさらに冷や水を浴びせるかの如く不敵な笑みで告げた。


「お宝はアタシらが全部貰う。アンタらはお呼びじゃねぇよ」


「「「テメェ……」」」


 男たちの顔色が変わった。


 まったく化けの皮が剥がれるのが早い。

 そのあまりにも早い変わり身に俺が呆れていると、シキータは唐突に俺の腕へ抱き着いてから「べぇ」と舌を出した。


「ったくも~分かんねぇか? アタシは今このダーリンと一緒にランデブーの真っ最中なんだよ。アンタらなんかのことなんざ眼中にないっつうんだよ!」


『よくぞ言った!』『ちゃんと守ってやるんだぞ』『どっちが?』『あらイケメン』『嫌いじゃないわ!』『マジただの当て馬で草』


 こちらの配信のコメントもまた奴らには見えない。


 だが、様子を窺うように旋回するカメラゴーレムから飛び出したコメントたちの嘲笑する気配を感じ取ったのだろう。


 露骨にあしらわれたリーダー格の男が額に青筋を立てる。もはや取り繕う余裕すらなくなっていた。


 ……だが、これはマズいな。


 この手の輩は煽り耐性が低い。


 というか頭に血が上ると暴力で黙らせることを是としてきた連中だ。


「落ち着けっ。ダンジョン内での私闘は永久BANに」

「いや、一つだけ例外があるだろ。兄ちゃん?」


 俺が場を穏便に収めようと声を上げるが、それを遮ってシキータが挑発するように笑った。


「ダンジョン内で配信者がガチンコでぶつかれる場所がよ」


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噛ませ犬配信者さん、チッス
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