Issue#02 I UNDERTALE CHAPTER 5 35
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……シャカゾンビが建造したマルチバーサル・ゲート。その管理を任されたテラリアンの兵士たちが、
丘陵地帯で退屈そうに警備にあたっていた、まさにその時だった。
予兆もなく、ゲートの円環が青白い光を放ち、空間が電子的な悲鳴を上げてゆがみ始める。
「なっ……急に装置が起動したぞ!」
「どうした!? 誤作動か!」
制御コンソールは応答せず、インジケータだけが虚しく瞬く。
だが、円環の中心――ゲートの鏡面は、すでに一方的に“向こう側”の世界をうつし出し始めていた。
その向こうで、夜の海を思わせる漆黒の空間が波打ち、きらめく無数の光点が奔流となって迫る。
やがて、その潮流のただ中から――
「うわああああああああ!」
兵士の絶叫は、最初の咆哮にかき消された。
ゲートの円環を、巨大な金属質の環形生物が火の輪くぐりのサーカスのように跳び越え、
着地の衝撃だけで大地が爆ぜる。1匹、また1匹……その出現は連続し、とどまる気配もない。
並行世界のメタリック・モンゴリアンデスワームが、解き放たれた災厄となって、この世界へと雪崩れ込んだのである。
ホットショットが、ワームの背をサーフボードのように乗りこなしながら、風を切って叫ぶ。
「マルチバースとの特別コラボ実施中!今ならでっかいゴカイが貰えるぞ!」
「いつもと、全然風の感じ方がちがーう!」
続けて別のワームの上――手綱を握ったスヌープキャットが、耳をピンと立て、疾走の快感に身を震わせた。
「これ、病みつきになりそう!」
ミーティスも、その巨体が生み出す重力加速度に興奮を隠せない。
暴れるワームの背で仁王立ちするホットショットは、平然と髪をなびかせ、
「ブレーキの方法さえ考えれば、乗り物として実用化できるな。……ま、私は飛ぶけど」
その隣でイムノが綱を手に、かるく身を沈めて応じる。
「わたしも、こっちの方が好きかも!」
4人の少女たちは、規格外の暴走を、むしろ全身で楽しんでいるかのようだった。
……その頃、テラリアンの仮設本陣、巨大なホロスクリーンが並ぶ一角では、
側近の1人が足早に駆け寄り、テラリアキングへと声をかける。
「総長、諜報部隊から、ラバシティの最新のスキャン映像が上がったみたいっす!」
部屋の空気が、ひときわ引き締められる。
モニターのひとつには、ラバシティの郊外に新たに築かれつつあるドーム状の建造物が、立体映像として投影されていた。
側近が画面を切り替えるたび、その内部構造の解析映像が次々と浮かび上がる。
「連中が急に造りだしたドームみたいな建物、複合構造で中の様子がサッパリだったんですが、やっぱり、どうやら別の構造があったらしいっす。
それが……これです」
映し出されたのは、堅牢な土台の上に据えられた二重の円環構造だった。水平に広がる輪と垂直に聳える輪とが交差するその組み合わせは、
内部を走る配線の文様や選び抜かれた素材に至るまで、どこか見覚えを呼び起こすものがある。テラリアキングはすべてを直感で悟った。
「……おい……こりゃあ!」
椅子を軋ませて立ち上がり、モニターの方へと詰め寄る。
「……ああ、マルチバーサルゲートだ!我らと同型の……間違いない!」
傍らでシャカゾンビが、めずらしく狼狽した口調で唸った。
「まさか……技術を解析されたか?」
「この短期間で?……ありえぬ……!そもそもどうやって奴らがゲートの存在を!?」
「ヨルシカが、俺の娘が尋問を受けたのかもしれねぇ!いやしかし……あいつが技術まで知ってるわけがない」
テラリアキングが、やるせなく叫ぶと、
本陣の幕僚たちは、顔を見合わせ、緊急対応の指示が飛び交いはじめる。
「すぐに追加偵察を!ゲートが起動する兆候があれば即座に報告しろ!」
「敵がそれを使って何か仕掛けてくる意図なら……こっちの防衛線を今すぐ再構築すべきかと!」
その場には、一瞬にして嵐の前の空気が満ちる。
……だが、すでに手遅れだった!そのころ緑の空洞の向こう側では――無数のメタリック・モンゴリアンデスワームどもが地平を蹂躙していたのだ!
永遠のごとく連なる丘陵を、あたかも大海原に見立てて、怒涛のごとき疾走劇を繰り広げながら!




