36話 偉大な英雄?
マインズ領で相変わらず政務をこなすアルであったがレイモンドも政務に慣れてきていた。
レイ「アル兄、これは喧嘩両成敗でいいすかね。」
アル「どれどれ、いいんじゃないかな、公平に対処するなら問題なし。」
レイ「ですね公正、公平ですね。」
アル「そうそう、そうだよ。」
レイモンドはアルの影響で内政官として確実に力を付けている。領主としてこれからのマインズ領を安心して任せることできる。執事は目に涙を浮かべながらアルとレイモンドを眺めていた。
騎士「し、し失礼いたします。」
執事「どうしたのだそんなに慌てて。」
騎士「はっ、失礼いたします。今館に・・・・グレート子爵の使者が来ております。」
アル「あーーー、あの勝手に伝言して帰っていった人かなー。」
騎士「たぶん、同じ方ではないでしょうか。」
レイ「会いましょう。」
レイモンド、アルの二人は玄関ホールへと向かう。
アルとレイモンドが玄関ホールまで行くと鎧姿の子供がいた。いいや子供ではなく小柄な大人が大柄な騎士2人を従えていた。
レイモンド達を見つけると小柄な男が吠えた。
「ええい、いつまで待たせるつもりだ。先日も挨拶に来るように伝えたはずだ。私を誰だと思っている。あの偉大な。英雄、ノーキンナ・ナビックマンの子孫、コーガラ・ナビックマンなるぞ。
アルは何だそりゃーと思った。英雄そんな人いたのかと思い周りを見回しても誰も知らない様であった。
アル「ノーキンナ英雄とはどのような活躍をしたのですか。」
コー「おっ、興味がるのか。おしえてやるぞー。」
アルは間違った。聞くべきでなかった。コーガラは玄関先で語りだした。延々と1時間喋りっぱなしであった。やめさせようと口をはさむが全く気にしていない。如何に先祖が素晴らしかったかを一人で喋っているコーガラの護衛は無表情であった。
「英雄、ノーキンナは村の腕相撲大会(参加者8人)で準優勝を勝ち取り・・・・ある村で魔物ゴブリン3匹を英雄ノーキンナは仲間、6人で勇敢に戦い。右手を折る大けがをしたが見事ゴブリンの殲滅にせいこうしたのだ。・・・・・・・・」
アル「・・トイレ行こうかな。」
レイ「おやつ食べたいなー。」
執事「・・・・・」
コー「おお、そうだ、子爵様より伝言があったのだ。デルト・グレート子爵閣下より伝言だ。明日挨拶に来るように。」
レイ「行きません。」
アル「うんん、そうだね。」
レイモンドとアルは引き返して部屋に戻ろうとする。
コー「どど、どういうことだ閣下が挨拶に来いと言っているのだ、普通は直ぐに飛んででも行くだろう。」
アル「行かないよ。別に用がないからね。」
レイ「ですねー。挨拶に来るなら合ってもいいですが、こちらからは行きませんよ。」
コー「おかしいだろう。あの偉大なノーキン・ナビッマンの子孫コーガラが伝令に来ているのだ。こ、な、い、は無いだろう。」
レイ「行かないよ。行く意味ないでしょう。」
コー「ききき貴様ぁぁ、偉大なこのわしが下手に出ていれば、思い上がりおって・・・。」
レイ「コーガラさん、マインズ領はギルバート男爵家の寄子ですよ。何故グレート子爵家に挨拶に行かなければならないのですか。」
コー「えっ、ギルバート男爵家の寄子だと、寄子だとー、何を勝手に寄子になっているんだー、クレイン領は、グレート子爵家の寄子だぞ。」
レイ「クレイン家は確かに寄子でしたが、マインズ家は寄子ではありません。」
コー「ん、マインズ家、ここはクレイン家では無いのか、以前は来た時はクレイン領主と・・」
コーガラは、思い込みのハゲいい人物であった。クレイン家の庶子レイモンドと聞いていた為にクレイン家を相続したと思い込んだ。レイモンドはクレイン領を相続したのではなく領地を平定したのである。
平定したのちに領主となったのである。
コーガラは手柄を立てるためにマインズ領を自分の手下にしようとしていた。グレート子爵にはコーガラを通じ寄子となりたいと打診があると報告していた。なんとしても挨拶に越させなければならなかった。
レイ「この地は私マインズ家が平定して得た領地です。兵を貸してくれたギルバート家には恩義があり寄子となったのです。」
コー「なななな、でででも、普通は、グレート子爵だろー、普通はグレート閣下の・・」
レイ「お帰りはあちらです。」レイモンドは玄関を手のひらで示す。
コー「ととと取りあえず、閣下には今忙しく、都合がつかないと伝える。偉大な閣下の為に、領地を安定させてから挨拶に伝えて置く。ではわしは急いで伝えねば・・」
レイ「全然違うでしょうー。断ってますからーーー。」
コーガラ達は嵐の様に去っていった。
レイ「アル兄、どうしましょう。」
アル「一応、経緯を手紙として出すようにしようか。」執事を見る。
執事「今の経緯を纏めて、出しておきます。」
レイ「よろしく頼むよ。ハーァ、なんか疲れました。」
アル「だよね。あれは酷いね。村の腕相撲大会準優勝だってー。」ブッフッ。アルが吹き出した。
レイモンドも執事それと近くにいた者すべてが、吹き出し笑い出していた。
コーガラの護衛騎士達はウンザリしていた、もうこの男には着いていけない。自分勝手で思い込みの激しさと失敗を他人のせいにする性格、他に仕事があれば転職したい思うのであった。
護衛1「マインズ領は人を募集しているらしいぞ。」
護衛2「マジか、あんな場面にいて雇ってくれるかな。」
護衛1「クレート家よりはいいだろう。グレート家の寄子領主はみんな駄目駄目だしな。」
護衛2「ああ、どこの領主も似たり寄ったりだもんなー。」
この護衛二人はコーガラが臨時で雇っている者達である。偉大なコーガラに長年勤める者はいない。みんな長く続かない。コーガラは一人、不思議に思っている。何んで偉大なこのナビックマン家居つか無いのだろう。そうか偉大過ぎてみんな委縮して勤めることも恐れ多いと思っているのか。と答えを出していた。
なんと幸せな考えを持っているコーガラであった。
コーガラが子爵家で都合の良い報告をした後マインズ領より手紙が届く。怒り狂ったグレートはコーガラを呼び出した。