Issue#02 I UNDERTALE CHAPTER 5 22
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……喧騒を増す市街地の気配を背に、ホットショットとミーティスは見通しのいい工業区画をひたすら疾走していた。
視界の先まで、錆の浮いた鉄板がパッチワークのように無機質な大地を形成し、大小様々なパイプラインが血管のよう
に地を這っている。それは、どこまで行っても代わり映えのしない、うんざりするほど広大な鉄の平野だった。
だが、時折足元に響く低い振動と、鼻を突くオイルの匂いが、こんな郊外にまで、この巨大な機械都市の心臓はその
脈動を抜かりなく届かせているのだと伝えてくる。
「さな、マクロブランクってヤツの気配は?」
「ひとつ離れてて、ずぅ~っと横滑りに動いてるのがある。それかも!」
「地下か?」
「けっこう深い」
「だったらあとは、下水道をドライブするのが趣味のイカれた奴がこの国に存在しないことを祈るだけだな。
正直、4億人もいるんならそういう界隈が2つ3つはあってもおかしくないけど」
やがて2人の視線の先、鉄柵とコンクリート壁に囲まれた広大な敷地が姿を現す。正門の看板に掲げられた
異国の文字は読めずとも、鼻を刺す腐臭と無骨な施設の様相が、そこがゴミ処理場であることを物語ってい た。
バイクのような加速で敷地に突入した2人は、奥でひときわ存在感を放つ灰色の鉄扉に行き当たる。ゲート
の両脇には高圧バルブと配管が絡みつき、その表面には長年の腐食が醜い傷を刻んでいた。
「ここだよね!?入口」
ミーティスが手早く呪符を抜き放ち、ひらりと投げる。札は扉に吸い付くと、迸る光の術式を瞬時に展開し、
爆炎と共に鉄扉を吹き飛ばした。
跡形もなくなった開口部から、熱気を孕んだ濃密な廃液の臭気が押し寄せ、鼻腔を焼く。
「さすがに当たりだな!」
ホットショットが声を大にした。
2人はためらうことなく、破砕された建物へと身を滑り込ませる。背後から響く警備兵の怒声は、秒ごとに
遠ざかっていった。
奥へ進むほどに熱が肌を刺し、ただよう空気は黄ばんで霞む。濁流と化した廃棄物の川を、
ホットショットとミーティスは黙々と下っていく。
それは場に蔓延する臭気を余計に感じ取ることがないように、自然と凝らされた工夫だった。
流れは重く粘り、周囲の壁は湿った油膜に覆われ、天井からは絶えず汚水の雫が落ちている、そんな環境をどこまでも
行かねばならぬというからには――。
「……間に合うか?」
ホットショットが自問し、さらに加速する。
その先――腐臭と焼けた樹脂の匂いが混じり合う、褪せた色の丘が見えた。雑多な生ごみ、液状化したマイクロチップ、膨張して
破裂した電池、泡立つ汚泥が、ゆっくりと押し流されては山肌を崩していく。
そして、その頂にそれはいた。脳髄をむき出しにしたような塊から、細い触手が生えた異形。
――マクロブランク。
粘つく触手を頭上に振り回し、要救助者の輪郭を彼は力いっぱい誇示していた。
「おおっ、また熱苦しそうなヤツでちゅな!?しかしエクセレント、じつにエクセレントでちゅ!」
「……“Life on Mars?”デヴィッド・ボウイが予言したのは、この光景か?」
軽口を叩きつつ、ホットショットは廃棄物の山を跳び越え、その奇怪な生命体を片腕で抱え上げる。
そして次の瞬間、斜め上へ旋回しながら腕から解き放った極太のビームが、下水道の天井を抉って大穴を穿つ。
その出力は衰えることなく、地上を超え、はるか上空まで一直線に光の道を拓いていく。




