1話
―現実は、妄想の中でしか語れない―
「#異能力学園 #俺が世界を救う #第13話」
その投稿が、すべての始まりだった。
神谷ユウト、高校二年。
彼の現実は、静かで、退屈で、透明だった。
教室では空気のような存在。家ではスマホとヘッドホンが唯一の友達。
でも、彼の脳内には、誰にも見せたことのない“世界”があった。
異能力学園。
選ばれし者だけが通う、異能者の学び舎。
ユウトはその世界で、“記憶を操る能力”を持つ最強の転校生として、世界を救う運命を背負っていた。
その物語を、彼は毎晩、創作SNS《Spiral》に投稿していた。
フォロワーはたったの12人。いいねは、せいぜい3つ。
それでも、彼は書き続けた。誰かに読まれるためじゃない。
“自分が、自分でいられる場所”を守るために。
投稿は、深夜2時に限る。
誰にも見られたくない。けれど、誰かに見つけてほしい。
そんな矛盾した祈りを、彼は毎晩、スマホの画面に打ち込んでいた。
「記憶の改竄は、禁忌だ。だが、俺はやる。君を救うために。」
投稿ボタンを押す指が、わずかに震える。
画面が切り替わり、投稿が反映されたのを確認すると、ユウトはスマホを伏せた。
明日も、誰にも気づかれずに過ぎていく。そう思っていた。
だが、その夜。通知が鳴った。
《Spiral:@makabe_ren からDMが届いています》
ユウトは一瞬、画面を見間違えたかと思った。
知らない名前。フォロワーでもない。恐る恐るDMを開く。
君の妄想、映像にしたい。
……は?
画面を見つめたまま、ユウトは固まった。
いたずらか? スパムか? それとも、誰かの悪ふざけか?
でも、DMの送り主のプロフィールには、こう書かれていた。
《真壁レン/大学3年/映像制作サークル/“妄想は、現実を揺らす”》
ユウトの心臓が、ドクンと跳ねた。
第13話、やばかった。あの“記憶の改竄シーン”、映像で見えた気がした。
君の妄想、現実にしようぜ。
画面の向こうから、誰かが手を伸ばしてきた。
それは、ユウトの妄想に触れようとする手だった。
「……マジかよ」
誰にも見せるつもりのなかった世界が、誰かの現実を動かしてしまった。




