61話 降爵
騎士団は商会に踏み込む。
騎士団は店の者全てを差し押さえた。さすがレビン団長であった。
商会は、全てを抑えられてしまった。数々の悪事の証拠も貴族との繋がりも抑えられてしまった。
アルは証拠書類等をすべてチェックする。面白い事が解った。仮の統治者である公爵は自分で領地を経営していない。全て商会に任せていた。人を雇う費用をケチって商会に押し付けていたのだ。商会も強かで領地をいいように使い潰していた。
そして3貴族の証拠も出てきた。公爵の指示の元、犯行を行ったことが出てきたが、公爵を追い詰めるにはまだ弱かった。貴族が証拠(平民の証拠・証言)は捏造といえばそうなってしまう。
自らの経営でなければならない。これは絶対(王国法)に変えれない事実である。騙された3貴族の仮の統治者が統治していなかった事実を集めていく。この証拠は、簡単に集まった。商会が経営していた事で証拠品はすでに手元にあった。
だがまだ公爵を追い詰めてはいない。
アルは、公爵領を調べ、麦や大麦などの領地生産の穀物類は全て商会に流していた。だが今回はその商会がなくなっている。他で売らなければならない。
公爵は王都まで運び、王都で売った.買ったのはアルの関係商会だ。
公爵が、仮統治している領地が荒れている。商会がなくなった事で人が動かなくなった。それは給料が出なくなったからだった。給料(金)が無ければ人は動かない。
アルはこれを利用した。統治者の能力不足。
アルは、陛下に謁見の申し入れを行う。
アルに同行するのは、アンネローゼとスタインバーグ子爵、レバノン男爵である。他にも証人を連れているが、別行動だ。
謁見の間で陛下は、少し驚いた。アルフォードが貴族を従えて謁見の場にいる。「珍しい。」
陛下「アルフォード、今日は如何した。」
アル「陛下ご機嫌麗しゅう。本日は抗議に参りました。」
陛下「抗議だと。我がリーフ王国がアルに何か不利益な事でもやったか。」
アル「はい、やられました。」
陛下は、息を飲む。ギルバートを敵には出来ない。だが余は国の統治者だ。弱みは見せられない。
陛下「話を聞いてやる。申せ。」
アルは、後ろの3人の事を説明する。騙された事は貴族として自己責任だ、それは仕方がない。対応できなかった貴族が悪い。だがその後が問題であると力説していく。仮の統治者にいったん譲ろうと。20年後は元に戻る。それを仮の統治者は、侯爵、子爵、男爵と家族たちの最低限の生活の面倒自体見ていない。イシタリカ侯爵は生活の為、平民の商店で働いて生活費を稼ぎ幼い弟を食べさせていた。
これは領地の乗っ取りだ。
そして領地管理を己で行なわず。商会に全て丸投げしている。ここに証拠もあり、証言もあります。
その商会は不正をしリーフ王国民をだまし、農奴にしていた。ここに証拠を提出します。
仮の統治者である。メルゾール・アカシ・レンネンカンプ公爵を統治能力なし、仮の統治者の責任の放棄、そして穀物価格の不正、を告発いたします。」
陛下「レンネンカンプを呼べ。」
レンネンカンプが登城するまで陛下は、3人の貴族に確認していく。確認が終わるとレンネンカンプ公爵が、大きいお腹を擦りながら現れる。
レン「おー、陛下お久しぶりですな。我も中々忙しい身でありますのでご無沙汰しておりました。アハハハ。」
陛下「レンネンカンプよ。この場に呼ばれた訳は存じておろうな。」
レン「はて、分かりませんな。突然屋敷より連れてこられましてな。」
陛下「アルフォード、説明せよ。」
アル「承知いたした。」アルは一礼する。そして公爵を睨みつけると説明に入る。
アルの説明は、商会の不正から殺人の事まで話す。公爵の関わりも話し、3人の領地の現状を話していく。
陛下もレンネンカンプも顔を歪めている。
アル「仮の統治者の能力不足、穀物価格の不正、仮の統治者の責任の放棄、この3つはリーフ王国法に違反しております。証拠品こちら、証人は別室に待機しております。」
陛下「レンネンカンプ、事実か。」
レン「い、一部、事実もありましょう。」
陛下「何が事実だ。」
レン「・・・・・・仮の統治者の領地か、管理です。」
陛下「ほう、領地管理を丸投げしていたとな、まさに管理能力なしだな。貴族の面倒を見ていなかったことはどうだ。」
レン「・・・・・・商会に面倒を見る様、命令しておりました。」
陛下「ほう、命令か、家臣でもないものにな。」
レン「いや命令ではなく、い、依頼しておりました。貴族家の生活が成り立つようにと依頼しておりました。」
陛下「紹介と結託した、穀物価格の操作はどうなのだ。」
レン「それはありません。我が公爵家は民のやる事にいちいち口出しは致しません。」
アルはレンネンカンプのこの最後に、自信満々で言った言葉は真実だと思う。穀物には実際関わってはいないだろう。尊大な公爵が民の事等気にしていないのだ。穀物が高くなろうが低かろうがどうでもいい事なのだ。商会が勝手に公爵の名を騙っていたのだろう。
陛下「そうか。では仮の統治者責任、統治者としての能力不足に関し、さばきを申し付ける。レンネンカンプ公爵、レンネンカンプ公爵は伯爵に降爵。仮の統治者、役職の剥奪。そして3貴族の賠償金支払いを命ずる。」
レン「お、お待ちください。伯爵とはあまりにも、ご無体です。陛下何卒、なにとぞ・・」
陛下「仮の統治者の能力不足(領民を見捨て治安悪化)で侯爵、仮の統治者責任の放棄(領主の生活保障)の一つで伯爵になった。3貴族の者にきちんとした賠償金額の倍払い。3貴族が納得するのならば侯爵までにする。
レン「します。やります。払います。」
そしてすぐにアルは用意していた書類を見せる。公爵は一瞬金額にギョッとしたが納得してサインした。
陛下「さてイシタリカ侯爵、スタインバーグ子爵、レバノン男爵、にも責任はある。この事件の被害者である事は分かった。数年間も厳しい生活をしていたことも承知している。それでも責任はある。貴族であることで責任を逃れる事は出来ない。だが借金は先ほど完済された。(アルが公爵との書類を陛下に譲渡した)それも借財金額以上の金を国へと納めた。(本来は商会へ支払う)
これで貴族としての責務は果たしている。イシタリカ侯爵は伯爵、スタインバーグ子爵は男爵、レバノン男爵は準男爵に降爵とする。ただし領地はそのままとする。いずれ這い上がれ、その方達は他の貴族では味会う事の無い経験をした、活かせ。国の為、領民の為に生きよ。」
「「「はっ。」」」