43話 王国人事
王城
三日後
陛下「どうだ、保留中だが一応宰相と呼ぼう。」
宰相「ご報告いたします。・・・・・・・・・・・・・・」
淡々とリーフ王国の内情が伝えられる。宰相としては隠したい事柄が多く、重要なことは隠す方針で報告を行なっていた。
陛下「ほー、では南のレイン家と東のハイゲン家がこの動乱の根源と申すか。」
宰相「はい、南のレインと東のハイゲンは、リーフ王国を分割統治しようと画策しておりました。私の調査では、中央貴族も一部協力しております。その活動資金の多くは国庫より横領した物です。宰相の権限で中央の横領した者達は捕らえ対処しております。」
陛下「・・・ジークよ、どう思うか。」
ジーク「宰相、宰相の権限で対処したと言っていますが、裁判はしたのですか、証拠品は今この場にありますか。」
宰相「・・・・・・・」
ジーク「ある訳いでしょうな。宰相の自作自演でしょうから。」
宰相「ななな、なにを言うか。本当にこいつらは王国の国庫の横領を・・・・」
ジーク「横領はしていたでしょう。それはあなたの指示の元でね。陛下、ここに新たな証拠品と証人を提出いたします。」
陛下「うむ。」
ジークは一月以上前から王国の調査を行っていた。アルやカルロス達に意見聞き、罪の軽減をを条件に司法取引をしていた。
そして。リーフ王国の陰謀が明らかとなった。まず、南のレイン侯爵は、独自の独立を目指していた。傲慢なことで有名なレインズは己の才覚に似合わない野望を持っていた。中央の一部貴族と結託して国庫の資金で武器や贅沢品を買っていた。要は中央貴族がレインを煽て持ち上げて踊らせていただけだった。隣国との小さな争いも資金調達のためであった。
一部の中央の貴族は、宰相と繋がっており、その資金は宰相にも流れていた。
東のハイゲン侯爵は隣国と同盟を結び、リーフ王国の割譲を狙っている。現在進行中であるらしい。
東はハイゲン侯爵が完全に掌握している為に、東に入る事もできなくなっている。これは中央貴族が締め出されたからである。元々は中央貴族達は隣国と連携を模索していた。リーフ王国を揺さぶり領地割譲で利益を上げる計画であったが、ハイゲンに全て持っていかれた形となっている。
そして宰相を中心に国家運営を妨害していた。リーフ王国の経済が停滞すれば、貴族領や近隣国も影響を受ける。そして動乱が起きれば、国の指導者の価値が高まる。つまり宰相の価値を高めるためであった。
宰相はまず戦争になってもリーフ王国が負けると思っていない。国が陰謀で疲弊しているこの状況で負けるとは全く思っていなかった。大きくは3つの陰謀が混ざった状況である。まだ陰謀は進行中と事もあり公には出来ない。
陛下「宰相を捕らえ牢に入れろ。関係者も全て捕らえろ。」
この会議室にも30人ほどがいる。その中の宰相一派である20人が捕らえられた。
陛下「ジークよ。済まんが、レビンにを借りるぞ。レビン男爵、貴族どもを全て捕らえよ。」
レビン「はっ。」レビンは出ていった。
レビンは予め分かっていたこともあり。騎士たちを用意していた。レビン率いる騎士たちは、多くの貴族の屋敷に踏み込む。その数30件以上であった。
陛下「此処に残った者は今後リーフ王国に再忠誠を誓え、誓えない者は、此処をされ。」
貴族達 「「「「「「「「リーフ王国に忠誠を誓います。」」」」」」」」」
リーフ王国再編成と大きく舵を切った。
これは王国として、初めての事であった。伝統的に貴族達は役職迄継承していた。本来は貴族の爵位とは違い。王国の役職は継承など出来ない。能力主義でなければ国が滅んでしまうかである。
だがリーフ王国は継承を認めていたのだ。
陛下「ジークよ新たな人事案を示せ。」
ジーク「はっ。・・・・・・・・・・・・
内政大臣、タンデロム伯爵、外務大臣 トレイー伯爵、財務大臣 シローメロ伯爵・・・・・・・・
です。以上となります。
ですがこの人事は一時的です。能力の有無を経過観察いたします。期間は一年です。普通に仕事をこなせば全く問題ありません。
陛下「ジークよ。ジーク・フォン・ギルバート子爵を軍務大臣とする。貴族どもの監視と他国の情報を探れ。騎士団の采配権も与える。軍の組織化をしてくれ。」
ジーク「・・・はっ。」
そしてレビンも陛下に巻き込まれた。紐付きが多い騎士団の団長にされてしまった。
軍務大臣の権限(権力)が集中してしまった。軍、騎士団は勿論、情報部、兵站局、建設局、と普通であれば情報大臣、建設大臣、農政大臣などと大臣クラスの仕事がただの局長クラスの仕事されてしまった。これはリーフ王国の人材不足が影響していた。
この騒動で、多くの貴族が捕まり役職が穴だらけとなっている。それを掛け持ちさせて穴埋めを使用としている。
会議終了後
ジーク「陛下、軍務大臣は荷が重いです。」
陛下「ジークしかおらんのだ。人を育てたら交代させる。」
ジーク「ならば、新しく大臣の任命します、これじゃ仕事が多すぎますし、一つの所に権力が集中する事は国としては良くありません。」
陛下「だからジークなのだがな。」
ジーク「数日いただければ、少し考えて提案いたします。」
陛下「分かった、楽しみにしている。」
こうしてジークの一日は終わった。
疲れはて屋敷の戻ったジークは、酒で喉を潤し、妻とその日は静かに語り合っていた。
翌日、夜遅くに戻ったレビンと共に色々と話し込んでいる。
ジークは数年前は人口600人しかいない。ただの田舎領主であったのだ。
それが今は国のかじ取りを行なう地位についている。始まりはアルの魔法開発であった。
あれが無ければ今も田舎で四苦八苦しながら楽しく生活していただろうと思ってしまう。そんなカントリーな生活を懐かしがりながら、もう戻れない事を思い出す。
ジーク「ハーっ、気合を入れなおしてやるかのう。」
レビン「父上、どうしました。まだ老けるには少し早いでしょう。」
ジーク「何を言っている、まだまだ老け込まんぞ。これからだ。領地もリーフ王国もこれからまだ激動の時代が続くぞ。」