Issue#02 I UNDERTALE CHAPTER 5 08
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その時だった。
はちるの背負う通信装置が、警告もなく爆音を吐いた。
「――ギギ……バリバリッ……ッザザァッ――」
鼓膜を直接削るような硬質なノイズが、洞内の湿った空気を引き裂く。張り詰めていた糸が、ついに断ち切
られた。
ノイズの向こうから、地殻そのものが揺らぐような咆哮が解き放たれる。
〈おーい誰かぁあああああああ!!!!〉
それは、小さなスピーカーから発せられたとは到底信じがたい、狂気に満ちた絶叫だった。音声という形を
とって顕現した純粋な力が、岩壁を伝って4人の全身を駆け巡る。
――その声の主は、数kmの岩盤を隔てた地の底で、即席の装置をひとり組み上げ、
なおも生を叫んでいたマクロブランクにほかならなかった。
そして、どんな微弱な信号も拾うべく極限まで高められていた装置の感度が、この最悪のタイミングで、彼
のSOSを一切の減衰なく拾ってしまったのだ。
ぐずり、と天井が重苦しく呻いたかと思えば、次の瞬間、頭上のすべてが重力を取り戻して牙を剥いた。
地鳴りが体の芯まで揺らし、落盤が始まる。
「わあああああああああ!!!!!!」
降り注ぐ瓦礫と石礫の抱擁が、人の意識を闇へと塗り潰していっ
た……。
がらん――。
石の雫がしたたるような、乾いた反響だけが黒闇の底に響く。
その中に、かろうじて守られた空間がひとつ。さなが咄嗟に展開した、かまくらほどの球状結界だ。内壁で
は護符の墨書が淡く脈動し、今もなお、降り積もる瓦礫の圧に抗い続けている。
崩落の直撃はまぬがれた。だが、周囲の通路は完全に塞がれ、光も風も、そして希望も届かない。死んだ空気が
重く沈み、未知の気圧が皮膚にじっとりとまとわりついていた。
その沈黙を、ひとつの炎が破る。
アシュリーが無言で人差し指を掲げると、その爪先に、蝋燭ほどの火が静かに宿ったのだ。
たちまち空間が優しく照らされ、土埃に汚れた4人の顔が、闇の中に浮かび上がった。
「いいね、酸素を消費しない火は、こういう時何より貴重だよ――」
おせちはそうつぶやくと、
「――まあ、こっちの方が省エネだけどね」
と付け加え、冷静にヘルメットのライトを点灯させた。
「ああ、そういうのあったな……」
アシュリーが深くため息をつくと、その場に次の言葉が生まれるまで、数秒の時を要した。
空気の澱みが濃度を増し、地下の圧が皮膚を通り越して内側からじわじわと体を蝕んでいく。
「しかし、地下のインスタレーションはスケールが違うな」
やがて岩の粉を肩から掻き落としつつ、アシュリーがぽつりとぼやいた。
「……どうしよ……?」
はちるが体育座りのまま膝を抱え、自分のちっぽけさを確かめるように身を縮こませて、か細い声を漏らす。
「落ち込んでるところ悪いけど、こういう時のための“はちる”でしょ。1家に1台、常備防災グッズ」
「……つまりぃ?」
さなが、おせちの顔を見上げる。
「基本的には、はちるが掘る。それ以外に道はないよ」
おせちは、きっぱりと言い切った。
「――でも、どっちに掘るかは賭け。運が悪ければ、次の空洞に出る前に酸素が尽きる」
「いや」と、アシュリーが顎に手をあてて割って入る。「岩盤が崩れたってことは、その分だけ上に新しい
空間ができてる可能性がある。空気もそっちに抜けてるはずだ。上か、通路が元々あった横。そこまで出られれば――」
アシュリーが顎に手をあて、推測を口にしかけると、
「じゃあ、まずは横だね!上はどこまで崩れたかが未知数、期待値の高い方から潰していこう!」
その言葉に、最初は不安げに話を聞いていたはちるが、顔に明るさを取り戻す。
「じゃっ、早速やろっか!」
みずからの使命を悟った“獣人重機”はちるは、身を低くかがめ、四つん這いの姿勢へと切り替えた。




