Issue#02 I UNDERTALE CHAPTER 5 13
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「……あなたはだぁれ?」
さなが問いかける声は囁くように静かだったが、その響きには明らかな警戒が滲んでいた。
隣では、はちるが無言で通信装置の音量を絞り、ノートPCのタッチパネルへ器用に指を走らせている。
〈まだ生きているでちゅね!? あたちは偉大なるマクロブランク!『リアリティ・インデックス:ΨΔΩ-2005』、
最後にして唯一の"いちき存在"!そしてこの星の新たなるサバイバル王者でもあるでちゅ!〉
「りありてぃ・いんでっくす……?」
さなが、目を丸くして聞き返す。
〈……えっ!?〉
「えっ?」
感嘆符だけの応酬が、1拍の静寂を挟んで反響する。
〈……別次元に強制転送されたことまではわかっていまちたが、むぁさか……!マルチバーサル・レジストリの基幹プロトコ
ルすら共有されていない次元に迷い込んだワケでちゅか?〉
「うぅん、何言ってるか全然わかんない……」
さなは弱々しい声で、申し訳なさそうに答える。
〈…… 宇宙間の相互参照規格でちゅよ!?お前たち、もしかしてホントのホントに、多
元的認識の初期段階にも達していない“野生種”なんでちゅか!?〉
「……おまえ、なんでいきなり大声出したんだよ!――」
そこへ、怒声混じりのいちゃもんが飛ぶ。四つん這いのまま土砂を掻き分け、通信装置のそばへ這い寄って
きたアシュリーが、その勢いで声を荒らげたのだ。
「……おかげでこっちは9割方化石だぞ!耳も壊れかけたし!!」
〈大変なのはこっちも同じでちゅ! だからこそ、これは緊急避難――いわゆる違法性阻却事由でちゅ!
お前たちの文明が、技術こそ拙くとも精神的には成熟しており、せめて民度では宇宙の先進種族だと証明し
たいなら、非常時における多少の感情的発露など、文明的寛恕の範囲として受け入れるべきでちゅ!〉
「非常時のボリュームじゃないだろ!」
アシュリーの怒声も、つられて跳ね上がる。もし直接会っていたなら、躊躇なく拳を叩き込んでいただろう。
「……とりあえず落ち着こう!? 中指立てたって、あっちに通じないからね――」
おせちが低く、抑えた声で割って入る。
「――こっちも混乱してる。まずは順番に話そう」
そう言って、アシュリーの口元にそっと手を添えて制した。
「困ってるってことは……そっちも地下に埋まってるってこと?」
はちるが不安げに問いつつ、通信機の方位アンテナを微調整していく。
〈ふむ……地下というより、“廃棄物の大穴”でちゅかね。
いろんな生ゴミと一緒に、マグマの処理層にまっしぐら――なかなかにサバイバル難易度の高い状況でちゅ!
臭いは史上最悪、ゲロもゲロゲロ吐いちまったでちゅよ!
そこで、その辺に転がっていた機械ゴミを寄せ集め、『局所時空間ソナー付き万能サバイバルキット』を
チョチョイと作り上げ、周囲の地形をマッピングしてみたのでちゅな♪。
……そこで判明したのが、絶望的な事実でちゅ。この廃棄システムそのものが、巨大な地下都市の一部……つまり、わちき
は完全に“袋のネズミ”になっていまちた!
だからこそ、その都市の“外”で、唯一観測されたイレギュラー……奇妙な軌道で動き回るヘンテコ集団のお前たちに、最後の望みを託し
て、この救難信号を送ったというわけでちゅ!〉〉
「こっちはどう掘れば脱出できるか、それを知りたいの。電波を届けられたってことは、わたしたちの位置や、近
くの空洞の場所も探知できるんじゃない?」
さなが、息を継ぎながら問いかける。彼女はわずかに後ずさり、スピーカーから距離をとりつつ、背後の仲
間たちに静かに視線を送った。
全員の気配が、わずかに張り詰める。
通信の向こうにいる「それ」は、声以外の実体をまだ何ひとつ見せていない。だが、この崩落の底から伸び
る、蜘蛛の糸よりもか細い繋がりが、今、たしかに彼女たちの手元に届いていた。
この提案は救済となるか、あるいは新たな災厄の導火線となるか――。
4人は、装置から漏れる雑音にさえ耳を澄まし、肩を寄せて聴き入っていた。




