Issue#02 I UNDERTALE CHAPTER 2 02
冬縛女子学園、高等部。その教室は、凛とした10月の光で満たされている。
アシュリーは自席に腰を下ろしており、そこに、登校してきたクラスメイトたちが輪を描くように集まった姿はさながら、
彼女を中心に咲き誇るにぎやかな花束のような光景だった。
手にしていたスマートフォンは横に構えられ、画面にはおとといのインタビュー映像が再生されている。
「……予想よりずっといいとこだったよ。ぶっちゃけホテルだった。最初は臭い飯か、バリカンで坊主か、ってビビってたけど、
ま、ワンちゃんが予防接種に連れてかれる時みたいな絶望感はなかったな。
刑務官にケツ見せて『はい次!』ってなるとか、マグショットでバッチリ決めるとか、そういう“お約束”がなかったのがちょっと寂しいくらい。
次おんなじ理由で捕まるヤツには、その辺のエンタメ要素も追加してくれるといいかもな!」
再生の終わりを見届けると、アシュリーはさりげなく、画面に映る「高評価」のボタンをひと押しした。
その瞬間、教室の後方で、動画の余韻に乗った美しい女子たちが一斉に沸き立ち、歓声を上げる。
「アシュリー、この時すごく堂々としてた!」
「コメントが絶妙すぎて鳥肌立ったわ……!」
「どんな質問にもブレてなかったし、マジでカッコよかった!」
「なあ、見たことあるか?人間のこんな晴れ晴れした顔。すばらしいだろ?まるで国宝だ」
その歓声の中心で、アシュリーは調子よく問いかける。
「え? それ、けっこう毎日してない?」
「嘘だろ? それならこの学校、世界遺産でいいって話になるんだけど」
いつもなら流されてしまいそうな彼女のキザな一言にも、今日は自然と笑い声と拍手が湧き上がった。
ふと気づけば、もともとの取り巻きだけでなく、登校してきたばかりの同級生たちも次々と声をかけてくる。
「……お疲れさま!」
「ニュース見てたよ、艦載カメラの映像!あーれ、すぅ~~~っごかった!」
「やっぱりアシュリーはアシュリーだったね!」
興奮を隠せぬまま駆け寄ってくる声の中には、冗談とも本気ともつかぬ、こんな問いかけも混じっていた。
「今もミサイル落とせる?」
そのときは、アシュリーも肩の力を抜いて、気さくに笑う。
「うーん、それはおとといのあそこで聞いてほしかったな。まあ、用意してくれたら」
「……うちらはずっと応援してたから!」
「ほんと大変だったね……でも、最後までカッコよかった!」
普段はあまり話しかけてこないような子ですら、心からのねぎらいの言葉を贈ってくる。
その響きはすべて顔なじみからのもののはずなのに――この朝ばかりは、アシュリーの耳にどこか新鮮で、柔らかな音色として届いた。
思わず顔が熱くなってきて、赤毛の少女はくすぐったそうに笑う。
「なに、やれることをやっただけだよ」
照れ隠しのようにそう口にすると、教室の窓外、遠くかすむ青空をどこか満足げに見上げた。