Issue#03 I I Dreamed A Dream CHAPTER 3 08
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「監視カメラには、何か映ってなかったの?」
「ううん、何も……。ちょうど死角になってるみたいで、何も映ってなかったの」
力なく答えるシノの肩は、夕闇の色に沈み込むように小さくなった。
物的証拠が何もない――その現実が、どれほど彼女を無力感で満たしているのか、
おせちにも、その痛みがひしひしと伝わってくるのだった。
シノはきゅっと唇をかんで、宙を睨みつけた。次なる証拠となり得る事実を、頭の奥から必死に呼び戻そうとするかのように。
「でもね……他にもあったの!夜中に、お店の裏から物音がして……そっと覗いたら、向こうの店の人たちがいたの。それでね、
厨房で使う業務用の――あのおっきな製麺機。大人の男の人でも、1人じゃ動かせないくらい重いやつを、2人でひょいって持ってきて、入り口の前に――」
そこまで語ったとき、シノの声は恐怖と興奮でわずかに震え始めた。
「まるで、空のダンボール箱みたいに簡単そうに置いたの。あれは、絶対に人間の力じゃなかった。
その人たち、まるでクマみたいだったの。ううん、クマそのものだった。音もなく、おっきな岩を転がすみたいに……。だからカメラなんて意味ないよ。
何をしたかじゃなくて、そのやり方が、絶対に普通じゃなかったんだよ!」
おせちは絶句し、無意識に窓の外へと視線をさまよわせる。
校庭の向こうを自転車が1台だけゆっくり通り過ぎ、遠くのエンジン音が薄く響いてくる。
窓辺のカーテンが、外から吹き込む風に絶え間なく揺れている。その何気ない情景さえ、いまはどこか現実感の乏しいものに感じられた。
やがて、おせちはゆっくりと言葉を選ぶ。
その声には、さきほどまでの淡い調子に、理知の重みがにじみはじめていた。
「……そっか。じゃあ、これはちょっと、簡単には片付けられないね。でも、証拠がなぁ……」
シノは、それでもおせちの確信が揺らがないことを感じ取ると、まるで最後の切り札を出すかのように声を低くして続けた。
「それでね、最近、噂を見たんだ。――クマ人間の。ホントに、それかもしれないの!」
「……クマ?人間?」
おせちはさすがに眉をひそめ、不審そうな眼差しを向ける。その声音には、
超常的な力を持つ彼女でさえ受け入れがたい、不条理な単語への戸惑いが色濃く浮かんでいた。
慌てたシノはスマートフォンを取り出し、画面をおせちへ差し出す。
「最近SNSで噂になってて……。親戚で、そういう都市伝説みたいな話題にすごく敏感な人も言ってたの。『近頃のクマの過剰な保護政策は、進化して人間に化けたクマが、裏で同族を庇っているからだ』って……」
おせちは、画面に映るいかにも根拠の薄いまとめサイトの記事をしばらく眺め、
ひとつ息を吐き、諭すように、しかし芯のある声で口を開いた。
「それは、いくらなんでもヨタ話だと思うけど……」
その言葉には、穏やかな優しさと同時に、
彼女なりの一線――“受け止めるべき現実”と“信じないで済む幻想”を分ける、はっきりとした区分が込められていた。
たしかに、おせちやシノの生きる世界には、超人や怪奇現象が日常の中に実在し、時に彼らに牙を剥く。
だが、だからこそ最前線に立つ者として、「現実」と「妄想」の境界は、決してあいまいにできない。
物理法則をねじ曲げる異能も、「そうである」と確信できるだけの実感が伴うものなら、きちんと受け入れる。
だが、匿名のネット社会で不安を餌に生まれ、増殖する“陰謀論”は、
おせちにとっては守るべき現実の秩序とは相容れない、ただの幻に過ぎなかった。
「……でもお願い。1回でいいから、調べてほしいの」
それでも、必死に縋るようなシノの声を前に、おせちはついに小さく頷いた。
たとえ現実離れした話であっても、人の心からの訴えには、誠実に向き合うのがカルテット・マジコの流儀だからだ。
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