Issue#02 I UNDERTALE CHAPTER 5 19
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後に残ったのは、2条の光跡。
兵士たちの間を縫うように駆け、ほとんど瞬間移動とみまごう速さで、追跡の部隊や、治安維持隊の前だけに現れては消え、的確に、そし
て一方的に彼らを打ち倒していくふたつの影は、一瞬たりとも同じ場所には留まらなかった。
完全武装の兵士200人余りを、3秒と経たずに昏倒させた、その直後――
イムノは20mを跳躍し、後方への宙返りを交えながら指揮台へと着地する。その姿を、広場にいるすべての者へ誇示す
るように見せつけた。
「……何が起きた?」
「おい、今のは……!」
「ガキ2人が、警邏隊を全滅させやがった!」
「……貴様ら、何者だ!」
雑多な怒声と驚嘆の渦。その中から放たれた問いを、イムノは待っていた。
彼女は振り返り、群衆の魂を射抜くように、冷静に、しかしはっきりと告げる。
「私はカルテット・マジコのイムノ。――地上から来た」
そして隣に並んだスヌープキャットが、弾けるように声を張る。
「そしてウチはスヌープキャット、レペゼンは吉濱キャティ・スタイル!担当カラーは白と黒ッ♪」
ゴキゲンな名乗りを終えるや、2本の腕を軸にV字開脚し、その脚を体軸の周りに巡らせていく。
ブレイキンの「トーマスフレア」から「ウィンドミル」へ、さらに「エアートラックス」へ――流れるようなパワームーブの連鎖。
最後は「ハローバック」に茶目っ気ある表情を添え、そのまま腕の力だけで弾むように跳ね上がった。
だが、群衆の反応は薄い。声色には警戒、好奇、そして露骨な拒絶が入り混じっていた。
「……まだそういう雰囲気じゃなかったみたい」
イムノが苦笑を浮かべ、視線を前へ戻す。
「……うん」
スヌープキャットは肩を落とし、小さく反省の色を見せた。
「……侵入者だ!」
「何が目的なんだよ!?」
彼らの敵意を断ち切るように、イムノはかるく咳払いをして1歩前へ出る。
そして、指揮台の床へと刀身を突き立てた。その無遠慮な迫力に、最前列の者たちが息を呑む。
「テラリアキングが10日前、何をしたか知ってるかい?
見たこともないくらいおっきなワームを引き連れて、私たちの世界に攻めてきたんだ――」
その言葉に、場の騒ぎが一瞬、水を打ったように静まり返る。
「――それをけちょんけちょんにして追い返したのが、私たち。なんならそのワームだって倒しちゃった!」
今度は低いどよめきが、波紋のように広がった。民衆は互いの顔を見交わし、眉を寄せ、彼女の言葉の真意
を計りかねて困惑している。
「すこしの間だけど、デモの様子を見させてもらったよ。君たちはテラリアキングの暴政に抗うため、ここに集まってるんでしょ?」
みじかく息を継ぎ、イムノは広場全体を睥睨する。
「私たちは、彼を追い詰めにきた。もう2度と地上にちょっかいを出せなくするためにね。
今の体制に不満がある人は――動機は違っても私たちとは利害が一致するよね?
どうだろう、よかったらこのまま私たちと手を組まない?」
そして、この申し出である。しかし、これは意図とは真逆の火を点けた。
ざわめきは敵意という鋭い棘を帯び、怒声の津波となって彼女に押し寄せる。
「……地上人だと?」
「ふざけるな! 俺たちの街で何を企む!」
「地上人はいつもそうだ! 石油も、レアメタルも、欲しいものを根こそぎ奪いに来たんだろう!」
最前列の男が、拳を天に突き上げた。
その動きに呼応し、群衆の奥からも石やボトルが投げつけられる。無数の視線が憎悪の熱を帯び、たった2人の少
女へと突き刺さった。
「あの王とやり合った?んな話信じられるか!」
「結局はおんなじ穴のムジナだろ!」
「俺たちを盾にして戦う気か!」
怒声が重なり、金属の壁に反響して鼓膜を打つ。誰かが足元の石を拾い、別の誰かがそれを押しとどめる。
そんな小競り合いがいたる所で連鎖し、広場は巨大な渦のようにざわめき続けた。
「今年のフジロックはずいぶん熱いね」
「そうかもね。でもここからがヘッドライナーの腕の見せ所だよ」
物の飛ぶ中で、スヌープキャットとイムノは苦笑し合う。




