Issue#02 I UNDERTALE CHAPTER 5 10
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みたび、地下の完全な闇の中で、さなの呪符が起動する。
半球状の結界が土砂と岩の重なりを内側から押し広げ、新たな避難壕を形成する。やがてその内部に、ほの
かな青白い光が、力なく灯り始めた。
「アシュリー、あそこ……抜けられない?」
一連の混乱が収まり、かまくらの内部に秩序が取り戻された後、おせちが問いかけた。
「熱だけなら100億度でもなんでもない。でもあれ……マグマってようするに溶けた石だろ?そんな高圧の中じゃ、
変身を維持するための火の体積を長くは保てない」
アシュリーは腕を組み、結界の天井の先をじっと見据えながら答える。
「マグマの粘度は、温度とシリカの含有量で決まるから……。粘性が高いタイプだと、水の1万倍以上の抵抗に
なるよ」
はちるが、理系らしい落ち着いた調子で補足した。
「じゃあ逆にさ、マグマを蒸発させながら進むのは?」
おせちが、なおも食い下がる。
「ここ、火山帯で……深さももうマントルのキワキワだよ?地下のマグマ溜まりだって、規模がとんでもなく大きい
んじゃないかな――」
はちるは、彼女なりの慎重な考察を続ける。
「――上に抜けるにしても、ちょっとやそっとの距離じゃない。さっきの落盤が何kmって規模だったのときっと同じ話。
……むしろ、今までこういう事態に遭わなかったのが幸運だったんだよ。テラリアンの道が、やけにクネクネして
た理由もきっとこれだよね」
「う〜ん……」
しばらく黙考していたおせちは、やがて小さく唸ると、ぽつりと言葉を漏らした。
「……もしかしてこれ――ヤバくない?」
当然の帰結。
論理の簡単な式を経て導き出されたその一言が、思いのほかの質量を伴って、
全員の胸にめり込んだ。
どこかで無意識に信じていたのだ。
「自分たちなら、どんな窮地もかならず乗り越えられる」
「危機など、打ち破るためにある」
そんな、若さゆえの根拠なき確信を。
「超人」という属性の自認と、4姉妹に共通する徹底した楽観主義。
その無敵感が、ついにはじめて、目の前の現実によって揺らいだ瞬間だった。




