表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/62

Issue#02 I UNDERTALE CHAPTER 5 15

もしこのお話が面白いと思ったらぜひ身近な方にも教えてあげてくださいね

SNSなんかでもどんどん宣伝してくださいね

面白くなくてもしてくださいね・・・


……読者諸君はまず、この、果てさえ定かではない広大な天地が、地下に存在するという事実を信じなければ

ならない。


天を仰げば、そこにあるのは青空でもなければ山々の稜線でもない。視界の上半分を占めるのは、色調の変

化に乏しい一枚岩の天蓋――ときおり、雲ともスモッグともつかないものに全体像をけぶらせる、

信じがたいほど巨大なダクトの口を挟みながら、延々と続いていく岩盤の天井だ。


そしてそれこそが、この世界の在り処を告げる最大の証拠にほかならない。ここは地殻の深層、地表から数10km

地点に築かれた、完全に閉じたドーム構造の隔絶領域だった。


テラリアの首都「ラバシティ」は、そうした極限環境の只中にある。


その全景は、8等分された巨大なピザを連想させる。

この都市では大地そのものが建材であり、人為的に穿たれた深い断層が、円盤状の地形を扇形に分割してい

た。そして、この断層こそが都市の生命線――灼熱の溶岩を8方向へ等しく分配するために設計された、炎の動脈であり

その上層には、6000万の人口の滞りなき交通を保証するべく、排熱管と一体化した鋼鉄のアーチ橋が、可能なかぎり張り巡

らされている。


すべての溶岩の源泉たる中心部には、テラリアキングの居城にして熔融炉塔マグコア・セントラルが鎮

座する。軍艦の艦橋を彷彿とさせる、この全高2kmを超す炉塔の各層には、都市の全方位から集結した無数のパイプラ

インが、急な角度で天へとつまみ上げられ、捻りを加えられながら接続されていく。その全体像は、産業技

術の暴走が生んだ前衛彫刻とも呼ぶべき、異様な機構美に満ちていた。


断層で区切られた扇形の各セクターは、「第1溶鉱区」から「第8製錬区」までの名を持ち、そこには全鉄製

の施設や住居、鋼骨の高層建築群が、強迫的なまでの密度で林立している。それは、造形へのこだわりが行

き過ぎた、機械仕掛けのミニチュア都市の悪夢的な拡大投影だった。


都市の防御と隔絶を担う外周防壁は、高さ100mを超え、その表面には戦車装甲を思わせる継ぎ目やリベット

が、途切れなく、呼吸しているかのように並ぶ。このピザ状の都市基盤とダム状の壁面は、同様の形式で拡張

を重ね、いまや第3次段階にまで至っていた。


そして、この防壁の弧と人造断層の交点――全24箇所に設置された超高炉群が、常時、マグマの呼気を含んだ

高温のガスを天蓋へ向けて圧送している。鋳鉄を積層した重層のタワーは、都市の生体機能のごと

く息を吐き、熱を放ち、塵を空に撒き散らす。その激しい脈動が、空間を常に煤でよごし、陽炎で視界を歪ま

せて、炉塔の壁面に浮かぶ発光文字は、作業の現在活発な区域や都市の気温を刻々と更新し続けていた。


この都市は、もはやひとつの超構造的な内燃機関そのものだ。

そこに暮らす住民もまた、その歯車に組み込まれた、血流の1滴にすぎないのかもしれない。


……地下帝国の首都を覆う茶色の空、壺中の天地を形成していた岩盤――その一角が、不自然なほど急激に膨れ上がり、瞬時にして裂けた。

粉じんと砕石が淡く混じり合いながら弾け飛ぶ裂け目から、スヌープキャットが拳を前に突き出したまま現れる。


「――ええっ!?」


その顔には、次に用意していた一撃が不発に終わったことへの、純粋な驚きが浮かんでいた。飛び出した勢

いのまま、彼女は不本意に身体をしなやかに1回転させる。

その直後、後続の3人も一斉に坑道の闇から、まるで栓を抜かれたように吸い出されてくる。


閉塞した坑道の暑苦しい圧迫感が、一瞬で霧散する。

4人の身体は、想像を絶する輝度と熱気に満ちた地下都市の空へ、爆発的に放出された。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ