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Issue#01 I Don't Want to Set the World on Fire CHAPTER 3

CHAPTER 3



20XX年09月07日 19:27 JST


北朝鮮民主主義人民共和国発射の弾道ミサイルが、日本国空縁州郊外に着弾。

弾頭は農地に落下。畜舎1棟、サイロ2基、圃場12ヘクタールが全焼。火災は近隣林野に延焼。人的被害は確認されず。


防衛省の予測――排他的経済水域内落下――と大きく異なる結果。JADGEシステムによる迎撃を試みたが、異常な軌道データにより失敗。

政府は即日、緊急閣議を招集。武力攻撃事態の認定を巡り、議論が紛糾。


19:33、消防隊が現場に到着。延焼は制御不能。

19:40、外務省が北朝鮮に抗議声明を準備。国連安保理への緊急会合要請を協議。

19:47、空縁州知事が避難勧告を発令。半径2キロ圏内の住民に避難指示。


気象衛星が火災の熱源を捕捉。煙は上空3キロに達し、風向きにより拡大。

防衛省はミサイルの軌道解析を開始。初期報告では、異常な軌道曲線を確認。北朝鮮の技術的誤差か、意図的攻撃かと推測。


19:55、情報収集衛星が北朝鮮の追加発射兆候を監視。結果は未確認。


国民の間に動揺が広がる。SNS上で「空縁州」「ミサイル」の検索が急増。


20:00、大統領官邸が緊急記者会見を予定。国民への説明が急がれる。


炎と黒煙に閉ざされた空縁州の夜空。

その中央にそびえるのは、威厳をまといながら静かに昇るエアロゾルの巨柱だ。

漆黒の瘤が連なるようにして次々と膨れ上がり、やがてははかなく解けゆくそのはてなき連鎖は、

地に近づくほどに炎のきらめきを宿して、熱に脈打つ輝きを見せており、

そういった姿は、黒い胞子がひとつずつ膨れあがり、破裂しては空へと舞い上がる――そんな、異形の呼吸を

大地が幾度となく繰り返しているかのようだ。


この痛ましいほどに深刻な静寂の中で、その黙して立ち続ける煙の塔だけが、風に移ろいゆく姿のまにまに、

集まった人々の運命を高みより見下ろしている。


その激しくせめぎ合う光と影の狭間を縫って、ひと筋の光が山の向こうへと滑り込んでいく。

……あれはなんだろう?隕石か?ミサイルの再来か?あるいは未確認飛行物体か――

いや違う!光の中心にあるのは、ひとりの少女の姿だった……!


北朝鮮のミサイルは白走ほわいとらん市郊外の盆地に落下した。ゆるやかな傾斜を持つ山肌に囲まれたその地形のせいか、爆心地から滾々と湧きつづける業火と黒煙は、遠望すれば椅子に腰かけた人々に温かく見守られるキャンプファイアのような、どこか牧歌的な光景に映る。


吉濱家の特攻隊長が、焔の尾を長く曳いて辿り着いた、名もなき山の稜線は、祭りの喧騒から取り残された地域のよう暗く沈んでいる。

しかしその静寂もまた、下方から這い寄る赤い混沌に侵されつつあり――、

「おぉ……やってんなBBQ!これなら火種じゃなくて肉を持ってきた方がよかったな」

お得意のジョークを飛ばしてから、ホットショットは一気に地表へと舵を切った。空気を裂く熱の渦が、彼女の身体を中心に次々と巻き起こり、

その赤い軌跡は、闇に沈んだ木々の上を鮮やかに滑る。


「それってさ…大きな火は、より大きな爆発で消せばいいって…コト!?」

ハチワレのモノマネを唐突に披露した理由はともかく、今しばらく彼女は爆心地周辺の暗い空を鮮烈に裂き走る。

彼女の姿が、火の手の迫る山の頂をかすめ飛ぶさなか、

振り上げた手から放たれた炎の礫は、またたく間に空中で膨張し炸裂した。球形の爆風が次々と広がり、

山の木々を根こそぎ倒し、烈風を巻き起こして燃え盛る炎を強引に押し返したのだ。


「ソイルっ!」

ホットショットの攻勢に呼応するように、後ろに滑り込む姿勢で夜の森から跳躍したイムノは、

構えたガンブレードから、水色にかがやく弾頭を矢継ぎ早に撃ち放った。

それらが空中で炸裂すれば、一帯にはダイヤモンドダストのような結晶性の霧が、一瞬で城壁が築き上げられるかのように横広く立ち昇る。

その気高い純白の靄に火が触れるや、凍気は厚い蒸気の層となって、炎の侵食を激しく拒絶し、一転して水煙は、斜面を雪崩のように駆け下りはじめる。


6合目までを侵していた炎は、まるで遡上する溶岩のよう一帯に隈なく行き渡っていたが、2人が引き起こした光景が山の上手に並び立つと

またたく間にその着実な勢いをうしなっていった。夜の闇はけして恒久的に祓われたわけではなかった。それらは、静穏の取り戻されたそばから

何食わぬ顔で、自分たちが元あった場所にふたたびにじみ出してきたのだ。


一方のミーティスとスヌープキャットは常に火元の明るさの中で活動している。

地表とさほど変わらぬくらいの低空を超能力で疾走するモダンスタイルの道士は、畜舎をあふれ出した牛の群れをみずからの札で、

トンネルのよう囲って野原へと誘導し、

スヌープキャットは黒革の肩に傷ついた獣を担ぎ、燃える畜舎と安全な草地を往復している。

炎の瞬きと黒煙が視界をひっ迫するこのむずかしい現場で、彼女たちは、あらかじめ共有されていた行動方針を軸に、

動揺ひとつ見せずそれぞれの役割を全うしていた。


ホットショットの炎が、まるで今宵の出来事に終止符を打つように、夜空の広い範囲をひとめぐりしてから落ちてくる。

ただしその、猛禽類の狩猟めいた傲慢な降下は、おどろくほど音を立てない。

着地した草むらでも、ただ熱風が流れ、草の先端がわずかに震えるだけだった。

というのも、今の彼女は、その形態からも察せられる通り質量を持たないのである。


「どうだったぁ?」

ふいに隣に収まった炎の人影――ホットショットに、スヌープキャットがすばやく問いかければ、

直後には、電撃混じりの高速な残像と共に、イムノがその真横に滑り込んでくる。

彼女の、声と体はほぼ同時に現れた。

「巻き込まれてる人はいなさそうだった、やっぱり」


「こっちもだ」

ホットショットもみじかく応じる。

そこに、持ち場での作業を終えたミーティスが、ホバー移動で流れ着いた。

ホットショットをのぞく3人の顔は、煤で黒ずみ、額には汗がにじんでいたが――

それと同じだけ、全員の表情には、確かな安堵の色が浮かんでいた。


4人組から20mほど離れた場所には、尊が立っていた。火の明かりに片頬を染めた彼女は、消防局長や警察署長に対して、

ほとんど目くばせの延長といった程度の軽い一礼をおくり、その場を後にする。

娘たちの救助活動への、参加の許可を取り付けたのは他ならぬ彼女なのだ。

「おぉぅ、ご苦労さんじゃったなお前たち。見たか?爆発の原因、北のミサイルじゃと」

娘たちの集まりに歩み寄った尊は、まるで話の続きを持ち出すような調子でそう語りかけた。


「らしいね。今大統領が話してる」

おせちが手にしているスマートフォンの画面には、ViewTubeのライブストリーミングが映し出されている。

その同時接続数はすでに200万を超え、なおも急速に増え続けているが、

コメント欄は封鎖されており、そこに募る熱気や緊迫感は数字の上でしか読み取れない。


「……予測軌道とズレた?」

おせちは、配信から漏れ聞こえる国家元首の発言を、思わずオウム返しする。

ちょんまげのいかめしいこの男、そう、日本国大統領「シイタケ・ノブナガ」の語調は元々厳かで、

国民への説明を第一とした厳粛な口調を心がけていても、そしてスマートフォンの小さなスピーカー越しであっても、

その声は、常に『敦盛』を吟じるかのように、音域の底部がなお圧巻の迫力でひびき渡ってくる。


「ほう……なら間違いないの。この空縁にそれが落ちたというのは、シャカゾンビからの宣戦布告じゃ。わしらに対するのう」

尊が断言すると、娘たちは一様に目を見開いた。全員がその重い言葉を飲み込むまでには、相応の時間を必要とした。

「でもそれは……そこまで狙えるなら私たちの家を直接狙った方がよくない?」

とおせちが聞く。

「そう、そこなのよ。わしはそれを、ミサイルが迎撃される可能性を思ったせいじゃと見とる。

わしらのスーパーパワーならそれが出来るからな。――つまり、奴のテロにはもっと大きな本来の意味がある」


「そっか……戦争を起こしたいんだ!」

はちるの気付きは、そこにいる全員の胸にわだかまるものを的確に代弁する。

尊はしずかに頷き、

「そこで、今からわしは自分にできる限りのことをしにいく」

決然としてそう言った。

「えっ?」

さなが、表情をこわばらせる。

「悪の所在を明らかにするのよ。今回の1件がシャカゾンビの陰謀であることを天下に知らしめ、極東世界のアポカリプスにも繋がりかねん

危険な流れを断ち切るのじゃ」


……ミサイルの着弾点では、農地そのものを薪と化した巨大な残火を、1000人規模の野次馬が取り囲んでいる。

彼らはいくつかの群れにわかれているものの、その視線は一様に火柱へと注がれ、誰1人として言葉を発しない。

人の不幸を興味本位で眺めるような下卑た無邪気さはなく、そこにあるのはただ焦燥の色のみだ。

この突発的な大惨事は、人の正常バイアスを容赦なく打ち砕き、抗えぬほどの圧倒的な力で場を支配した。

だからこそ、それに呑まれた群衆の心には、被災者の、純然たる気分だけが澄みやかに行き渡ってしまったのである。

炎は次第にいきおいを失いつつあるものの、空気にはなお不快な熱と焦げ臭が漂い、群衆の足元で揺れる影を異様なほど長く引き伸ばしていた。


「私たちは――」

希望に胸を震わせながらアシュリーは声を上げたが、

「連絡があるまで待機!」

と尊が力強く即答したことで、

「えぇー!?」

4人は、声を重ねて不満をあらわにすることになった。


「……いや、でも、それがいいかもね。考えてみたらさ、事態が大きすぎるよ」

いちはやく冷静さを取り戻したはちるが、言葉尻に諦念を滲ませて言う。


「はちるはやはりようわかっとる!たしかにな、わしはお前たちはサイキックの扱いを教えはしたぞ。

しかしな娘っ子たちよ、『戦い』というのはヒーローが

こなすべき仕事のほぉ~んの一部分にすぎん。それ以外の事についてはわしはお前たちになにも教えてはおらん。

今回のようなお国の一大事には、お前たちはまだ関わるべきではないということじゃ」


「……」


尊の言い分は真っ当だから、様々な事柄を勘案して次の1手を考えたがる性質のおせちは、

何も反論できず黙り込むしかない。

しかし隣のアシュリーは、何か言いたげに唇をかみしめ、黙って地面を睨んでいる。


「ただ、お前たちもシャカゾンビのターゲットに含まれておることがこれでハッキリした以上、

完全に関わらせんというのはもう無理じゃ。だから、手伝わんでいいとまでは言わん。

力が必要となった時は必ず呼ぶがゆえ、とにかく今は日常の何事にも気を払いつつ、母からの連絡を待っておれ」

と言い残すなり尊は、超常の跳躍力を発揮し――一瞬でこの災厄の現場から姿を消した。


ミサイル明けて次の日。

そこからの3週間、吉濱家の4人の娘たちは、それぞれが自分を誤魔化すような顔で学校に通った。

クラスメイトと談笑するひと時も、4人で囲む夕飯の時間も、心の底からは楽しめない。


「シャカゾンビ」という名前については嫌というほど知ったが、その実、何ひとつとして正体のわからない相手から、

目に映るすべて、出会うすべて――すなわち大切な日常を守り抜く義務が、彼女たちには重くのしかかっていたからだ。


住宅街の、夏の余韻が重く垂れ込める影、そのどれがいつ、いかなる形で異形の本性を現し、襲いかかってくるかわからない。

教師や友人の姿で近づいてくる可能性さえあれば、反対に彼らが無理やり巻き込まれる危険もあり、4人は、教室の扉が開く音にさえ反射的に振り返り、廊下ですれ違う同級生の無邪気な笑顔にすら、どこかぎこちない会釈を返す日々を送っていた。


想像力に応じて無限に変貌し、いくらでも新たな形で襲いかかってくる取り越し苦労の数々――そのすべてが、じわじわと心の内に沈殿し、

吉濱家の娘たちを静かに、確実に疲弊させていくのだった。


そうした個人の不安をよそに、この時期の極東情勢はというと、ミサイルのハッキングが明るみに出た直後、北朝鮮政府が即座に公式声明を発表している。

その内容は、空縁州の1件について、「外部勢力の干渉が我々の意図を歪めた」「日本帝国主義者の挑発行為に他ならない」と断じるものであり、

一貫して自己の正当性を強調する他責的な姿勢が際立った。


さらにかの国は「無慈悲な報復」を宣言し、今後のさらなる対抗措置に対する揺るぎない決意を示した。

極東の空は、地上の不穏さを反映するかのごとく、一層重くよどみ始めていた。


09月09日。日本国政府は、先日のミサイル本土着弾に対する報復として、海上演習の実施を明言する。

防衛省は、日本海の広範な海域において単独の、前例なき規模の実弾演習を可及的すみやかに行うと発表し、護衛艦の甲板に立つ隊員たちや、

冷たく点滅する操舵室の計器盤を映した映像が各局のニュース画面を埋め尽くした。

この動きは、北朝鮮への警告であると同時に、米韓との連携をほのめかす1手として、国民の間で注目を集めた。


その12日後、北朝鮮が再びミサイルを発射した。夜明けの薄闇に解き放たれた短距離弾道ミサイルは、

弧を描きながら日本海へと進み、凪の日の波間に突き刺さり、数10メートルの水柱を白く噴き上げて波紋を静かに広げた。


なんと驚くべきことに、この事態は来たる09月29日に日本が大規模演習を予定していた海域の中心で起こったのである。

海上保安庁の監視船が、揺れる甲板からその決定的な瞬間を捉え、映像は瞬く間に世界に配信された。


同日、北朝鮮の国営メディアは「帝国主義者のサイバー挑発を粉砕」と高らかに宣言。

あわせて、「あらゆる挑発に対する全面的な報復措置を講ずる準備がある」とし、

さらなる軍事的エスカレーションをほのめかした。


この動きに対応して世界連邦安保理は緊急会合を招集するも、常任理事国の対立で議論は膠着。

ソウルの街角では市民がプラカードや大型のタブレットを掲げ、東京の首相官邸前ではデモ隊の足音が舗道に響いた。

東アジアの情勢は、いよいよ風雲急を告げていた。


……ところでなぜ北朝鮮は、世界市民から蛮行とも受け止められかねない、こういった強行的な手段に出たのだろうか?

理由は簡単だ。国家間の駆け引きにおいて、誠実な選択肢はほとんどの場合悪手だからである。

たしかに個人間のいさかいであれば、心からの「ごめんなさい」が、過去の経緯や利害を越え関係を一気に

修復することもある。それはなぜかというと、その謝罪を受け入れる側も、それを発する側もたった1人の人間にすぎず、

互いの感情に直接はたらきかけることが可能だからだ。


しかし、国家とは多数の人間の集合体であり、その行動原理は個人のそれとは異なる。

国家にとって最も優先すべきは、国民全体の幸福や安全という、個人の利害を超えた「国益」だ。

この国益は集団の総意として練り上げられた価値観であり、個別の感情や道徳観念がそのまま反映されるものではない。

つまり集団としての国家は、常に、現実的かつ冷徹な利害計算のもとに動くことが求められる。


たとえ自らの過ちであったとしても、国家はそれを安易に認めるわけにはいかない。

誠実な謝罪は、一見高潔な行為に見えるかもしれないが、それは往々にして国民全体の不利益を招く。

対外的に非を認めることは、国家の威信を損ない、敵対勢力に優位を与える危険をはらむからだ。


国際社会とは、秩序を統べる上位の権威が存在しない無政府の場である。世界連邦(本作品世界における、地球の、最も権威ある国際機関)や協定といった枠組みは、

国民に対する法律ほどの強制力を持たず、大国の違反にはしばしば無力だ。ゆえに国家は、

たとえ自らに責がある場合でも、責任を他者に転嫁する道を選ばざるを得ない。


北朝鮮の指導者が下した決断――空縁州へのミサイル着弾を「外部干渉」とし、さらなる挑発に踏み切る判断――は、

国家の論理からすれば、極めて一般的で合理的なものであり、

そこには、物事を最高効率で実現するに足る、鋭利で冷徹な論理が貫かれていた。


だが、どれほど理路整然とした決断であっても、それが望む結果を保証するわけではない。

合理的な選択が高めるのは、あくまで「物事がとんとん拍子に進む」可能性にすぎず、

その成り行きが必ずしも理想的な結末に収束するとは限らないのだ。


そして、北朝鮮指導者のこの決断は、その無慈悲なまでの正当性ゆえに、

日本と北朝鮮という2つの国家を、避けられぬ衝突の道へとまっしぐらに導くことになってしまう……。


09月28日。この日、緊急の会議が開かれていたのは何も大統領官邸だけではない。

ここ空縁州の片隅に位置する吉濱家――その中でも、はちるの私室が、同じ種類の重い緊張感に満ちていた。


この部屋は、間取りの広さゆえに吉濱家の子世代全員のたまり場になっており、4人はそこで寝起きを共にしている。

年頃の娘たちが、テントのように窮屈な空間で肩を気兼ねなく寄せ、溶け合うかのように暮らすさまには、

普通の親なら、何かしらの危惧を抱きかねない異様さがたしかにあるかもしれない。


しかし人間の本質的な部分において、お互いをはてしない似た者同士だと知る彼女たちには、

むしろ、これ以外の暮らしが物足りない。単なる家族愛の域を超えた、奇妙なほどに強固な連帯が

(つぶ)らかに実現されている間にこそ、彼女たちにとっての本当の幸せがあるのだ。


時はややさかのぼって、その日の学校帰り。

家からほど近い下町の自販機通りで、4人は足を止めていた。

連日の緊張のせいか、誰も多くを語らず、壁やプラスチックのベンチに体を預けており、

それぞれが手にした冷たい缶飲料に口をつけ、静かに息を吐いていた。

夕暮れの薄明かりが、自販機の光とまじり合い、疲れきった彼女たちの横顔を柔らかく照らしている。


……この時点では誰も知る由もないことだが、

しかし、歴史の転換点とは、得てしてこういった何気ないひとときに紛れて訪れるものである。

彼女たちにとっての”それ”はもちろん「シャカゾンビに対する積極的な攻勢」――その第1歩となる心構えのことだ。


スマホを見つめたまま、うつむきがちにその画面を指で弾いていたおせちだったが、

「……うん?」

ある瞬間、ふいに小さな声を漏らした。


【速報】主要SNSで大規模障害 ユーザー情報流出の可能性も

09月28日(金) 17:30配信


Xitterサイッター』『Pixagramピクサグラム』『Facehubフェイスハブ』など、複数の主要SNSプラットフォームにおきまして、

本日未明より国内サービスに接続障害が発生し、数百万件規模のユーザー情報が外部に流出した可能性が浮上しています。


サイバーセキュリティの専門家は、何者かによる大規模なサイバー攻撃の可能性を指摘しており、

一部では、空縁州で発生した弾道ミサイル着弾事件との関連を疑う声も上がっています。


政府は現在、関係省庁を通じて緊急の実態調査を開始しており、

各プラットフォームも、ユーザーの皆様に対し速やかなパスワード変更や二段階認証の設定など、

セキュリティ対策を講じるよう呼びかけています。


といった記事に、彼女の目は釘付けにされたのだ。


「これ見て。Xitter(サイッター)とかいま繋がんないんだって」

おせちが、スマホの画面をこちらに向けて見せると、

「?」

のこりの3人も自然とその表示に顔を寄せた。


コメント51件 おすすめ順/新着順


kka

これって、例の空縁州の件とタイミング合いすぎじゃない?

ミサイルだけじゃなくて、ネットワークも一緒に狙われてるってこと?

北のサイバー部隊が動いてるって話、前にも出てたし、ちょっと不気味だな。


jao*****

こういうとき、どれだけの人がパスワードの使い回ししてるか考えるとゾッとする。

とりあえず重要なアカウントは二段階認証にしたほうがいいですよ。

どこから何が漏れるか分からない時代だから、自衛するしかない。


クラトス

またしても「緊急調査中」で終わりそうなパターン!

いつも後手に回ってるけど結局こういうインフラ系のセキュリティって

本当に専門家に任せてるのかな?形だけの対策じゃもう防げないでしょ


「……コメント見てると北朝鮮のハッキングらしいよ。でもホントかな?そういうの、なんでもかんでも繋げて考えたがる人いるしさ」

スマホを引き戻して、また軽快な指さばきを見せはじめたおせちは、画面とにらめっこしながら、自分の考えを淡々と述べる。


「そうだ、北朝鮮!――」

その瞬間、アシュリーが勢いよく口を開く。

「――もうそろそろ、いい加減動かないか?刺客を捕まえて絞り上げればいいなんて考えは

やっぱり甘いだろ。母ちゃんは大人しくしてろって言ったけど、どこからどう来るかわからない相手を待つなんて

そんなの後手後手になるに決まってる。このままじゃふやけたタコ焼きだ」


アシュリーの勢いをみて、はちるが、ぱちくりと目をまたたかせる。

その輪郭は、全身を覆う逆立った毛並みのせいで、ホモ・サピエンス用に仕立てられた制服の淑やかさとはどうにもそぐわず、

常にどこかざらついた印象を与える。


「いやそれは明石焼きでしょ……でもやっぱりそう思う?」

おせちが、一定の慎重さをもって問い返した。その表情には、同じことを考えていたという安堵と、それでもなお残る不安が混在していた。


「ああ」


「だよね。母さんの言ったことは私たちのことをたとえ気遣ったんだとしても場当たり的だよ。

今のままじゃ、敵の攻めてき方がわからなすぎて警戒しようにもしきれない。

それなら闇雲にでも攻めた方がマシだよ。幸い私たちは、正面からの戦いなら母さんにだって負けないんだから――」

彼女はそのまま、空を見上げるようにあごを引く。

「――もしシャカゾンビの強さが母さんと同じくらいだとしたら、こっちから攻めるのは、むしろ悪い手段じゃない」


こうして話を続けながら家へと戻った4人は、

それぞれ、決定的な口火だけは切らぬまま、はちるの部屋へと雪崩れ込んでいく。


いつものように、はじめ彼女たちは着替えから手を付けていった。

制服の生地が肩から滑り落ちて、絹を引くような音もなく畳に触れるたび、

若く、品のある、そして瑕ひとつ見当たらない肢体がためらいもなくそこにさらけ出されていき、


紐を引っ張るタイプの、あの古い蛍光灯の光に何の衒いもなく晒された瞬間――

それらの肌理(きめ)は、影さえ鋭さを欠き、光そのものと交わるように滑らかに、柔らかに映じる。


気がつけば誰も言葉を発さぬまま、ただ無意識の所作だけが部屋の空気をかぐわしく染め替え、


そうして、空気と肌と光とが、名もなき調和の中で平らけく重なりきれば、

ついにその時、彼女たちの肉体は、まるで密雲の裂け目からこぼれる天界の光、

それ自体にも似た神聖のかたちへと成り果てた。


……情景は、束の間の恍惚境だろう。

清冽なまでに白く澄んだ肉体が、やすらぎに身を委ねるこのひとときは、

天上の夢に通じる、言祝がれるべき時間であり、

もしも「作品」として、目撃者の存在を不可避とする形式を取らなければ、

本来は、誰の視線にも触れぬまま、ひそやかに、無垢に、通り過ぎてゆくべきものだった。


上半身をあらわにしたアシュリーは、左右から腋のくぼみをわずかに寄せるようにして腕を上げ、

かき乱れた紅の髪をひた結い直していた。肩甲骨の浮かぶ背中は、腕の事こまかな動きにあわせて、

その陰影をまるでオールのように器用に浮き沈みさせていく。暴れる髪先はしばしば肩に振りかかるが、そのたび首の動きで跳ね返され、

そうなれば、静電気が彼女の肌の上をたわむれのように伝って、細く分かれた髪の房をふわりと宙へ持ち上げる。


だがそれでも――そのうなじには、どうしても汗に根付いた赤い毛束が数本、

とりとめもない流水模様を描きながら、ずっと貼りついたままでいるのだった。


おせちは、前かがみにした尻にふとのしかかってきた感覚、ピンクの水玉パンツの、

自分自身戸惑いをおぼえるほど生々しい密着と湿り気に一瞬、浮かない顔をしたが、

あくまでそれは私的な空間での出来事だったから、感覚はすぐに放下された。


ただ、それはそうとして、客観のまなざしで見るならば、おせちの尻に刻まれた肉のやわらかい実相は、

地肌の色をのぞけば、ほとんどすべてが暴かれてしまっている。


胴と脚のつなぎ目――そこの、呪いでも帯びているかのように淫靡な形状が、

1枚の下着によって、余すとこなく”拓”を取られてしまっているのだ。

しかも下着の皺というものはこの時、三日月をふたつ、背中合わせにしたようなひと筋のくぼみ、その危うい一線へこそ

これ見よがしに寄り集まり、淡々とした仕事ぶりで、生命神秘の要とも言うべきあの”かたち”までも、半ばまで象ってしまっていたのである。


彼女は、その布の密着した尻を何もない空間へと無防備に突き出したまま、

部屋着のスカートを――どこまでも因果なことに――見る者の神経をじりじりと焦がしながら、

もっとも苛立たしい形で欲望を刺激する、あの絶妙な緩さと、身のかたむけ方、そして手つきとで、

そっと上からあてがっていくのだった。


しかし無論、当のおせち、そして残る3人の乙女にも、誰かを誘惑しようという意図など、

その動作のどの部分にさえ、微塵ほども込めたつもりはないのだ。


さなは、真白い腕をひとつ滑らせ、新しい服へとしなやかに手を伸ばす。

彼女の動きはまるで蝋が音もなく形を変えるかのように静謐で、

細い肩にかけられた服の布地がなびけば、透き通るような背中の線を一瞬だけ照らしては隠していく。

その姿は、触れれば壊れてしまいそうなほど精妙で、どこか人形じみた非現実性を帯びている。


一方ではちるはどんな種類の色気も自分自身では披露せず、とにかくわんぱくに服を脱いで着た。

その動作には獣人特有のおおらかさが常に宿っており、人間の少女たちよりもはるかに素早く身支度を済ませ、

終われば即座に背中からベッドに飛び込むのだ。脱ぎ捨てられた衣類はというと、

身支度を終えたおせちが、嫌な顔ひとつせず、てきぱきと片付けて回るのだった。


……見ての通り、本来はブラジャーなど必要ないほどの控えめな胸回りではあるが、それでもアシュリーは見栄を張って、

灰色をしたコットン地のスポーツブラを普段から身につけることにしている。

いま、その上から袖のだぶついたシャツに頭を突っ込んでいった彼女は、

どうにも腕の通し口を見つけられず、布の中でしばらく格闘する羽目になっている。


ややあって彼女は、やっとこさ頭部と腕を然るべき穴から飛び出せ、シャツの裾を引き下ろして、

「よし、じゃあ早速かましてやろう!N.W.A.『Straight Outta Compton(コンプトンから直接行くぜ)』の精神だ」

と、勇ましく宣言する。


「でも優先順位は忘れないようにしなきゃね。ミサイルの空縁への落下がシャカゾンビの陰謀だってことを証明して戦争を回避する。

それが最優先。シャカゾンビを倒すのはその次。私たちはそう動こう」

おせちの冷静な指示によって、場の雰囲気が固まり始めたかに思われたそのとき、


寝転がっていたはちるが、勢いよく上体をベッドから跳ね上げて言った。

「それはいいけどさぁ、行くったってどこに行くの?攻めるにしたって、守るにしたって、ヒントがないのは何も変わんないよ!」

ぼさついた前髪の隙間からのぞく、真ん丸な目。ユキヒョウの娘のその瞳には、

この状況の先をなんとかして読み取りたいという焦りが宿っている。


「いい質問だ。アシュリーちゃんが答えを教えてやる。

北朝鮮の首脳部に直接カマしに行けばいい。あいつらが挑発でミサイル撃ってくるのが全部悪いんだから、

責任を取らせればいいんだよ。キムの野郎の、ボールみたいに肥えた体をホワイトハウスの正面玄関までドリブルしてやれば、それで話は終わりだろ」

するとアシュリーは、得意げにこう即答したが、


「それは――むしろ確実に戦争の引き金になっちゃうぢゃん……」

さなの冷静な指摘が入ると、一転して、むすっと口を閉ざしてしまった。

まもなくさなは、血気に逸る姉妹のやむにやまれぬ心情を察し、ふと彼女に後ろから抱きついて、

ぬいぐるみのようにその腕を弄びはじめた。


「なにするんだよ!?」

アシュリーは、突然絡みついてきたさなの指を鬱陶しそうに払いのけようとするが、

「だめ!リラックスして」

さなは、一種の美術作品として完成された仏頂面を保ったまま、さらに手を強引に巻きつけてくる。

こうも整いすぎた顔立ちでは、目や口といった要素を不用意に動かすことさえ、造形の均衡を壊しかねないよう感じられる。

「……おい!」

刺々しいじゃれ合いの末に、さなの目論見どおり、アシュリーの気勢はいつの間にか鎮まりはじめていた。


そのやり取りからしばらくして、はちるの部屋には、静かに冷気が巡っていた。

低めの温度に設定されたクーラーが、床近くの空気をゆっくりと掃き流している。


ベッドに腰かけていたおせちは、その流れの変化に気づき、視線をそちらへ向けた。

さなが外から戻ってきたのだ。両手は小さな木盆を抱え、その上には全員分の飲み物が整然と並んでいた。


……4人は、まずネットで情報を集めることにしたが、最初のうち、作業に進展はなかった。


おせちは、フラスコの中の液体を見極める化学者のように片目をつぶりながら、スマートフォンを片手に掲げ、ひたすら画面をスワイプし続けている。

だが、気づけばアシュリーはもうゲームを起動しており、胡坐を組み、うつむいた姿で指先だけを軽快に動かしている。


その画面をのぞいたさなが、「あ、それCOOP対応だよね!」と言い出せば、次の瞬間には『オーバーツーリズム』という、

風光明媚な離島に押し寄せる観光客の要求を的確に満たしていくという主旨の4人協力型ゲームが全員の端末で立ち上がっていた。


気がつけば、おせちとさなはベッドにうつぶせで並び、足を互い違いにぱたぱたと揺らしている。

操作ミスに思わず声を上げるさなと、それに巻き込まれて笑うおせちの姿は、もはや戦略会議というより部活帰りの放課後そのものだった。


そのうち、はちるがどこからか運んできたうどん鍋がちゃぶ台の上に置かれ、

立ちのぼる湯気とともに部屋の空気はさらに緩みはじめる。

食べ始めの頃には、誰ともなくテレビをつけ、大きな音量のバラエティ番組が流れ出している。

食後、4人はその音を浴びるように聞きながら、何をするでもなくベッドや畳に身を投げ出していた。


それから15分後――帰宅時の熱意は、すでに取り返しのつかない遠いものとなりかけていたが、

ようやく作業が再開された。


……とはいえ、進捗は依然として芳しくない。

おせちなどはついに、ViewTubeのおすすめ欄に出てきた

「ミサイルの妹です、すべてをお話しします」というタイトルの、見るからに胡散臭い便乗動画にまで手を伸ばしかけていた。


そういった折、

「これ見て!」

さなが、自分のスマホの外枠を両指でつまみ、胸元で翻してみせる。画面では、09月07日、ミサイルの本土着弾直後に

行われた大統領の記者会見が再生されていた。


『……飛翔体につきまして、防衛省は、排他的経済水域への着弾を想定しておりました。これは実際の結果と異なるものであり――』


「あっ」

おせちが、ひと呼吸遅れて何かに気づいたように声を上げる。


「どしたの?」

パソコンに向かっていたはちるまでもが、女の子座りを解いて身を乗り出してくる。


「これ? どういうことだ?」

畳の上へと無造作に投げ出したスマホで、プレミアリーグのハイライト集を流しながらの

腕立て伏せに熱中しているアシュリーが、顔だけをそちらに向ける。

「防衛省は、ミサイルの落下を“観測してた”ってこと。考えてみれば当たり前だけど……そのデータを見れば、何が起こったかわかるかも、だよね?」

「うん!」

さなが頷き、顔を輝かせる。


そうするとアシュリーは、ヨガで言う「真珠貝のポーズ」をとったまま、

「なんだ、お前にしては賢いな――」

と軽口を叩きはじめた。

その言葉に、さなが「むっ」と頬を膨らませるが、アシュリーはそれを横目で流しつつ、

「――じゃあ、軍の基地に忍び込んで軌道観測データを見ればいいってことか」

と、ややくぐもったままの声で続けた。


「それ、現実的なアイディアじゃないと思うよ?」

はちるは目を細め、モニターをじっと睨みつけたまま、キーボードを小気味よく叩き続ける。

アシュリーの方には一切目を向けず、淡々と突っ込みを入れる。


視点が戻れば、いつの間にか逆立ちになっていたアシュリーは、

「……じゃあ衛星だろ! 軍事衛星なんてモンでミサイルはまず監視してるんだから、私がそこまで飛んでいけばいい!」

と、天地をひっくり返したまま力強く言い放った。

ワンピースを着るにも等しい、ブカブカな彼女のシャツは、裾が垂れ下がってその顔や手を完全に隠してしまっている。

脚が覗き、パンツも丸見えの、華奢な少女のあられもない姿が部屋の真ん中に逆さまに屹立しているというわけだ。


「まさかとは思うけど、それ持って帰ってくるつもり? ちゃんと毎日散歩に連れていけるの?」

おせちは、呆れた顔でいきなりそう言い放った。その口ぶりには、例え話ちょうどそのままに、

衝動だけでペットをねだる子どもに現実を突きつける親のような――その、けっして幸福とはいえぬ

結末にまで思いを巡らせての、苦い憂いが込められていた。


「ママは……そういうこと、しちゃいけないって言うと思うけどなぁ」

はちるが、眉を寄せて弱ったように口をすぼめる。


「おいママっ子どうぶつ、今から本当に持って帰ってくるからデータ取れるよう準備しとくんだぞ!」

バク中の終端動作のよう勢いよく身を後方に躍らせ、ようやくまともな立ち姿に帰ったアシュリーが、鼻息も荒くそう言い切った。

彼女の言葉には、あきらかに「強行」の意思がある。


「ダメだアシュリー!待って!」

おせちの制止も聞かぬまま、アシュリーは窓へ向かって、この狭い部屋を一気に駆け抜けた。

踏み切ったその瞬間、彼女の全身が変容すれば、部屋の中は一瞬、真昼よりも強烈な白の閃光に満たされる。


跳躍とともに放たれたエネルギーが、周囲の空気を火花のように裂きながら展開し、

アシュリーの身体は滑らかに削り出された炎の彫刻として、空へと射出される。

後方に引かれた髪は尾の長い流星のように燃え立ち、その姿はわずか数秒のうちに、夜の蒼穹へと溶けていった。


「まずい!」

おせちもあわてて部屋の窓を乗り越える。

寺の横庭から見上げた空には、ジェットの轟音を残して垂直に駆けのぼる人型の火光がある。


空は、このとき明らかな2層に色分けされていた。

山々の稜線に接した低空には、わずかに緑みを帯びた初夜の層がたゆたっており、

その上方では、藍色にけぶった星々が、深い沈黙のもとでかすかに瞬いている。

天蓋は隅々まで洗い清められたかのように遠く澄みわたり、そこには、1筋の雲の存在すら許されていなかった。


一方、地平線の向こうでは、白走のビル群が、かすかにその輪郭を滲ませながら静かに浮かび、

高速道路には、自動車のライトが絶え間なく曲がりくねって走っている。

街の灯はひとつ、またひとつと控えめに明滅し、人々の営みの残り香は、そんな夜気の底に、まるで呼吸するように漂っていた。


これらの風景は、それ単独では、どこか他人事のような距離を保っている。

だが、そこへアシュリーの燃え盛る姿が、空を裂いて飛び込んでくると、

その閃きが、都市と星空のあいだを貫いて風景をひとつに結ぶのだ。


すると、それまでは単なる不動の背景でしかなかったパノラマは、

天頂へと昇り詰めていく彼女のうごきにしたがって、まるで長時間露光で撮影される写真であるかのように、

光と影の1筋ずつを、一斉に下方へずり落ちさせていくのだった。


「ロケットマンがスターマンにキスしたら?……エルトンもボウイも、あの世でハイタッチだよな!」


アシュリーの発火には、全身を磁気閉じ込めの力場と化すことで達成される霊的な核融合――

そういった、科学と魔術の交点に立った原理がある。

魔力のかぎりその飛距離には限界がなく、放っておけば、もちろん宇宙にも達するだろう。


「消火器取った!」

壁がなければ、そのまま前に転びかねない勢いで窓から身を乗り出したさなが叫び、

消火器を差し出す。はちるがそれをバケツリレーのようにして受け取り、即座に振り返った。


「おせち、お願い!」

叫びとともに、彼女はそれを全力で空へと放り投げる。


その段取りのよさというと、どうやら、こういった騒動は過去にも1度や2度ではなかったらしい。

やたらに直情的な性格と、そしてその性格を常人に100倍する物理的スケールで表現してしまえる人存在を、

身内として抱える者たちの苦労が、その無駄のない連携からは否応なく偲ばれる。


はちるが投げ放った消火器は、アシュリーが欲すがままにしていた夜空の支配圏をたちまち脅かし、

さらに激しく上昇して、彼女とほぼ同じ高度にまで達した。


「うん!」

その瞬間を逃さず、おせちは膝をつき、ガンブレードを迷いなく真上へと構える。

照準が定まれば、引き金は至極冷静に弾かれた。


マズルフラッシュとともにこの世に生まれ落ちた1発の弾丸が、この世界でもっとも空を速く駆ける光の種子となって、

赤塗りの鉄筒――すなわち、宙を行く消火器の腰から胸にかけてを鮮やかに貫いていったのである。


ホットショットが、自分を猛追する異物の存在に気が付いた瞬間、

「――ヴェッ!!」

消火器は、潰れた声で悲鳴を上げる彼女の、腰の高さで、白く乾いた爆発を起こし、

夜空には、ふたつの航跡がはっきりと枝分かれしていくさまが描きだされた。

3人がその落下地点に駆け寄ると、

「なんだよ!? 誰も1日分の片栗粉が欲しいなんて言ってないぞ!」

立ち昇る砂煙に包まれて、粉まみれのアシュリーが体を起こす。

その姿はまるで、巨大なたい焼きでも爆発させたかのように見えた。


そこにはちるがしゃがみ込み、説明を始める。

「あのねアシュリー、いい? ミサイルの軌道を衛星が観測できるのって、宇宙に上がってくとこまでなんだよ?

ミサイルにおかしなことが起こったのは、宇宙に到達して、それから地上に落ちていく後半の軌道の部分ね?

そのへんはみんな地上のレーダーが見てるから、宇宙なんて行ってもムダなんだよ!?」


「ウソだろ?……おい!そういうのは義務教育で教えとけよ!」

一瞬呆気に取られたアシュリーだったが、すぐに負けん気の色を取り戻し、砂利面をひとはたきしながら悪態をつく。


「ねぇアシュリー、冷静になってよ。決定的な証拠を掴む前からこんな目立つことをしてちゃさ、事を構える勢力が増えてくだけだよ。

中でも国と対立するのは1番マズいよ?そんなことしたら、

シャカゾンビを捕まえたところでもうこっちの話はロクに聞いてもらえなくなるんだからね。

あからさまな犯罪は控えよう。本当の本当に大事な決断を下す時まではさ」

アシュリーという娘が、時に古風な老人のような頑固さを見せることは、身近な者ならだれもが知っている。

しかし、それはまたおせちも同じことなのだ。つまりアシュリーの感情が逸ったときには、彼女がふと、

その夫人のような面差しを呈して、この小さな家長の暴走を抜かりなくいさめていくのだった。


誰もあえて、さきほどの出来事――爆発も粉まみれの顛末も――には触れようとしない4人は、

1列になり、家の玄関まで粛々と引き返していく。

「――あっ、アシュリー!ちょっと待って。部屋、粉まみれにしないでね」

家に入ったその瞬間、さながくるりと振り返って声を上げた。

その目線は、アシュリーの“ドレスコード”、すなわち、頭から爪先まで白くまみれたその姿へと、まっすぐに注がれている。


「 お前らがやったんだろうが!」

アシュリーは両腕を大きく広げ、まるで法廷劇の被告人のように堂々と反論する。

だが、


「部屋に入らなかったらいいからね。はい、お風呂行ってきて。頭冷やすのも兼ねてね」

と、背後からおせちが近づき、淡々とした手つきでその小柄な肩を押し出す。


体が踵から滑り出したことによって、

「うぅん……!」

不満げなうめき声を漏らしつつも、アシュリーは観念した様子で自分から歩き出した。

木の廊下には、風呂場の方へと向かう白い粉の足跡が点々として落ちる。

その場に膝をついたおせちは、さっと雑巾を取り出すと、廊下に散った痕跡をひとつずつ丁寧に拭き取っていく。


一方、部屋のちゃぶ台の前に戻ったはちるは、座布団に腰を下ろしてPCに向かいながら、ぼそりとつぶやく。

「今日のアシュリー、ほんとヤンチャな男の子みたいなことしかやらないんだから……」

3人での作業が再開された部屋には、キーボードを叩くカタカタという音にまじって、

遠く風呂場から、湯がはねるやさしい音が、ほんのりと聞こえてきた。


「ねえ、レーダーのデータってさ――やっぱり、どうにかして見るのは無理かな?」

おせちがふと問いかけると、

その声に、はちるは軽く首をひねってこう答える。

「うーん……かなり難しいと思うよ?軍事データみたいな超高機密情報ってほとんどエアギャップされてるはずだから」


「エアギャップって?」

とさなが聞き返す。

「えっとね、インターネットに一切つながってないパソコンのことだよ!

USBとか、物理的に持ち込んだ媒体じゃないと、データのやりとりすらできない構造になってるんだ。

要するに『外の世界と完全に隔離されたシステム』ね」

という風に、説明がなされると、


「ぢゃ、それならさ……」

大した逡巡もなく、

「……USBメモリをやり取りしてる人を探せばいいんじゃないの?」

さなは真顔でそう口にした。


するとその瞬間、はちるはフレーメン反応でも引き起こされたかのような顔をしてから、

「……そうだよさな!その通りだよ!狙うならそこかもね!」

と大きく頷いた。


それから5分ほど経って、

「あっ、これ……もしかして、いいかもしれない!」

はちるが、何かに気づいたように声を上げ、猫背をモニターの方へとより近づけていった。


「なに?」

おせちが問い返すと、はちるは慌ててマウスホイールを何度も転がし、ページの中ほどまで引き戻す。

「ほら見てよ、この人。『仕事 忙しいとか』で検索かけてたら、意外とすぐ出てきたんだけどさぁ――」

はちるの説明とともにスクリーンに映し出されたのは、素っ気ない文体のポストだった。


『今日から仕事がいそがしくなりそうだな~☆』

そのひと言から始まり、彼のXitterアカウントのタイムラインが、3人の目にするすると入り込んでいく。


「えっ? これが?」

さなが首をかしげる。


「うん。何回かね、この人、こういう感じのカキコミしてるんだけど、

時期を見ていくと、こないだのヘリの墜落事故とか、ひとつ前のミサイル発射と見事に被ってるんだよ。

……たぶん、防衛省とか、軍の中の人じゃないかなって――」

ところ変わって洗面所。


鏡の前で、裸のアシュリーは静止していた。左に反らした胴の両腰に手を当て、

かわいらしい小ぶりな右尻は外へとねじる――つまり、コンパスのように脚を広げる大胆なそのポーズは、彼女の、無用に長い手足の存在を強く意識させる。

ぬれねずみのままで、そんな風にして彼女が格好をつけ続けていると、あるとき、その全身があまりにも軽々と

一閃の火に包まれた。すると、刹那の余波として直後には、肌にまとわりついていた湿気が一斉に爆ぜ、白い蒸気の奔流となって四方へと吹き飛んだのだった。


……部屋の内装が傷むからと、おせちからはたびたび「やめろ」と注意されている独自のドライイングである。

それを構わず実行したアシュリーは、湯上がりとは思えぬほど肌の水気をすっかり飛ばして、下着姿のまま、何食わぬ顔で廊下を引き返していく。


漆喰の壁と木製の巾木、そして褪せた色の天井灯が醸し出す閉塞感に満ちた廊下を抜けると、

そこからは一転して、縁側と一体化した外の光景が視界いっぱいにあふれていく。

照り返す月光の長い帯が縁側の床をすべり、その縁には、常に静謐な池泉式庭園の景観が寄り添っていた。


庭園の池は広大で、縁甲板の柱の際まで水面がせり出している。

プールと見まがうほどの規模でありながら、水は底まで透き通り、石や水草をも鮮明に映し出す。

庭の端々に仕込まれた夜間照明の柔らかな光は、水面と木々の葉陰にやさしく反射し、

そのなかを幾匹ものニシキゴイが悠然と、音も立てずに泳ぐ姿が目に映る。


縁側の端には、柿右衛門の花器に生けられた季節の花がいろどりを添え、赤い毛氈(羊毛フェルト)を敷いた小さな腰掛けとともに、

この場所にほのかな非日常と控えめな迎賓の趣きを与えている。

深くせり出した屋根の軒先と規則正しく並ぶ木の柱が、外と内との境界をあいまいに溶かし、

夜の帳がゆるやかに降りはじめるなか、池のさざ波が廊下にしっとりとした風情をもたらしていた。


そうした、我々にとっては心をしばらくこの場所に置き忘れてしまうほどの美観、しかし彼女にとっては毎日の景色のなかを、

アシュリーは何の感慨もなく歩いていた。

ふとその途中、すれ違ったのは、家事用の白い装甲をまとったロボットである。

円筒形のボディに小さなアームを4本生やした機体が、静音駆動のキャスターで床を滑りながら移動してくる。

センサーの赤い光点がアシュリーに一瞬向いたが、なにも言わずにそのままやり過ごし、

彼女は彼女で振り向きもせず、機械の気配を風と同じ程度にしか意識せぬまま、足を運び続ける。


「……こいつに会うってことか?」

気づけば、アシュリーはすでにはちるの部屋の中にいた。

腕を組んでPCの画面を3人の並んだ肩越しにじっと見下ろす、その赤い瞳の奥に宿るのは、いつもの無鉄砲さではない。

それは、何かしらの勘――直面した状況を一瞬で飲み込む、動物的な直観だった。


「会うっていうより……“交渉”って言ったほうがいいかも」

そんな、どこか寓意めいたはちるの言葉と共に画面に映し出されたのは、

『彼』のものとおぼしき、Xitterとは異なるSNSに投稿された1枚の画像だった。


……場所はトンネルか、あるいは高架下か。

壁一面に描かれたグラフィティと向き合って、中肉中背――ひとりの人物が立っている。

フードをかぶり、後頭部は見えない。だが、その立ち姿はたしかに、ひと仕事やり終えた人間の誇らしげな気分が

そうさせる類いのものだった。


「……ねえ、グラフィティってさ……器物損壊とか、軽犯罪になるんだよね?」

と、はちるがおそるおそる皆に問いかけた。

声は控えめであり、それによって表現されるのは、確信の手前でためらうような知性の慎重さである。


……たしかに「グラフィティ」は私物でもないかぎり、器物損壊罪や建造物等損壊罪に問われるおそれのある行為だった。

だが、アカウントの閲覧数もフォロワーも限られているせいか、

これまでに『彼』の社会に対する迷惑行為が取りざたされた痕跡は、ひとつも見つからなかった。


「これは――”アイディア”だね。悪くない」

おせちは端的に言い、それが調査方針として成立する可能性を評価した。

そのひとことを合図のように、4人は手分けして『彼』のSNSをさらに掘り進めていく。


やがて、画面をのぞいていたアシュリーが、たまらず叫ぶ。

「……わー、やなヤツだな!」


彼女が目撃したのは、ちょうどいま辿り着いたばかりの、第3のSNSだ。そこでの『彼』は、

キャバクラの席で、役人という立場を笠に着た恫喝を行ったことを、まるで武勇伝のように書き連ねていたのである。

投稿は日記型で、別の日付を遡れば、解釈によっては軽犯罪にあたるかもしれない記述がいくつも散見される。


「でも、名前がわかんないなぁ……」

さなが、画面を見つめながらぼんやりと声を漏らした。


「……とりあえず、全部ログ取っとこ!」

はちるが淡々とキーボードを叩き始める。目線はぶれることなく画面に向けられ、

ときおり手元のゲーミングマウスが小刻みに動いて、情報の波を静かにすくい取っていく。


「でもさ、グラフィティってほんとに、ずっと前からの趣味だったんだね」

さなが純粋な感想を洩らすと、

「島根にある吉濱神社ってバカみたいな名前の廃神社だったらいくらでも落書きしていいんだけどな」

とアシュリーが冗談めかしてぼやいた。


「それはダメ!掃除の手間が増えるでしょ」

するとおせちが、思いのほかぴしゃりとした口調でそう答えた。

2年に1回くらいの頻度で、尊は、「里帰り」と称した家族旅行を行って、

その際、自分を祀った神社の清掃を娘たちにやらせているのである。


そんな時、突然アシュリーのスマホに着信音が鳴り響いた。

「……おいお前たち、ちゃんと大人しくしとるか!」

画面を見ずに出たその相手は――噂をすればなんとやら、吉濱尊だった。

「ああ、母ちゃん?今どこにいるんだ。というか、どうやって連絡してきてんだ?スマホ持ってないくせに」


「ふるさとに帰ってな、旅館のを借りとる」

「ゲッ!」

つい数秒前まで話題にしていた“あの場所”から、ぴたりと応答が返ってくる、

言霊の、あまりにも覿面な実り具合に、アシュリーは思わず素っ頓狂な声を上げる。


「どうしたんじゃ?」

「いや、なんでも……」

「わしはいま、とにかく情報収集の最後の詰めじゃ。……そっちは、何も変わりないかの?」


「ああ、大人しくしてるのは間違いない。ちゃんと部屋にいるし、

信じられないなら映像通話してもいいぞ?ウチみたいなボロ電話じゃないんだったらそっちでもできるよな?」

「いや、かまわん!」

やたらな即答に込められた裏の事情をアシュリーはそこはかとなく察したが、特に突っ込むこともなく会話を続ける。


「……あっ、出雲そばはいらないから土産は白い恋人でお願いな」

「バカモノ!旅行ではないわ!――」

尊はぴしゃりと叱ったが、その声音の奥からは、湯上がりで火照ったような雰囲気と、浴衣の衣擦れすら感じ取れた。

「――とにかく、この母のことは心配いらん。お前らも早よ寝て、明後日からちゃんと学校に行くんじゃぞ」

その声の主――宿泊客の往来する廊下の、電話台の前でつま先立ちになり、ようやく受話器に食らいついている吉濱尊の姿は、

神の貫禄にはやや遠く、どこか駄々っ子めいたおかしさを帯びていた。

髪を結った浴衣姿がさらにそのアンバランスを助長し、安定した姿勢すらままならぬような格好で、やたら偉そうに言葉を重ねているのだから。


「吉濱さん、もうお夕飯の支度ができてますよー」

たまたま近くを通った仲居が声を大きめにかけると、

背筋を泡立たせた尊は、咄嗟に受話器を手で覆い、何も聞かれなかったことを祈って、ばつの悪そうに顔を電話口からそむける。


「はいはい、おやすみ……」

アシュリーは苦笑を浮かべながら通話を切った。


修学旅行の夜にある、先生の見回りのようなひとときを首尾よくやりすごした4人は、

そのまま軍関係者とおぼしき『彼』の身元特定作業に、黙々と取り組んでいる。

「でも、住所とかさ。肝心な情報は結局わかんないね……」

と、さなが言いかけたそのとき、


「それ、分かるかもしれないよ。ほら、北朝鮮のサイバー攻撃でSNSのアカウント情報が大量に流出してるって話」

今度は、おせちがひらめきを得た。


「なるほどな!ナイスアシスト、キム!」

アシュリーが快哉を叫び、部屋に一瞬、明るい熱気が立ち上った。


「……ほんとだ。あったあった。ダークウェブにリストが上がってる。SNSの認証情報、1件180円だって」

はちるが喜々として操作を続け、

「そりゃいいな、スマホゲーのガチャより安い」

アシュリーは冗談めかして言った。


「”マツバラショウゴ”さん。この人、防衛省の職員だね。東京市の……だいたい絞れてきたよ」

両手で包んだスマホの操作に、おせちはさらに集中するのだが、

場が本格的に盛り上がり始めてきた、そういった瞬間に、ふとはちるが声を発した。

「――ちょっと、いい?」

操作の手を止めた彼女は、しばし迷ったのち、意を決したように言葉を継ぐ。

「……でもさ。無関係の人、脅したりするのって――やっぱよくなくなくなくない?」


その口ぶりは弱々しかったが、部屋の空気を変えるにはじゅうぶんだった。

それは、皆がどこかで思っていたことだ。だからこそ、ふと沈黙が降りてきて、誰もすぐには言葉を返せなかった。


「ま、……それはそうだけどな……」

「うん……」

「やっぱ、別の手考える?」

アシュリー、おせち、さな、3人の態度も徐々に軟化しはじめた、ちょうどそのとき。


「へにょっ」というふぬけたSEとともに、「マツハラショウゴ」氏のXitterアカウントが折よく更新された。


『週末ディナー!今日は女の子誘ってる』


投稿には、フォーマルな格好の男女がピースサインをして収まった、スマホ画面いっぱいの自撮り画像が添えられていた。

レストランの白く荘重な内装と東京の夜景は窓枠1枚の関係で連なって、奥には、電飾に彩られた東京タワーが、かすかにそびえていた。


そして、その1分後――。


『いい気分だからぶっちゃけるか~?!

この間の空縁の市民、まぁ~じ避難遅かった

平和ボケって言葉の意味初めて理解したわ

2発目落ちたらさすがに本気になるかな?』


ついにその決定的な投稿が、4人の目の前に浮かび上がってしまうのである。


この文字列を文章として理解した瞬間、心の底から冷ややかな目つきになったおせちは、

「……ああ〜、やっぱりこの人に“協力”してもらおう」

そう口にしながら、無意識のうちに仕舞いかけていたスマホを取り直した。加速するその指さばきには、もう何の迷いもない。


……被害者に対してあまりにも無礼な、直近のその投稿が――他ならぬ“摘果”の判断を促したのである。

本来ならば、もうすこし熟すのも待つことができたはずの正義感という果実は、

そのまま、静かに果樹園主の剪定を受け、無事に“出荷”されてしまったかのようだった。



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