Issue#02 I UNDERTALE CHAPTER 5 16
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「備えろ!」
ホットショットが全身に炎をまとい、姉妹たちとは別の軌道を描いて即座に離脱する。
その飛び立ちは急だったこともあってはじめは不安定だったが、近くを巡回していた無人
フライングプラットフォーム群の真正面へと狙い通り収束していく。
彼女の放つ火弾が礫となって敵の進路に浴びせられれば、
都市の遠景に、花火のような破裂音がいくつも響き渡り、
小さな爆発の痕が点々と刻まれていった。
風を裂く衣服の音。落下する3人の身体。加速度的に移り変わる視界。
――そして、その自由落下の航跡めがけて、各方面から敵機の編隊が次々と合流し、突入してくる。
「……おせちぃ!」
先に落下していたミーティスが、かき乱れる髪の合間から赤い瞳を輝かせ、上に向かって叫んだ。
「はいはい、当番ね!」
風に煽られるカーディガンを巻き込みつつ、イムノはのっそりと身を反転させる。直後から斉射されるビーム弾を、
眼球の凄まじい反復運動に合わせ、信じがたい速さの剣捌きでことごとく弾き返していった。時には敵の装甲へ、
定規ほどの太さの光線を直接跳ね返しながら、3人をまとめて強引に地面へと着地させる。
カルテット・マジコと、鋼鉄とマグマの街「ラバシティ」のファーストコンタクト。
それは人通りに乏しい金属の通り――コックピットが、まるで鍋釜のような丸みを帯びる鋳鉄のスクーターが何台か無造作に停められ
た集合住宅地への、何の緩衝もない、足元から脳天まで突き抜けるような着地だった。
そこへ、急角度の降下から、わずかに機首を上げたホットショットが合流する。ほぼ同時に、全員が受け身
を取りながら横へと弾け飛んだ。見れば、先の衝撃で、通り全体を構成するスチール合金の路面が、深くひし
ゃげている。
「……ポポポポポ……!!!」
特異な駆動音を発するプラットフォームの残骸が、間髪入れずに着地跡へ突き刺さり爆発。それが警報の引
き金となった。
直後、街中にサイレンが鳴り響く。入り組んだ金属の通路という通路で赤色灯が点滅を始め、周囲の歩哨塔
から警備兵たちがドアを跳ね開けながら展開してきた。
カルテット・マジコを追っていたビームの雨は、今度は薙ぎ払うように横一線へと散布される。
それが直撃するたび、家々の壁や街灯は、花が萎れるように弾痕から赤熱し、爛れ、溶け落ちていく。レン
ガ造りの壁ならば、薄い破片を撒き散らしながら瞬時に瓦解した。
色とりどりの破壊の奔流は、時に彼女たちの背中を偶発的に捉えることもあった。
だが、1、2発の着弾など、少女たちにとっては蚊に刺された程度にすぎない。
その人間らしい見た目に騙されてはならない。そして忘れてはならない。
これまでの戦いが常に証明してきたように――戦闘単位としての彼女たちは、それぞれが
軍隊を凝縮したにも等しい存在なのだ。
「相手は後、今は走る!」
その、イムノの戒めるような指示が飛ぶ。
棟は全鉄製で、屋根が独特の丸みを帯びた、工場街のような街並みを駆け抜ける4人の足取りは、
人間離れした疾走感を放っていた。実速は常に時速数100km。車両すら置き去りにする速度だ。
地底人の治安維持組織では、その機動力に到底太刀打ちできない。
ゆえに戦闘のほとんどは、待ち伏せや偶発的な遭遇に限られた。だが、その奇襲に成功した部隊でさえ、数
発のビームを慌てて見舞うのが関の山。すれ違いざまに繰り出される4人の反撃によって、例外なく無力化さ
れていくからだ。




