Issue#02 I UNDERTALE CHAPTER 5 29
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その核心を突く問い。それは、マクロブランクのプライドをいたく傷つけたらしい。
「もちろん作れまちゅが!」
彼は、触手を逆立てるようにして、ムキになって反論した。
「――そもそも、この次元からわちきの次元へは、ゲートを使ったところで本来なら到達できないはずなのでちゅ!
なぜなら、わちき自身が外からのあらゆるエネルギー的干渉を断つように設定していまちゅから!今回わちきがここへ来たのは、ようするに偶然の産物なのでちゅ。
個人的に行おうとしたマルチバース間の移動と、ゲートによる引き寄せのタイミングがまさに重なり、その上で次元間を漂う波長の波形が、
超天文学的な確率で一致してしまった――これは、そういう不幸な事故なのでちゅ!」
その早口な弁明は、ほとんど悲鳴に近かった。必死にみずからの技術力と、この事態の不可抗弁性を訴えるその
姿には、先ほどまでの尊大さは見る影もなかった。
「……なるほどね」
おせちは、ただ短く相槌を打つ。その落ち着き払った態度が、かえってマクロブランクの焦りを助長していること
には、彼女自身、気づいていなかったのかもしれない。
「……じゃあ、それでもいいからゲートを作ってくれる?」
「なんででちゅ?」
「それでテラリアキングとシャカゾンビを倒せるかもしれないからだよ。このラバシティは今、テラリアキングの軍勢によってすべてのトンネルが封鎖されていて、
どこからも外に出られない状況になっている。緑の空洞にだって、当然監視の目を掻い潜りながらでは辿り着けない。
でも、だからといって向こうもこっちを簡単には攻めてこられない。
もし下手な動きを見せれば、王女の命もろとも、この街を爆破するって脅してあるから。
つまり、地上とテラリアン、そしてテラリアンと私たち――地球は今、二重の膠着状態にある。
みんな、次にどう動くかばかり考えて、今すぐ直接戦うなんて誰も思ってもみない。そういう探り合いの段階。
でもそれはせいぜい1週間の話でしょ。どこかの陣営がしびれを切らしたらそれで地球人はみんな連鎖的に絶滅する。
だからこそ、動くなら“今”なんだ!」
おせちは、自信に満ちた様子で言い放った。その提案に、マクロブランクは一種の感銘を受けたように触手を震わせる。
だが、
「……でもなぁ、それは無茶でちゅよ!この星の機械じゃ加工精度が低すぎるし、パーツの大半が代用品になる!
これじゃゲートを安定して動かすなんて到底無理でちゅ!」
次の瞬間にはすぐさま現実的な問題を指摘し、露骨に渋い顔を見せる。
「……でも、シャカゾンビには造れたんだよね?」
おせちは、言いたいことの羅列の中から、単なる事実だけを、切って口から落としてみせた。
それが、この手合いのプライドを何よりも効果的に抉ることを知って。
「……ふーん」
その、値踏みするような響きが、マクロブランクの理性に火をつける。
「むっ……!たしかに『∮ᚦ≠⟁∴⧫₪⌰ↃЖ』式ならば、この星の原始的な工業事情でも、まあ、できなくはないでちゅ!
シャカゾンビとやらの造ったのも、どうせその方式に違いないでちゅ。わちきにとっては、あまりに旧式すぎて、考慮に値しなかっただけでちゅ!」
「……なんて?」
アシュリーが怪訝そうに首を傾げて聞き返す。
「だから、『∮ᚦ≠⟁∴⧫₪⌰ↃЖ』式でちゅ!」
マクロブランクは、いらいらと触手を頭上でふりまわす。
「……ああ、はいはい、そういうことね。わかるよ。私もさ、よくわかんない漢字は適当にそれっぽく走り書きするから」
アシュリーは意地悪そうににやりと笑い、からかうようにわざと相槌を打った。




