Issue#02 I UNDERTALE CHAPTER 5 21
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「……俺も行く。やるしかないなら」
「俺もだ。圧政は、今日で終わりにする」
「家族を返してもらう。そのためなら、やるしかない」
別々の場所で発火した小さな決意が、燎原の火のように広がっていく。広場の群衆は、明確にふたつの層を成しはじめた。
しかし、時と共に厚みを増すのは前衛の層だ。後方でためらっていた者たちも、その背中に押されるように1歩ずつ間合いを
詰めていく。もはや、そこに漂うのは単なる怒りではない。みずからの手で未来を掴むという、覚悟の光がその
顔つきに宿っていた。
イムノは短くうなずいた。
「……頼もしいね。決まりだ。――よし行こう」
その合図と同時に、前列が低く身を沈め、突撃の姿勢をとる。
群衆全体が呼吸を合わせ、広場の空気が一段と重く、濃密になった。ひとたび動き出せば、もう止まることはないだろう力である。
「ひとつ、聞かせてくれ――」
最前列の男が、眉間に深い皺を寄せ、問うた。
「――捕虜の返還、そして、俺たちの国が地上を攻めた件だ。和平の段取りはどうなる」
イムノは迷わず応じる。
「じつは私たちってね、ここだけの話なんだけど、
地上世界から全権を託された使者としてここに来てるんだ。君たちが協力してくれるなら、捕虜の返還も和平交渉も、かならず実現させ
てみせる。でもね、そのためには『大義名分』が必要なんだ。だって君たちの国は今世界中を相手に戦争をふっかけてるんだから。
この国の政体が変わったこと、そして民衆が旧体制へ明確に『ノー』を突きつけたっていう事実。
私たちが君たちを新たな交渉相手として認めるためには、そのくらいの最低条件は整わないとね」
「だからこの”形”を作ったと?」
男は、眉間の皺をさらに深く刻み、壇上の少女を射抜くように見つめた。その声には、怒りよりもむしろ、底知れな
い何かを覗き込んだかのような、かすかな畏怖が混じっている。
「半分はなりゆきだけど」
イムノは悪びれもせず、片方の眉をくいと上げてみせる。
「……信じていいんだな」
男は1度、天を仰いでから、吐き出すように言った。それは問いというより、覚悟を決めるための独り言に近い。彼の
視線が、壇上の少女から、これから進むべき道の先へと移される。
「信じるかどうかは、これからの行動を見て決めてくれたらいい。
でも――ここで立ち上がらなかったら、それを見届ける機会なんて、君たちには永遠にないからさ」
イムノの、時に煽り、時に突き放すような応答が、ふたたび前列の士気を引き締める。
そして彼女は、満足そうにうなずいた。
そこへ、装甲部隊の増援車両が、黒煙を巻き上げながら滑り込んできた。
分厚い装甲板の節々から押し出されるようにして現れる兵士たちの盾が、新たな壁となって群衆の前に立ちふさがる。
「来たね!障害は私たちが排除するから、みんなは安心して走って、暴動を広めていって!
王宮にたどり着くまでは一緒にいこう!――」
「……じゃあみんなっっっ、ついてきてッッッッ!!!」
その言葉が合図だった。
イムノの姿が指揮台から掻き消え、次の瞬間、金属音と共に最前列の兵士が盾ごと弾き飛ばされる。続けざ
ま、スヌープキャットが地を蹴り、人間大の砲弾と化して敵陣の中央へと着弾。轟音と衝撃波のなかで、装甲車が、そして兵士
の肉体が、紙屑のように宙を舞った。
2条の途切れない閃光が、道を乱暴にこじ開ける。
その背後から、ついに巨大な人の波が動き出した。
怒りと希望を燃料に、地底の民が鬨の声を上げたのだ。走り出したその奔流は、もう誰にも止められ
ない。




