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Issue#02 I UNDERTALE CHAPTER 5 20

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「帰れ!ここは俺たちの土地だ!」

反感は熱を増し、押し合う肩の間から、敵意の唸りが絶えずふたりに打ち寄せる。


「……協力しないならそれでもいいよ!私たちは、私たちだけでキングを倒す。でもその前に、ひとつだけいいことを

教えてあげる!――」

飄々としたままのイムノは、群衆を見渡して声を張る。


「――さっきの鎮圧部隊。君たちの警察かなぁ?見ての通り、私たちが全員、叩きのめした――」


察しの早かった者もいるようで、これだけの言葉で、広場のあちこちで人々が息を呑む。


「――もし、この場所から私たちだけが逃げたら――残された君たちはどうなると思う?

……そうだね。みんな、今の体制を暴力で覆そうとした危険思想者で、政治犯さ」


そのひと言は号令の属性をあきらかに帯びていた。広場の隅々にまでいつの間にか広げられていたイムノの話術という見え猿袋が、一気に

締め上げられ、満ちていた喧騒を完全に閉じ込めたのだ。


たちまち、人々の脳裏には、逮捕、実刑、拷問、極刑……そうした暗く重い単語が次々と浮かび、

遠くない未来の光景として予感されていった。


「……卑怯な脅しを!」

最前列の男が反抗する。だがイムノは、さらに冷徹な声を重ねた。

「これは脅しじゃない。論理的な帰結。――君たちに、もう選択肢はないんだよ」


その響きに、ぶり返しかけた怒号が一掃される。

押し黙った広場に、彼女の言葉だけが通る。


「ねえ、よく考えてよ。私たちと組めば絶対勝てるんだよ?」


「……」


「……まあ、気持ちはわかるよ。急にクーデターを一緒に起こそうなんて言われてもさ、そんなの怖いに決まってるよね?

でもだよ?私はこうも考えてる。おなじ場所に集まったからっていってさ、みんなが同じ考えの持ち主ってわけでもない。


ただ派兵の失敗を問いたいだけで、王権の転覆までは考えてない人もいれば、単に冷やかしで来た人だっている。

だったらさ、本気で王権の根っこを引き抜く気でここに来た人も、中には必ずいるはずだよね?」


イムノの視線が、探るように群衆を舐める。押し合っていた肩が、わずかに離れた。


「いるなら前に出てきて。今日、この瞬間、君たちには勝機が生まれた。だから――そういう覚悟のある人だけが、私た

ちと手を組むんだ。……あっ、言っとくけど、べつに私たちだけでもテラリアキングのことは倒せるよ?


でもさ、そんなこと言ったって信じてくれるわけないよね?つまり、これは普通の取引とは違う。私たちの強さを

信頼できない人ほど私たちの提案には乗るべきなんだ」


そのにこやかで熱のない呼びかけが、広場全体を恐怖させた。

渦巻いていた怒りは、形を変え、新たな熱を帯びようとしていた。


「――俺らだよ――」

低く、押し殺した声が5列目のあたりから響く。

人の壁がモーゼの海のように割れ、現れたのは、肩幅の広い、いかつい面構えの男だった。


「――その”本気”の連中ってのは」


その目には迷いがなく、片手を高く振り上げると、周囲に潜んでいた仲間たちが、次々と歩み出てくる。


彼らは合図を受けた瞬間、腰や胸元に隠していた銃を、まるで舞台の幕を引くかのように、一斉に抜き放

った。鈍い鉄の質感が灯りを反射し、無数の銃口が、静かに地面へと向けられる。


「――!」


その光景に、広場の空気が一変した。

ざわめきが走り、息を呑む音、後ずさる足音、押し合う肩のきしみが混じり合う。誰かが短く叫び、誰かが口

を覆う。緊張の波が、瞬く間に群衆を伝播した。


さらに別のグループも呼応するように現れ、武装蜂起に賛同する者の総数は、やがて数100を数えるに至った。


「……お前ら、このままでいいのかぁ!?」


最初に名乗りを上げた革命派の男が、壇の麓から、すっかりイムノの側近のように声を張り上げる。


「たしかに、この地上人に俺達の熱意がまんまと利用されたのは事実だ!だが、こいつの言う通りでもある!

今日、ここで腹を括れ! こいつらに乗って勝つ以外、俺達全員が生きて明日を迎える術はない!」


過激派とはいえ、おなじ地下で暮らす者の叫びだ。その言葉は、迷いを抱えた者たちの胸を直撃する。

立場の定まらなかった者たち――とりわけ青年層が、磁石に引かれるように最前列へと合流していく。横断幕

を握っていた手は、昏倒した兵士が手放した銃へと置き換わり、その決意が、隊列の密度を増していく。


住宅の窓からも、おっかなびっくり顔を覗かせていた住民たちが、少しずつデモ隊へと合流し始めた。


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