32話 悲しき少年
マーシャル達
マー「やっとこまで来たか。一安心だ。」
執事「ここまでくれば、ギルバート領まであと少しです。」
マー「少し休もう。疲れた。」
当主マーシャルは妻と息子の3人でテントを張らせその中で休んだ。そして起きてくる事は無かった。
執事によって毒殺された。
騎士「毒殺で宜しかったのですか。」
執事「この手で殺したかったが、仕方ない今この状況なのだ。万一騒がれても困る。」
騎士「左様ですな。」
執事たちは、領主の首を斬り落としギルバート領へ向かった。
父「何、マーシャルの一族が保護を求めてきただと。」
騎士「はい今ギルバートの街道門にいます。」
父「よし、連れてこい。」
マーシャル一族と言っても一人の少年であった。後は執事と騎士、その他家族たち。
少年と執事の二人レビンの待つ部屋へと案内された。
少年「初めまして、レイモンド・マーシャルと申します。」
執事「マーシャル家執事のカインズと申します。」
レビン「レビン・フォン・ギルバートだ。マーシャル領はどうなっている。」
執事「私がご説明いたします。
執事の説明は淡々としていた。事実をそのまま伝えていく。
農民と小作人たちの怒り、騎士達の狼藉の数々、恨みつらみが重なり合わさりマーシャル領は混とんとしてしまい、最後は騎士達の皆殺しで終わったと伝える。
レビン「それで領主は農民に殺されたのか。」
執事「いいえ、レイモンド殿が討ち果たしました。」
レビン「何ぃ。」
少年「わ、私の母は領主マニルに殺されました。父ではありますが母の仇です。」
執事「レビン様、ご説明いたします。」
執事の話は、貴族にはよくある話であった。妻と子供のいるマニルであったが美しい一人の女に夢中となった。平民のその女は、まだ17歳であった。マニルによって別宅に住まわされ毎晩抱いていた。そして妊娠、出産となった。そこまでは良かったがマニルの妻にバレた。妻はその女をいたぶり殺した。それを静観したマニルであった。小さな赤ん坊は執事であるカインズに保護され、匿われて育てられた。
レビン「そうか。」
少年「私には母の記憶がありません。ですがなぶり殺されたのは間違いなく私の母です。執事に聞きました。2度私は母に抱かれたようです。覚えていません。ですが私は母に愛されてこの世に生まれました。レイモンドという名も母が考えてつけてくれたそうです。」
少年の目が真っ赤になって涙がボロボロと落ちている。
「私は、母の子でありますが同時にマーシャルの血を引いています。こればかりはどうにもなりません。マーシャル領主の首を持ってまいりました。マーシャルの領地をお渡しします。領民を救ってください。
おねがいいたします。」
少年は頭を下げる。執事も同時に頭を下げている。
レビン「レイモンド殿、領民を救いたいか。」
少年「はい、救いたいです、今領民たちは食料もなく苦しんでいます。領地全体が苦しんでいます。」
ボロボロと涙を流すレイモンド
レビン「兵を預ける。レイモンド殿、見事治めてみよ。」
レイモンド「へっ、・・私がですか。私は平民として育てられました。誰も私がマーシャルとは思っていません。そんな私では治めることは出来ないと思います。」
レビン「領地を治めるのは血筋ではない。能力だ、民を思う気持ちがあれば大丈夫だ。信頼できる家臣もいるだろう。(執事を見る)カインズ殿レイモンド殿の母上は平民だと言うが家名は無かったのか。」
カインズ「家名はありませんでしたが屋号はございました。マインズ商会という商家のです。」
レビン「ならば、レイモンド殿、レイモンド・マインズとこれから名乗るが良い。このレビン・フォン・ギルバートが保証する。」
少年「はっはい。ありがとうございます。レイモンド・マインズ。マーシャル領の混乱を治めます。」
その日はレイモンド一派は夕食会に招待され大変な持て成しを受けた。
少年「こんなごちそうは初めてです。」
レビン「そうか遠慮はいらないよ、好きなものを好きなだけ食べてくれ。美味しく食べる事は料理をした者が喜ぶからね。」
少年「はい。みんなと美味しく頂きます。」
執事と騎士達は少年の楽しそうな笑顔に遠くから涙をこぼしていた。
翌々日、クリス、カイン、アルの3人がギルバート領に呼ばれる。
レビンがレイモンドの助太刀に3人を指名していた。3人にはレイモンドの事はもう説明済である。
レビン「レイモンド殿を大将に直属の護衛を騎士達にお願いする。執事殿はレイモンド殿の補佐をお願いする」レイモンドと一緒に来た騎士達である。
執事たち「「「「はっ」」」」
レビン「実行部隊としてクリス、カイン。アル各自100の兵を率いてマーシャル領を安定させろ。その後はレイモンド殿を領主に治めさせろ。良いな。」
クリス「父上お任せください。」
カイン「戦闘あるかな。」
アル「農民とは、なるべく戦わない方向で行きます。」
大将 レイモンド・マインズ
補佐 カインズ
直属護衛隊 騎士8人
クリス隊 100人
カイン隊 100人
アル隊 100人
レイモンド達は、最初ファースト領に入り宣伝を行った。マーシャルに迫害されたレイモンドが戻ってくると宣伝していった。領民たちはレイモンド誰?となっていたがマーシャルに母を殺され仇をうった事を宣伝していく。美談を前面に出して領民の心を掴む作戦でいく。
クリス「アルの考えは流石だね。」
カイン「ホントにみんな心酔してるんだな凄いなー。」
アル「人は美談を好ましく思うんですよ。」
クリス「まぁ本当の事だから問題ないよな。」
アル「そうです事実を宣伝しているだけですから問題ありません。」
だがマーシャル領内で活動を始めると生き残りが何人も出てきた。
姑息な小物たちだ。生き残る嗅覚だけは、ずば抜けている者達だ。
この姑息な小物たちは、レイモンド、執事、騎士達にゴマをすり、マインズ領(旧マーシャル領)の役職者に成ろうと必死に毎日押しかけてきている。
カイン「あいつら殺してやろうか。」
クリス「カイン、ダメだよ。」
アル「そうですよ。あれはあれで使い道があるんです。」
レイモンド「カインズさん、なんですかあれは気持ち悪いです。」
執事「レイモンド様、使い道はあります。今は我慢です。」
レイモンドは領地の地固めに動いていた。大きな問題も無く各町と村は落ち着きを取り戻していた。だが人が多く死んだことで大幅な人員の補充が課題となっていた。