Issue#03 I I Dreamed A Dream CHAPTER 3 09
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本家:ページ中にキャラのコンセプトアートなどあり
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おせちの決意は、学校を出ても変わらなかった。
シノの涙を胸に残したまま、半ば呆れ顔で付き添うアシュリーを連れ、純粋な客を装って問題のラーメン屋の暖簾をくぐった。
まずは敵を知ることから、と、店の看板メニューである「はちみつラーメン」を注文し、密かにその実態を探り始めるのだった……。
ラーメン屋「麺屋 穴もたず」。
糊の効いた暖簾を押し分けた瞬間、まるで意思を持つ壁のような湯気が、ぬるりと2人を迎えた。むせ返るような豚骨
の獣臭さ。その奥に化学調味料の、いかにも喉の粘膜にまとわりつく、刺々しくも甘い香りが混じっている。
換気扇の低音は、単調なリズムで空間を支配する。その旋律の上で、寸胴がグツグツと粘り気のある飛沫を上げる音と、
壁掛けテレビから流れるバラエティ番組の、やけに虚勢じみて陽気な音声が、互いに溶け合うことのない不協和音を奏でていた。どの音も、ただそこにあるというだけで、奇妙に落ち着かない空間を作り出している。
平日の夜にしては、客入りも悪くない。カウンターには半分ほど人が並び、テーブル席にもいくつかのグループが腰かけている。
この盛況ぶりなら、裏で不正な手段など使わずとも経営は立ちゆくはず――だとすれば、なぜ?お
せちの胸に、釈然としない思いが沸き起こる。
壁には、真新しいポスターや、印刷されたばかりの短冊メニューが、店の歴史のなさを糊塗するかのように隙間なく貼られている。赤いビニール張りの椅子が、定規で引いたかのように整然と並ぶ様は、飲食店というより、どこか無機質な業務用のショールームを思わせた。
長年使い込まれた店特有の、床板や机に染み付いた粘りつくような油の感触――”生きたぬめり”は、ここにはない。すべてが、最近開業したその真新しさに満ちており、その清潔さこそが、かえって不気味な違和感を醸し出していた。
そんな中、アシュリーが通り道に立ち止まってまで目を丸くしたのは、メニューのどれもが、採算を度外視したかのような異
様な安さをしていたためだ。
「……しょうゆ350円!?ほんとかよ?ごめんじいちゃん、毎日ここだわ」
本気とも冗談ともつかないその言い草に、おせちは内心、ため息をつかざるを得なかった。
餃子やチャーハンも、スーパーの冷凍食品とほとんど変わらない価格帯。
たしかにこれでは、近隣の同業者を淘汰するための、あからさまな意図が感じられても無理はない。
ビニール張りの丸椅子は、客を歓迎する気配などみじんもなく、初々しいほどの硬さで2人を迎えた。
カウンターに肘を乗せるなり、アシュリーの野性味あふれる美麗な眼差しは、自然と厨房の奥へと流れていく。
蛍光灯の冷たい光に照らされたステンレスの調理台は、極端なほどに無機質な輝きを放ち、
油の1滴も、水の筋ひとつも見当たらない。情熱の余韻も、日々の研鑽の痕跡も、そこにはまるで刻まれていなかった。
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