Issue#02 I UNDERTALE CHAPTER 5 36
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――圧巻の光景である。
腕も足も持たぬ異形の長大なる躯体が、旺盛なバタフライのごとく大地を泳ぎ抜けるたび、地盤は砂ごと、あるいは岩ごと盛大にかき分けられていくのだ。
それはまるで、惑星そのものを耕す“巨神の鋤”であり、草原も岸壁も、すべては同じように、狂暴性を前面に凝縮した巨体の前に打ち砕かれ、
粉砕されていった。
異変を察知した前線の地底兵たちは次々と布陣を始めるが、その軍勢のひとつひとつは、たったひと噛みで飲み込まれそうなほど、
あまりにも取るに足らぬ存在でしかなかった。
ワームの背に跨る4人は、腰を低く落とし、どこか愉しげな面持ちで、彼らの長大な装甲に結った手綱をたくみに操る。
その絶妙な舵取りによって、ワームたちの進路は意のままに誘導されていく。
地上戦艦の艦砲斉射や、弧を描いたビーム弾が次々と蟲の列に炸裂するが、それらはワームの腹を起点に発生する莫大な砂嵐に、
あえなく呑み込まれ、音も煙もその中に溶けて消えた。
「このまま突っ込めー!!」
スヌープキャットが、無邪気な歓声を上げる。
やがて、キロメートル級の巨体を先頭とした“蟲の津波”が、地底人の軍勢めがけて、無垢なる平原をことごとく粉砕しながら襲いかかった――。
最前列に並ぶ陸上軍艦は、逃げ惑う兵士たちを虫のように振りまきながら、正面から突っ込んできたワームの顎に突き破られる、
内部で連鎖する圧壊と爆発が装甲のあちこちから火花を吹き上げ、金属の外殻が四散していく。
地底人の兵士たちは、なすすべもなく散り散りに逃走し、ある者は裂け目に呑まれそうになり、ある者はただ圧倒的な砂嵐の中に押し流されていった。
その絶大なる暴力の前に、抗うという意志さえ彼らの意識からは一瞬で掻き消されてしまったようだ。友軍は、危機に陥った友軍の
手をただ取ることばかりに必死で――それほどのあわただしい逃げ様だった。
「……総長、ゲート方面で異常発生ッス!ゲートが制御不能なって、勝手に起動――中から出てきたワームの大群がこの本部の方めがけて突進してきやす!」
報告が終わるか終わらないかのうちに、本部のモニターもけたたましい警告音を発し始める。
ドローンの映像には、青白い閃光に包まれたゲートの円環を、次々とメタリックなワームの巨体が突破してくる様子が克明に映し出されていた。
「なにィ!?どのくらいの規模だ!」
テラリアキングの声が低く響き渡る。
「最初は数匹でしたが、今や後ろから後ろから途切れなく……とても正確には数えられませんが、何10匹もの隊列で押し寄せてきやす!
イーター・オブ・ワールド級が複数!」
兵士の声は明らかに上ずり、背後では本陣の参謀たちが色めき立つ。
「防衛線は!?門前の警備隊はどうした!?」
「すでに突破され、壊滅状態との報告です!」
「何やってやがる、ゲートを閉じろ!――制御系は生きているのか!?」
「いえ、応答がまったくありません! すべてロックされています!」
映像の向こうでは、地鳴りと共に土煙が舞い、巨体のワームが地面をのたうち回りながら、大地を飲み込んでいく。
それは大震災がもたらした思いがけぬ津波――そのどこか淡々して現実味の薄い大破壊の映像の、初報を目の当たりにした時のような
言葉を奪う衝撃を彼らに与えていた。




