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電車

「よし、こっちにも運んで.....」


神社の建て替えが始まっていた。


かつての住処やしろは、もうない。 相方の阿形あぎょうも、どこかへ消えた。


少しの木漏れ日が頬を照らす。だけど、何も感じられない。話し相手がいないからかも知れない。


「ふぅ...」


「さて....どうしたものかな」


そっとため息をつく。


ボクは狛犬こまいぬ、この地域では通称、『ショウガ丸』の名称で呼ばれている。


この神社ではもう長いこと人々の見てきた。昔、小さいなと思っていた子がもう家庭を持っていることも何度もある。


つい最近この神社の建て替えが始まり、相方の阿形とはぐれてしまった。


そんな時、最近耳にするようになった『電車』という言葉が頭に残っている。聞いたところによると、鉄の動く猛獣のようなものだそうだ。


相方に会う。


その狛犬は大石から降り、秋の夕陽に向かって歩き出した。


意外にも、神社から階段を降りるのは一苦労だった。


「こんなに登るのか....」


この階段をわざわざ登ってきてくれる参拝者によりいっそう感謝を込めた。


神社を降りると、『電車』と呼ばれる猛獣が、遠くから見えた。


駅に着くと人々が一斉に猛獣の中に人々が入っていく。


流石に初めはびっくりした。しばらくそこで考えた。


これらは人々の移動手段ということがわかった。


「すごいな....、こんなの初めてだ」


ワクワクと同時に相方へ会うという希望が満ち溢れた。


電車に乗り景色を見る、今までは同じ景色だけだったけど、今は色々な景色が見える。


これまで数百年、僕の視界にあったのは決まった視界だけだった。


欠けた手水舎の屋根、ひび割れた石畳、そして向かい側で退屈そうに口を閉じてい阿形る。


それは永遠に続くような、凪のような景色。


けど今は、ガタゴトと揺れる列車の窓からの世界はその色をすぐさまかえていく。


石の鼻面を窓に押し付けた。


ふと目を落とせば、風になびく洗濯物、放課後の小学生たちが夕陽に染まる道を走っている。


だけどこの感動を伝えたい奴が隣にいない。


「阿形にこのこと話してやろう」


車内を見てみると、人々は僕のことが見えていないらしい。


トンネルに入り、少し涼しめの風が窓から入る。


少し寂しいような、なんというか。


「ちょっと寂しい気もするな」


そう口走った時に、一人の少年と目が合った。少年はただボクを見つめていた。


どうすればよかったのか、笑いかけたらお母さんの後ろに隠れてしまった。


怖がらせてしまったかも知れない。その時はそのまま窓の方を向いて外を見続けた。


電車は刻々と走っていく。終点の駅に着いた。誰もいないようだ。


終点はボクと、秋風の貸切だ。


「ここからは、また足で歩くか....」

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