Issue#02 I UNDERTALE CHAPTER 5 44
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「見るからにヤバいこと書いてる……でも、もう、これに賭けるしかないっ……!暴走した機械が、この空洞
の岩盤圧で自壊してくれることを祈ろう!」
彼女は、禁断のレバーに指をかける。その瞬間、4人の視線が、言葉もなく交わされた。
互いの瞳に映るのは、恐怖と、諦めと、そして、世界を救うための最後の覚悟。
押し黙るしかない。他に道など、どこにも残されていなかった。
“ガチン!”
重い金属音と共に、イムノの手が、希望と破滅のレバーを渾身の力で叩きつけた。
――一瞬、世界から音が消えた。
次の瞬間、ゲートは凝縮された宇宙のエネルギーを純白の光として解き放ち、その奔流は少女たちの網膜を焼き切った。
金属の円環構造が瞬時に白熱し、ガラスが割れるような高周波が空間そのものを引き裂き、骨を、魂の芯から震わせる。
現れたのは、異次元の窓などという生易しいものではない。それは、大宇宙の設計図に潜んでいた、たった1行の論理
的欠陥。みずからを無限に参照し続けることで時空の安定性を根底から破壊する、致命的なバグだった。
今、その禁断のコードが実行され、現実が、定義を失って崩壊していく。
裂け目の向こう、光さえ届かぬ深淵で何かが蠢く。そこから現れたのは、悪夢そのものが形を成した光景だった。
鏡面の奥から、新たなゲートが産み落とされる。
産声も待たず、その“子”は次なる“孫”を吐き出す。誕生と増殖が、もはや区別できない速度で連鎖していく。まるで万
華鏡の中で砕け散った無数の鏡が、それぞれに新たな万華鏡を映し出し、無限に繋がり合うような、狂おしき自己増殖。
それは、時空そのものに芽生えた、機械仕掛けのがん細胞だ。
幾何学的な円環が、現実の織り目を喰い破りながら指数関数的に分裂し、巨大で歪な紋様を、
電子の叫びと共に空洞の隅々へと押し広げていく。
海さえ呑み込むはずの広大な地下空洞も、その異常な増殖に耐えきれなかった。際限なく膨張する機械の集合体
は、やがてみずからが作り出した超質量と圧力に苛まれて、内部から軋みはじめる。金属と岩盤が断末魔の轟音を立て、圧
壊する円環が、死にゆく星のような光を放って連鎖的にショートしていく。制御不能の増殖は、それ自体の重みによっ
て、ついに壮絶な自壊へと転じた。
背後で鳴りひびく歪な音を振り切るように走る、少女たちの瞳には、宇宙の終焉を早回しで見るかのような光景が焼
き付いていた。自分たちが解き放った「小なる無限」が、自壊しながら現実を飲み下していく。
その神話さえも超越したカタストロフを前に、彼女たちは祈ることも、叫ぶことも忘れ、ただ生き延びるという本能だけを頼りに、
崩壊する世界を駆けるしかなかった。




