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神憑き兵衛の下剋上(クーデター)  作者: 光命
第1章 破壊神の復活
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第1話 『破壊神』と呼ばれる男

それは太古の昔――


神々が集まり、地上の世界を創造した。


「それだけでは面白くないかのぅ」


そこに生き物を創り、また人も創り出していった。


「人に欲望を持たせたらどうなるかのぅ」


人に心を持たせ、欲望を持たせ、さらに自我を持たせ……

勝手に動き出した人々は文明を創りはじめる。

さらに欲望を滾らせた人々は互いに醜い争いを繰り広げるようになった。


「そうだ、欲望をむき出しにしてぶつかり合わないと面白くないしのぅ」


そんな世界を創り出した神々。

この世界でもまた人と同様に争いの火種が……


「お前らがオレに勝てるのか?

 抵抗したって無駄だって」


覇洵(はじゅん)は剣を振りまわし、取り囲んだ天使兵たちをなぎ倒していく。


「評議委員会の方々はどこにおいでですかー。

 隠れてもらっては困るんだよなぁ」


だが天使兵たちも諦めない。

次から次へと覇洵に向かっていく。

しかし、力の差は歴然で、止められない。


そう、覇洵はこの天空界でも屈指の力を持っていた。

その力は強大で、太刀打ちできる者も少ない。

ただ難点として覇洵はすぐに力でねじ伏せようとするのだ。

自分に合点がいかないと、暴れまわってしまう。

そうなると手が付けられず、そこにあるものを跡形もなく消し去ってしまうほどだった。

そのことから、付いた二つ名は……


破壊神(カタストロフィ)


そんな覇洵が向かっている先は、荘厳な城のような建物だった。

明らかにお偉方がいそうなその建物に向かい、自分の思いの丈をぶつけたいようだ。


「覇洵!

 これ以上の暴挙は許しませんよ」


そこに現れたのは女神ベローナだった。


「これはベローナのねーちゃんじゃん。

 まだちんたらやってんのか?

 もうこっちは待てないんだよ!」


「あなたが待てないのもわかりますが……

 ただ力に訴えても何もかわらないですよ」


「それじゃ、時間が無いんだよ。

 とにかくあのじじいどもに会わせろ!」


何かを焦っている様子の覇洵は立ちふさがるベローナを振り払う。

倒されたベローナは


「痛ったぁ……

 もう……」


お尻をさすりながら、膨れっ面をした。

立ち上がったベローナは


「こうなったら……これでしばらく大人しくしてなさい!」


そう言うと何やら呪文を唱え始めた。

覇洵はベローナのことは気にせずに先へと進んでいった。

何かしらの魔法でを止めようとしているのだろうが……

撃たれても対処できると高を括っていた。


「レナトス!」


放たれた魔法は覇洵を包み込む。


「くっ……

 オレに何をした?」


油断をしていた覇洵は包み込む白い霧を振り払おうと藻掻いた。

しかし、まとわりついた霧はますます濃くなり覇洵の体を覆い隠す。


「せめて人の身になって、己の愚かさを見つめ直しなさい!」


しばらくして白い霧が消えると、その場から覇洵はいなくなっていた。


「もうあいつのせいで何もかもが無駄になっちゃったよ……

 あともう少しだったんだから……」


腰を落とすベローナに近づいていったのは、残りの天使兵たちだった。


――――


『ベローナのねえちゃんはオレに何をしたんだ?』


白くぼやけた中を漂う覇洵は自身が置かれた状況がわかっていなかった。

ただただ何も見えない霧の中を彷徨っている感じだった。

あちこち動き回ったが、果てがある訳でもなく、景色も変わらない。


『おーい』


大きな声を出しても、自分の声だけが響き渡る。

何かがある雰囲気もない。

当然誰かいる訳でもない。

しばらくは闇雲に歩いたが、何も変わらない。

諦めた覇洵は


『封印か何かしたのかな。

 まぁ、そのうち解けるだろうし、それまで待つか』


そして、その場に横たわった。

そして、しばらくすると眠りについたのだった。


そんな神々の世界で起きていたことは、地上の人々は露知らず。

それから長い年月が過ぎ、人々の文化も発展していったのだが……

戦は絶えず各地で起きていた。


そして……時は16世紀後半。

日本では群雄が割拠し、あちらこちらで戦が行われていた。

所謂戦国時代に突入していたのだった。


兵衛(ひょうべい)は今日も戦場を駆け回っていた。

農家の五男坊として生まれたので、家を支えているわけでもない。

農業も一番上の兄を中心にやっているので、手伝いをする程度だ。

そんな家に居場所もあまりない兵衛は……

あちこちで行われている戦に足軽として参加していた。


とはいえ、兵衛はそこまで屈強な男ではない。

鍛錬は怠らないが、大した戦果を上げている訳でもなく……

それでも運がいいのか悪いのか、今日まで生き延びてきていた。


今回は尾張の内乱に参加をしていた。

敵は織田信賢率いる軍勢らしいとのことだが……

兵衛はそんな事は知らなかった。

そう、末端の足軽にはそんなことは関係ない。

ただただ目の前に襲い来る敵を倒し、危なければ逃れていく。

それを繰り返すのみだった。


「今日もワシは死なん。

 何があっても死なん。

 生き延びる」


毎朝そう呟くと今日も戦場へ向かっていった。


兵衛たちが参加していた戦場は日に日に激しさを増していた。

こちらが優位な状況ではあるものの、敵もかなり抵抗していた。

兵衛もみんなと一緒に前線に出て奮闘をしていた。

しかし、今日は敵兵も気合がいつもと違い、押され気味だった。


「今は厳しいぞ

 態勢を整えるため、いったん引くぞ」


劣勢に回った兵衛たちの軍勢は、率いる足軽大将が撤退を大声で叫ぶ。

兵衛もその声を聞いて逃げて行こうとしたのだが……

ぬかるみに足を取られてすっころんでしまった。


「痛っ!」


さらに運が悪いことに転がっていた大きな石に頭をぶつけてしまう。

兵衛はそのまま意識を失ってしまった。


「運が悪いな、お前。

 どこの誰だかわからんが……

 申し訳ないが、敵の兵は一人残らず殺せと言われているんでな」


敵兵は倒れた兵衛を拝むと、刀を抜き首を目掛けて切りかかった。


――ガシーン


人の肉体を切ったような音ではない音が鳴り響く。


「あぁん?

 なんだって?

 オレを殺すってか?」


そこには表情が一変した兵衛が刀を抜いて敵の攻撃を受け止めていた。


「お……お前は……

 気絶したんじゃないのか?」


「は?

 オレがいつ気絶したっていうんだ?」


敵の刀を弾き返した兵衛は起き上がり、刀を構えた。


「なんだその気の抜けた攻撃はー!

 攻撃って言うのはこうやるんだよ!」


兵衛は目にも見えぬ速さで刀を横一閃した。

すると目の前の敵の体は真っ二つに割れた。


周りに居た敵兵はその攻撃に驚きを隠せなかった。


「だ……誰なんだ、お前は?」


「オレか?

 オレは覇洵!

 破壊神(カタストロフィ)と呼ばれる男だ!」


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― 新着の感想 ―
光命さん、初めまして。小説を読ませていただきました。 第一話から良い雰囲気が漂っていますね。
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