Issue#02 I UNDERTALE CHAPTER 5 23
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上昇の最中、ホットショットは腕の中の生物をあらためて見下ろし――そして、盛大に顔を引きつらせた。
「……ゲッ、脳味噌に顔がついてる!わるい、そういえばウチペット禁止だったわ。段ボールは用意するからさ、
『拾ってください』っていうの自分で書いてくれるか?」
「……なんだか今、しれっと大変失礼なことを言われた気がするでちゅが!?」
風圧に頬を打たれながら、マクロブランクは憤慨する。
ともあれ、ホットショットと、彼女を追って飛翔したミーティス、そして腕の中の奇妙な亡命者は、こうし
て無事に灼熱と腐敗の奈落から脱出したのだった。
鉄の地面に優しく下ろされると、奇妙な生き物は2人に対してぬるぬると頭を下げた。
「……ふぅ、無事サバイブしちまったでちゅ。あらためて、わちきの名はマクロブランク。助けてくれて、
ありがとうでちゅ」
その表面は溶岩の熱で乾きかけ、薄膜の一部がぷつぷつと泡立っている。
「いや礼には及ばない。防犯の関係でゲンナマ以外は受け取らないことになってるからな――」
溶岩の流れる側溝を軽やかにまたぎ、炎の変身を爪先から解いたアシュリーは、ポケットに手を突っ込んだまま、
ビールの柄がプリントされたスカジャンの、肩口を飄然とそびやかして名乗った。
「――私はカルテット・マジコのホットショット――吉濱アシュリーだ」
「……ミーティスです。同じく、吉濱さな!」
隣のさなが穏やかに応じ、半歩前へ出てマクロブランクに向き直る。ここでの慇懃な一礼は、
しっとりとした髪先が重さを帯び、ほのかな香りを舞い降りさせるほど自然に深くなり、その、いちばん底で静かに持続された。
その所作に、マクロブランクは目を丸くする。
「なんと……おなじ一族とは到底思えぬほど、そちらのさなという方は品がいいでちゅな。それに比べてアシュリー、
オマエは……」
という短評を賜ったアシュリーが眉をひそめる横で、マクロブランクは不思議そうに首をかしげ、ふいに話題を変えた。
「ところで、さな――」
「?」
「――お前たちの家は、本当にペット禁止なんでちゅか?」
その瞬間、溶岩の泡立つ音すら遠のくような、妙な間が広がった。
「え……? そんなことないけど……どうして?」
小首を傾げて答えるさな。
「…………」
マクロブランクは、ぴたりとアシュリーに視線を据え、目を細めた。
すると彼女は露骨に視線を逸らし、後頭部で手を組む。そして――わざとらしく調子を外した音程で、口笛を
吹き始めた。
「……とにかく、あのタワーに向かうぞ。街もちょうどいい具合に焼けてきたしな!」
アシュリーは、ごまかすように軽く足を蹴り出し、視線を遠くの構造物へ向けた。
視界の先、地底都市の景観を突き破るようにそびえるのは、金属で編まれた巨塔
だ。外壁のパネルには蒸気が帯のように絡みつき、随所から青白い光が脈打つ。塔頂は巨大な通気口の
ように開き、地底の空気を吸いでは吐くたび、周囲の大気がゆらりと揺れた。
「そういえば、この街はさっきから随分と騒々しいでちゅが……何かあったんでちゅか?」
マクロブランクが、触手の先で塔の方角をくるくると指し示す。まさにその時、遠景で新たな火の手が煌々
と上がった。
「ああ……たぶん、私の家族がクーデターを煽ってる」
アシュリーが、こともなげに言い放つ。その言葉に、マクロブランクの“顔”が一気に輝いた。
「お前たち、極悪でちゅか!?……気に入った、わちきも連れていくでちゅよ!」
触手を勢いよく振り回し、溶岩のしぶきが小さく弾ける。
アシュリーは片眉を上げ、笑いをこらえながら肩をすくめる。塔の頂にまたひとすじ、青白い閃光が走り、
行く先がますます騒がしくなることを予感させた。
どうやら、クーデターは成功しつつあるらしい。




