Issue#02 I UNDERTALE CHAPTER 5 07
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マクロブランク 人間形態 ラフスケッチ(4話以降の姿)
さな copainterによるバストショット
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=25490740#5
目の前には、常に在ったにもかかわらず、これまで1歩たりとも踏み込むことが許されなかった分岐路の先。
当然のこととして彼女たちが選んだ左の道は――空気が死んでいた。
そこは一転して、風の音すら届かない、巨大な胃袋の内側のような空洞だった。闇が音を喰らい、沈黙が肌に張り付く。中
央まで進んだところで、誰からともなく縫い付けられたように足が止まった。アシュリーが、絞り出すような声で皆の
心を代弁する。
「……なんだ、ここ?」
何もないからこそ、そこに異様さを感じるのだ。
空白がただ空白として存在することの怪しさ、それが、先に遭ったヤスデなどよりも、より大きな異物との邂逅の予兆に思えてならない。
やがて、予感は最悪の形で輪郭を結ぶ。空間の肌理を探っていたライトの光が、壁に埋もれた白く、ぬら
りとした異物の上を滑った。
「――ッ」
息を呑む音だけが響き、4人のヘッドランプの光が、蜘蛛の子のように1点へと収束する。
闇から浮かび上がったのは、ただの物体ではなかった。視覚が理解するより早く、脳髄が直接「拒絶」の信号を発する、呪わ
れた構造物だった。
その顔貌には、乳歯の直下に永久歯が控えているような、異様に重複した歯列がびっしりと並び、人ならば鼻がある
はずの場所には、眼窩とおぼしき穴が、まるで病巣のように、無秩序に穿たれていた。
効率的すぎる恐怖の形。集合体に対する人間の原始的な嫌悪感を、これ以上なく的確に突くためだけに生まれたデザイ
ン。
般若の如き口元からは、ぬらぬらとした牙が覗き、その巨体は岩壁に半ば喰われるようにして埋没してい
る。表面は石化と炭化が歪に混じり合い、濡れたような光沢と乾いた質感が同居していた。
これは、生物の死骸などという生易しいものではない。時間の経過にも地層の積み重ねにも隠しきれなかった、
太古の地底に君臨していた「何か」の遺骸。そう結論づけるしかなかった。
「……は……ああ、あああああああああああ!!」
今度、たまらず声を上げたのはさなだった。
その可憐な悲鳴を止めようと、あわてて両手を口元に押し当てたがすでに遅かった。
瞬間。
洞の天井の奥深くで、乾いた骨が砕け散るような、鋭利な軋みが上がる。
ミシリ、と1度。
それは、あまりにも危うい一線を踏み越えようとする音。落下か、あるいは「目覚め」の前兆か。
だが、次の音は続かなかった。
世界は再び、最初の沈黙よりもさらに深く、悪意に満ちた静寂へと引き戻されていった。
彼女たちは、息をすることさえ忘れて、闇の中に佇むしかなかった。
「……さな、お前の能力のいちばんいい使い方を思いついたから教えてやる。……口にその札貼っとけ!」
とアシュリーがせき立れば、その声に応じるように、さなのポケットから札が1枚ふわりと浮かぶ。
「うん、今はその方がいいかも……」
さなは涙のまだ滲む目で頷くと、そのままおとなしく口元を隠した。
「ヘルメットの光、消して一旦落ち着こかない? 深呼吸、深呼吸!」
はちるの、凪いだ水面のような呼びかけが、張り詰めた恐怖に波紋を広げた。
瞬間、彼女たちは、この姉妹特有の――いわば、霊魂の域に源流があるのではないかとさえ思われる異様な連帯感のもと、
誰からともなく、自然と円陣を組んでいく。
互いの”いのち”を直接感じるほどの距離。それぞれの息遣いだけを頼りに、絶対的な暗闇の中で呼吸を整えていく。
その中心で、アシュリーが呪文のように、けれど熱を込めて呟いた。
「……カルテット、マジコっ、フォーッ、エバーッ……!」
小刻みな発音で言い切ると同時に、彼女はぐっと腕に力を込めて全員の肩を押し下げ、その反動を利用して、弾けるように円
陣を解放した。
「めっちゃ気に入ってる……」
するとおせちは、やや距離を取った口調で、そんなひとことを返した。




