59話 ある令嬢
王城でのお茶会も終わりギルバート家は王都の伯爵邸に戻っていた。各自好きな事をしている。
3姉妹は何やら話し込んでいる。
アルの回想
マリーはもう相手が決まっている。サリーはレイモンドと仲がいい。と母が言っていた。問題はケリーである、もうすぐ成人となるケリーにいい話がないかとイメルダメイヤーはアンテナを張っている。ケリーは商会が忙しく。定期便の経路拡大と増便計画中だ。
そこへカインが
カイン「アル、ダンジョンの事だけど、60層でスキルオーブを13個取ってきたぞ。後日、又潜るから俺の領地お願いな。」
アル「領地はやりますけど、人を雇ってください。俺の家臣を使っているんですよ。」
カイン「えー、家臣も見つけてくれよ。」
アル「みんなの家臣でも募集しますか。」
カイン「それいいな。募集して家臣を見つける。いいな。」
マリー「いいわね、乗った。」
ケリー「乗ったわ。人は幾人いてもいいわ。」
サリー「お任せしますわ。」
クリス「俺も乗った。伯爵領の開発を進めるんだ。人が足りない。」
アル「ギルバート家だけでしょうね、これだけ人手不足は。」
クリス「だろうな、他は余っているようだな。」
アル「狙い目なんだけど、今一だな。貴族の紐が着いていそうだしな。」
アルは悩んだ末、募集を王都でする。人口も多い、
募集は、商業ギルド、冒険者ギルド、探索者ギルド多くのギルドに声をかけた。何しろ募集人数の桁が違っていた。6個の貴族(領地持ち)の募集である。一貴族侍女、メイド、護衛、執事、内政官等様々な職種を募集する。領民迄募集する事から何千人単位となっている。
面接、試験は3か月後とします。各ギルドは告知等お願いします。
商業ギ「アル様、の領地に移住は可能でしょうか。」
アル「俺の領地、可能だよ。でも面接あるからね。」
工業ギ「アル様、先に開発の為に職人は必要ですか。」
アル「いたほうがいいね。出来れば移住希望者なら優遇するよ。」
冒険者ギ「アル様、冒険者を引退した者で宜しいでしょうか、護衛、門番など使ます。」
アル「大歓迎だよ。戦える人はみんな雇うよ。あっ面接あるからね。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
話しは尽きず、一日中かかってしまった。大分大掛かりな事になっていった。
一般募集の他に紹介などもあり、アルはかなり忙しくしていた。
情報局とギルバート邸を交互に事務所として仕事をこなしていった。
そんな時、ある貴族のご令嬢が紹介状を持ち訪ねてきた。そのご令嬢は共も着けずにやってきた。
アル「紹介状をお持ちとお聞きしましたがど、ちらの方からでしょうか。」
令嬢「すいません。貴族の紹介状ではありません。」
令嬢は手紙をアルに差し出す。それはアルが良く行く店の店主からの者だった。アルはその手紙を読む。
アル「改めまして、アルフォード・フォン・ギルバート男爵と申します。」
令嬢「初めまして、私は、アンネローゼ・フォン・イシタリカ侯爵です。女の身で侯爵とお思いでしょうが、今我が家は、成人の男がおりません。よって私が後を継いでおります。」
アル「店主からの手紙には、女手一つで兄弟の面倒を見ていると書いてあったが、もしかして店主には正体を隠しているの。」
令嬢「はい申しておりません。申してしまうと雇ってもらえなせん。」
アル「まぁ、そうでしょうね。」
侯爵を平民が雇う事は絶対にない。貴族はプライドだ。平民に雇われる事等絶対にしないのだ。
令嬢「侯爵という身分は、話せません。これは意地です。ですが働かなければ食べていいけません。貴族の私では雇う事はしないでしょう。アルフォード様に事情をご説明いたします。その後ご判断ください。」
令嬢は半分諦めているようであった。
令嬢の話は、アンネローゼの父である。ケインが不慮の事故で無くなった。その時アンネローゼは学業を学ぶために王都の学園(全寮制)で勉強をしていた。ケインは罠にはめられたようで賠償責任として領地を差し押さえられてしまった。20年間の差し押さえであり。賠償金が終われば帰っては来るが、普通は戻っては来ない、何故なら侯爵家がなくなっているからである。侯爵を名乗る者がい無くなれば仮の統治者が繰り上がる可能性が高いのであった。
アンネローゼと弟と母を養っていかなければならない。今の侯爵領を仮で統治している者は王家に連なる者で王の叔父である。公爵家である。王族を敵に回す貴族は居ない。」
令嬢「以上が大まかな話です。」
アル「ご苦労されましたね。分かりました侯爵閣下を雇います。」
令嬢「えっ、宜しいのですか、私は今狙われております。家族も同じです。」
アル「心配いりません。いざとなれば、その公爵と戦いましょう。一男爵家では不安でしょうが、守って見せましょう。」
令嬢は泣いた。今まで我慢に我慢を重ね、弱音を見せてはいけないと必死に頑張ってきた。それでも敵が大きすぎるためにどこへ行っても雇ってもらえなかった。仕方なく平民の店で身分を隠しやっと食べれる賃金を稼いでいた。
令嬢「あ、ありがとうございます。」令嬢目から留まる事の無い涙が溢れていた。
アルは侍女に令嬢の身支度を整えるようにお願いする。
侍女は泣いている令嬢を優しく抱きしめて連れて行く。
その後アルは情報局を総動員して公爵を調べさせた。
3時間後
アルの目の前には、優雅な姿の令嬢(侯爵)がいた。
令嬢「このようなドレスは、何年ぶりです。」
アル「ご令嬢の母上様と弟様を迎えに行きましょう。」
令嬢とアルは、馬車に乗り込み。下町を走らせる。下町でもスラムに近い場所だった一件の小さな家。現役の侯爵家の住むような家ではない。
令嬢は、家の中に入り、母と弟に話をする。母親は泣き崩れる。侯爵夫人としての矜持を封印して今迄耐えてきていた。
令嬢「お母様、もう大丈夫です。」
母「よかった。」
アルは令嬢と母親、と弟を連れてギルバートの屋敷に戻る。
ジーク、イメルダ、レビン、メイヤーに最初に話をする。侯爵たちは別室で休んでもらっている。令嬢の母には侍女が付きお肌のお手入れ等を行っている。