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カルテット・マジコ ライナーノーツ

本編

https://ncode.syosetu.com/n5404ko/1


このページでは、キャラクターのスペックやエピソードといった表面的な設定ではなく、それらがいかにして産声を上げたのかという「舞台裏」に焦点を当てています。

愛する音楽やスポーツからの引用、無意識の模倣、そして修正の連続……。

作品を構成する最小単位エレメントが成立した経緯を、徒然なるままに書き連ねていきます。 不定期更新。


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■吉濱家の人々


おせち / イムノ:キャラクター成立背景


珍奇な名前のキャラクターが百花繚乱のごとく咲き誇る、現代のエンターテイメント業界。その中にあって「おせち」という名は、まさに未踏の領域――誰にも発見されずにいた手付かずの高峰のように、私の目には映りました。 日本人にとってこれほど馴染み深い言葉でありながら、「パンナコッタ(・フーゴ)」や「(罪木)蜜柑」のように架空の人物名として採用された例を、少なくとも私は他に知りません。このあまりに意外、かつ不思議と耳に残る響きこそが、彼女の原点です。


彼女のヒーローネーム「イムノ(Himno)」は、スペイン語で「賛歌」や「応援歌」を意味します。しかし私にとって、この言葉が指し示す楽曲は、後にも先にもたったひとつ。私が愛してやまないFCバルセロナのクラブアンセム、『El Cant del Barça』です。 カンプ・ノウに響き渡るクレ(サポーター)たちの熱唱。選手とサポーターが一体となって共有する、クラブへの揺るぎない忠誠心と誇り。そのすべてを体現してほしいという願いを、この名に込めました。


ビジュアル面において強い影響を受けたのは、『マスターズ・オブ・ユニバース』の主人公、ヒーマンの世を忍ぶ姿「アダム王子」です。金髪のおかっぱ頭にピンクのベストという、あのアダム王子の独特な色彩とシルエットが、イムノの外見のベースとなっています。


しかし、変身後に屈強な剣士となる彼とは対照的に、イムノが手にするのは西洋剣ではありません。かといって「制服に日本刀」という安直なテンプレートに落ち着くのも違う。そんな葛藤の末に白羽の矢が立ったのが、『ファイナルファンタジー』シリーズのプロデューサー・野村哲也氏によるあの大発明――「中二病の金字塔」と言っても差し支えない画期的な武器、

ガンブレードでした。


かくしてガンブレード使いとなった彼女の戦闘中核を担うのが、「ソイル」と呼ばれる3種の魔弾です。 第一の「こんにゃく味」は、『スーパーマリオ64』のメタルマリオに源流を持つ、一時的な無敵化能力。 第二の「ソーダ味」は氷結弾ですが、これは正直なところ「3種類くらいは能力にバリエーションがほしい」という数合わせの発想から追加されたものです。その場しのぎで生まれたという出自は、本編での出番の少なさにも如実に表れてしまっています。


そして第三の「レモン味」。電撃を纏った高速斬撃を放つこの魔弾は、その使用頻度の高さからわかるように初期構想では彼女の唯一の能力となる予定でした。執筆後、この演出が『鬼滅の刃』の我妻善逸の影響下にあったことに気づきましたが、執筆中には全く意識していなかったのです。 創作において、こうした無意識下の引用は意図的なオマージュよりも頻繁に起こり得ます。「オリジナルだ」と信じていたもののルーツを後から発見し、膝を打つ。ものづくりとは、そうした不本意な、しかし興味深い発見の連続なのかもしれません。


最後に、劇中で彼女がしばしば謀略家やサイコパス的な側面を見せる理由について。

それは彼女が、科学の天才リード・リチャーズ(Mr.ファンタスティック)の性質を反転させた立ち位置――すなわち「文系のマッドサイエンティスト」であり、

「善意のマキャベリスト」として設計された存在だからなのです。



はちる / スヌープキャット:キャラクター成立背景


本作の想像的源流には、『マスターズ・オブ・ユニバース(MOTU)』をはじめ、『ファンタスティック・フォー』『X-MEN』『ミュータント・タートルズ』、そして隠し味としての『パワーパフガールズ』や『探偵オペラ ミルキィホームズ』といった、多彩な作品群が脈打っています。 この系譜において、イムノがアダム王子/ヒーマン、シャカゾンビがスケルターであるならば、はちるに対応するのは、アダムの飼い虎「クリンガー/バトルキャット」に他なりません。


一方で、彼女のヒーローネーム「スヌープキャット」は、かのスヌープ・ドッグのパロディです。 着想元が(緑色の虎である)クリンガーであり、さらにその名を大麻愛好家として名高いラッパーから拝借する――。彼女を緑色に染め上げるための理由は、これ以上ないほど完璧に揃っていました。


しかし、ご存知の通り、現在の彼女の体色は白と黒です。 これは決して、一周回って『ピーナッツ』のスヌーピーに回帰した結果ではありません。 実は、コンセプトスケッチの段階では一度緑色を試したのです。しかし、それを見た瞬間に私は「デザイン的に映えない」と直感し、現在の配色へと変更しました。キャラクターの起源や名前がこれほど明確に「緑」を示唆していたにも関わらず、最終的な決定を覆したのは、純粋な美術上の判断だったのです。


スヌープキャットは、チームの中で唯一、魔法的な特殊能力を持ちません。しかしひとたび戦闘になれば、その実力は他のメンバーから頭ひとつ抜きん出ています。 規格外のパワーと破壊力を、「獣人だから」という最低限にして十分な理由のみで体現する彼女。その戦闘思想のロールモデルは、まさしくマーベルの”超人”、ハルクやシングそのものです。


そして戦いを離れれば、理系的な頭脳と機械への深い造詣を持つという、まったく別の顔を覗かせます。その姿には、タートルズのドナテロやX-MENのビーストといった、チームの頭脳を担うヒーローたちのエッセンスが、静かに、しかし確実に受け継がれているのです。



アシュリー / ホットショット:キャラクター成立背景


イングランドにルーツを持つキャラクター「アシュリー」。その名は、2000年代に世界最高の左サイドバックとして名を馳せた同国のサッカー選手、アシュリー・コールに由来します。 彼はアーセナルとチェルシーというライバル同士のクラブに在籍したことで知られます。そこから、アシュリーもまた熱心なサッカーファンであり、「ロンドン・イズ・レッド(ロンドンは赤)」を信条とするグーナー(アーセナルファン)という設定が生まれました。


ただし、あくまで私の中でのアシュリー・コールは、チェルシーの青いユニフォームでピッチを駆け抜けていた選手です。つまりアシュリーの配色は、「炎の色とは何か?」というもっと根源的な発想から来ています。もしかすると、彼女にはいずれ、より強力な「青い炎」の形態を披露する機会があるかもしれません。もっとも、チェルシー嫌いのアシュリー本人は、その色になることを心底嫌がるでしょうが。


彼女のヒーローネーム「ホットショット」は、ダブルミーニングを持つ言葉です。ひとつは「熱い弾丸」を放つ彼女の能力、もうひとつは「やり手」や「自信家」と訳される、彼女の尊大な気質を表現しています。 実はこの名前、命名プロセスにおける二者択一の勝者でした。 対抗馬は「太陽や恒星にまつわる、詩的な名前」です。カルテット・マジコの4人になぞらえて、4つの星から成る「からす座」の星「ギェナー」など、彼女を象徴しうる詩情豊かな候補もありました。


しかし最終的に、ヒーローネームには抒情性よりも、キャラクター性を瞬時に伝える響きの良さと分かりやすさが不可欠だと判断しました。その結果、彼女の本質を的確に射抜く「ホットショット」が選ばれたのです。……ええ、お察しの通り。チームの中で唯一、彼女の名前だけは音楽用語やミュージシャンから採用されていません。


能力や立ち位置は、見ての通り「ヒューマン・トーチ」です。これは本作『カルテット・マジコ』自体が、『ファンタスティック・フォー』へのオマージュであることに深く根差しています。 正直なところ、元ネタをあまりに色濃く踏襲しすぎることには、作者として少なからず葛藤がありました。ですが、その能力が見せる純粋な見映えの良さ、空戦要員としての戦術的価値、そして何よりアシュリー自身のパーソナリティーにこれ以上なく合致しているという事実が、最終的に私の背中を押したのです。


その性格もまた、様々な影響下に成り立っています。 彼女の根底にある、皮肉屋でジョークを好む気質。それは『ファンタスティック・フォー』のシング(ベン・グリム)、オアシスのギャラガー兄弟、そしてかのスタン・リー自身の作風といったエッセンスを織り交ぜたものです。さらには、私の過去作『クォン・センダ』に登場するスェルク(彼女もまた上記の人物へのリスペクトから生まれたキャラクターです)から、その性質をそっくり引き継いでもいます。


……もっとも、これら全ての源流を辿っていくと、結局は「ジョーク好きの皮肉屋」という、作者自身の性質に行き着いてしまうのですが。 ……あるいは順番が逆なのかもしれません。私はただ、自身の性向から生まれたキャラクターを皆様に分かりやすく紹介するために、同類の有名人たちに仮託して説明しているだけなのかもしれないのです。



さな / ミーティス:キャラクター成立背景


「さな」という名前に、特筆すべきエピソードはありません。それは「おせち」や「はちる」と同様です。特定の作品や故事からの引用ではなく、ただ純粋に、その響きの良さだけを頼りに手繰り寄せた名前です。


ヒーローとしての彼女――ミーティスの能力は、「呪符を操ること」を主軸に、予知、サイコキネシス、ヒーリング、霊視、アポーツといった、ベーシックな霊能力の数々で構成されています。 この能力体系、とりわけ「バリアを展開できる」という点において、彼女は『ファンタスティック・フォー』のインヴィジブル・ウーマンのスーパーパワーを変奏させた存在でもあります。


そこから、コードネームの着想は「札(カードや紙幣)」に似た形状のものへと向かいました。 お金にちなんだ「ペイデイ」や「キャッシュレジスター」、あるいはカードゲーム用語の「トップデッキ」「ローグデッキ」「ジェムミント」など、様々な言葉を検討の俎上に載せました。しかし、どれも決定打には欠けていました。


試行錯誤の末、最終的に採用されたのは、当初の「札」というアイディアとは全く無関係の、私が好んで聴いているダブステップDJ、「MitiS」の名前です。


もっとも、その名をそのまま拝借したわけではありません。DJ本人の発音は「マイティス」に近いのですが、そこから着想を広げ、「ミティス」「マイティス」「ミーティス」という3つの読み方を検討しました。 その中から、最も響きが可憐で、彼女の持つ女性的な柔らかさにふさわしいと思われた「ミーティス」を選び取り、決定稿としたのです。



吉濱尊・吉濱尚猛尊/オールラウンダー


カルテット・マジコの母であり師匠である彼女。その名称や立ち位置は、『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ(TMNT)』の導き手として知られる、スプリンター先生ハマト・ヨシの、ほとんど完全なる転写と言ってよいでしょう。


彼女の姓「吉濱」が、1987年版タートルズ(旧亀)の吹き替え版における「ヨシハマ・タケシ(原語版ハマト・ヨシ)」に由来することは前述の通りですが、その下の名前――神名の構成にも、いくつかの意図が込められています。


フルネームに含まれる「尚猛なおたけり」のうち、「たける」の字は、元ネタである「ヨシハマ・タケシ」の「タケシ」の要素を、神名らしく読み替えて取り込んだものです。一方の「なお」に関しては、純粋に語感と響きの良さだけで採用しました。


そして、最も重要なのが最後の一字、「みこと」です。 これは『日本書紀』の記述に基づくこだわりです。少しトリビアになりますが、日本書紀の冒頭にはこのような定義が存在します。 「大変尊いお方は『尊』といい、それ以外のお方は『命』といい、ともにミコトとむ。以下、すべてこれに従う」と。


現代ではどちらも「ミコト」として混同されがちですが、彼女にあえて「命」ではなく「尊」の字を充てたこと。それはすなわち、作中世界の古代日本人たちにとって、彼女が別格の崇敬を集める、極めて位の高い神として認識されていたことの証左なのです。


一方、彼女のヒーローネーム「オールラウンダー」は、自転車ロードレースの用語に由来します。 作中で彼女が語る、「クライマーやオールラウンダーは作られるもの、スプリンターは生まれてくるもの」という格言。この言葉こそが、彼女の名前が「スプリンター」に対応するものであることを示しています。


実を言えば、タートルズの師匠(Splinter/破片)と、ロードレースの選手(Sprinter/短距離走者)では、綴りも意味も異なります。しかし、これ以上の接点はどうしても見出すことができず……最終的には、妥協としての採用となりました。この少し強引な言葉遊びもまた、彼女を構成する要素のひとつなのです。


正直に申し上げますと、彼女の能力の全貌については、作者である私自身ですら完全には把握していません。 例えば、第1話の冒頭で彼女が見せたテレパシー。あれは『Uncanny X-Men』記念すべき第1号の1ページ目で、プロフェッサーXがその能力を披露するシーンの、純粋な踏襲に過ぎません。


また、アシュリーの能力テストとして空中に光球の的を浮かべてみせた力。あれもまた、80年代のカートゥーンやシルバーエイジのコミックに見られる「ゆるい作風」――その場の都合で現れ、おそらく二度と登場することのない「一話限りの便利能力」へのオマージュです。 つまり、あえて考察的な理解を試みるならば、それらはすべて「全般的な神通力」として、ふんわりと解釈していただいて構いません。


そして、彼女が振るう二振りの七支刀、「おたつ」と「たかき」。この銘には、さらに突飛な由来があります。 そのルーツは、『ポケットモンスター ブラック・ホワイト』の発売前にネット上に出回った、御三家ポケモンの「リーク画像」――いわゆる「嘘バレ」画像です。そこに記されていた、公式名称とは似ても似つかない珍妙な日本語の名前。そこから拝借したのが、この二つの銘なのです。


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■テラー・スクワッド



シャカゾンビ / ゴータマ・アナンダヴァルディン:キャラクター成立背景


彼というキャラクターの原型は、非常にシンプルな「足し算」によって成立しています。その構成要素とは、『マスターズ・オブ・ユニバース』のスケルターと、マーベル・コミックのドクター・ドゥームです。 具体的に言えば、首から上および武器であるヤギ頭の杖がスケルター。首から下の重厚な鎧がドクター・ドゥーム。そして、両者から共通して受け継いだ「ヴィランの遺伝子」こそが、あのフード付きのマントなのです。


「魔法と科学の両面に通じている」という設定も、当然ながらドゥームへのリスペクトに基づくものです。そして、古代インドのリシ(聖仙)という設定が開示されていながら、

第1話・第2話の時点において彼があまり魔法を行使しなかったことについても、実は確固たる元ネタが存在します。


それは、ドクター・ドゥームの創造者であるスタン・リーとジャック・カービーが直接手掛けていた時期シルバーエイジのマーベル・コミックにおいて、ドゥームが魔法能力をほとんど使っていなかった事へのオマージュです。 「テクノロジーだけで戦う魔術師」というチグハグ感、初期のパラドックスを、あえて本作でも表現してみせたのです。


彼が仏陀ゴータマ・シッダールタの実弟であり、かつては釈迦教団に属する高僧だったという衝撃的な過去。 実はこれ、日本のヒップホップグループに由来する『シャカゾンビ』というヴィラン名が決定した後に、そこから逆算して導き出された設定なのです。 つまり、作中で尊が娘たちに語った「古代インドの邪悪なリシ(聖仙)」という曖昧な説明こそが、当初の私の頭の中にあった初期設定のすべてでした。


しかし、「シャカゾンビ」という名が定まった瞬間、物語の歯車が噛み合いました。 「シャカ(釈迦)」の「ゾンビ」であるならば、そのオリジンは「仏陀の遺体を乗っ取って最初の復活を遂げた者」でなければならない。 ならば彼は、釈迦の遺体に近づけるほど教団の中枢にいた重鎮であり、実の弟であったのではないか? と


だとすれば、この設定は物語の構造にも完璧にフィットします。 主人公たちの母であるオールラウンダーは「神」です。その宿命のライバルとして対峙させるにあたり、「釈迦の直弟子」という出自は、格の釣り合いという意味でもこれ以上なくふさわしいものになる。


そして何より、仏教の根幹たる「無常(すべては移ろいゆく)」という概念を、自らの開発した「不死法」によって根本から否定する、仏敵としての哲学がそこに生まれる。


自分でも存外に面白いと思えるこの皮肉なバックボーンは、閃きのまま、あれよあれよという間に足されていったものです。名前という「器」が、中身となる「魂」を呼び込んだ好例と言えるでしょう。


彼が持つアジテーターやテロリスト、あるいはポリティカルな悪役としての側面。 そのモデルとなっているのは、ヒトラー、スターリン、アミン、ムガベ、チャベス、カダフィ、フセインといった歴史上の独裁者たち、あるいはマルコムXのような強烈な賛否を呼ぶ指導者たちです。私はこれらの人物像から、そのカリスマ性と狂気のエッセンスをうっすらと、しかし満遍なく抽出して彼に与えました。


しかし、それらの歴史的背景以上にもっと直接的で、私の創作を突き動かした要因があります。 それは、「『Call of Duty (COD)』や『Battlefield (BF)』のキャンペーンモードのような物語をやってみたい」という、当時の私の偽らざる欲望です。 第1話のストーリー構成に色濃く反映されている、あの軍事スリラー的な展開とスペクタクル。それこそが、後のお話にも随所で顔を出す、政治的モチーフの下に隠された、私の原初的な衝動の正体なのです。

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