表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/63

Issue#02 I UNDERTALE CHAPTER 5 17

本家にアシュリーの立ち絵を追加

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25490740#5


追跡劇の舞台は、都市の幹線道路へと移る。

錆びついた鉄板を無骨に継ぎ接ぎしたスピーダーバイクが数機、甲高いタービンの駆動音を響かせながら、地上の車線

を川の流れのように見下ろし、その上を交差するように飛び越えていく。2人乗りの機体は、排熱で陽炎のようにゆらめく空気の尾を

引きながら、建物の壁面をかすめ、パイプラインの森を縫うようにして、少女たちの背後へ執拗に食らいついた。


やがて、長い直線路の遠方。ついに2、3台が、前方の障害物を巧みに回避して射線を確保し、4人の背中を完璧に照準へ

と捉えた。ブラスターの驟雨が、アスファルトを抉り、赤い火花を散らしながら彼女たちの足元へ殺到する。


「ぶっ殺してやるぞ、この野郎ッ!」

先頭の1台に乗る後席の男が、身を乗り出した射撃姿勢のまま怒声を張り上げる。


「逃がすか、クソが――」

操縦席の相棒が吐き捨て、勝利を確信したその瞬間だった。眼下の路面に、あり得べからざる光の文様が浮かび上がる

のを、彼は見た。それは紙片か――。墨で描かれた複雑な術式が、みずから発光しているかのごとく、異様に濃い輝きを放っていた。


「……あ? なんだこりゃ――」

2人ともが反射的に顔を覆った直後、眼下の閃光によって彼らの輪郭は機体ごと塗り潰される。

路面に仕掛けられた最初の呪符が起爆し、それが皮切りとなって、後続のバイク隊列の直下でも呪符が次々と連鎖的に炸裂。


立ち昇る神聖な爆炎の柱が、直進するすべての機体を順に呑み込んでいった。やがて、すべての炸裂音がひとつに溶け合い、鼓膜

を突き破る轟音と衝撃波が、街路全体を揺るがした。


それは、ミーティスがあらかじめ地雷のように仕掛けていた呪符の起爆だ。

「これなら、足を止めなくてもいいね!」

遠ざかる彼女の、楽しげな声だけが聞こえた気がした。


やがて戦火は市街全域に広がり、街そのものが巨大な混戦の渦と化した。

破壊の痕跡を光の尾のように引き、巻き起こる爆発さえも加速の踏み台としながら、4つの影は、鉄の迷路をピンボー

ルさながら縦横無尽に駆け抜けていく。


「市内に侵入者発生!人数は最低4名、所属・目的ともに不明!

ただし超常能力保持の可能性、極めて高し!

現在、噴気孔広場方面へ移動中! 各部隊は相応の戦力をもって迎撃せよ!」


無線の緊急コールが、警報とともに街のより広い区域へと響き渡る。

そのたび、さらなる増援部隊が陸続と通路や歩哨塔から出撃してくるが――その圧を増す包囲網ですら、4人の行動速度

と連携には到底追いつけなかった。


地下帝国テラリアの首都ラバシティ、その心臓部「噴気孔広場」には、

この日10数万の民衆が、側溝を流れる溶岩と同じ色の思いを胸に集まっていた。


広場を貫く巨大な通気塔は、すでに彼らに占領されている。

冷却ガスの白い噴流が間欠的に天を衝くたび、その金属的な轟音は、人々の無数の叫びを溶かし合わせ、ひとつの巨大

な怨嗟のうねりへと鍛え上げていく。


「……派兵は失策だった!」

「我らの子を息子たちを地上の虜囚にするために連れ出したのか!」

「王政府は口のいいことばかりをいって民の声を無視するな!俺たちの生活は何も変わっていない!」

「我々はテラリア王の私闘まがいの暴挙を糾弾する!」


人で埋め尽くされた広場では、手製の横断幕が波打ち、罵声が鉄の棟々に反響して飽和する。熱気と汗、そ

して息苦しいまでの怒気が渦を巻き、閉ざされた空間の空気は、あたかも煮えた鉛のように重く、不気味に

滾っていた。


「……陛下は、おいでくださるのかねぇ?」

群衆の後方で、顔に古傷を刻んだ老婆が、震える声でそう呟いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ