306話 交渉?
アルの指摘の通り、後背を抑えるために向った兵たちが崩れた。
ヒローは救援として向かいそのまま突破して退却していったが、アルとカインと数名はヒローの陣にまだ残っている。
ヒローが退却と同時に各部隊には伝令が走っていた。後背の部隊以外はまだまだ戦闘能力があり、今撤退すれば被害が大きくなってしまう。それでも撤退命令は絶対であり各部隊は被害を拡大させながら後ろに下がっていく。それを援護するようにアルたちが前線に姿を現せて行く。
アルたちは撤退を助けるために走り回っている。ほぼ撤退が完了するが、もうその時にはアルたちは完全に囲まれてしまっていた。
アルを含めて20人である事で敵兵たちに少し余裕を与えていた。
そこにマーカス侯爵が姿を現す。
マーカス「20人で勝つ気なのか。」
アル「やってみましょうか。」
マーカス「ギルバートか、・・・やめだやめ。」
アル「賢明ですね。」
マーカス「くっ、一つ聞きたい。俺の派閥を如何する気だ。」
アル「予定では滅ぼすでしたが失敗しましたので、別の手を考えます。」
マーカス「・・・・・・・デスーズとの会談を申し込む。」
アル「分かりました。明日の昼この場所でどうでしょう。」
マーカス「了解した。引くぞーー。」
マーカスは自軍を全て引かせていた。マーカスの言葉に兵士たちは驚きの表情をしていたが誰も文句を言う者はいなかった。
アルはこのマーカス侯爵の実力を認めている。兵の統率能力、指揮者としての能力と侯爵自身の実力があり、簡単に滅ぼすことは出来ないと判断していた。アルとしてはヒローにこの地を任せと考えは変わっていないが、ヒローが独自で攻略しなければ意味がないと考えている。アルたちの力があれば侯爵は多少てこずるがそれ以外は簡単に処理が出来ると思っている。
まぁドラゴンとかドラゴンとかを使えばであるが・・・・。
そして翌日
両者は、昨日の戦場に居た。
その場にはアルが用意した天幕と食事が用意されていた。デスーズ側はヒローと騎士二人とアルとカインの5人でマーカス侯爵側は本人と騎士が6人であった。
そんな会談であるが皆が黙々と食事をしている。誰も一言も喋る者がいない。
食事も終わりさぁこれから会談を始めようとなった時に侯爵が喋り出す。
侯爵「同盟を結ぼうではないか。」
アル「いいですよ。」
ヒロー「えっ???」
アル「貴族連合はいいのですか。」
侯爵「あんな物ただの形だけだ問題ない。」
アル「分かりました。ですがデスーズは貴族連合を敵としていますから、脱退が条件ですね。」
侯爵「問題ない。お前たちを相手にするより貴族連合の方がいいからな。」
アルはニコリと笑い、話を進めていく。
この南地方の貴族連合を解体して、新たな形で作り直そうと提案していく。
その形として侯爵の派閥とデスーズの派閥を同盟を結び、もう一つの大きな派閥を吸収もしくは殲滅とする事を確認していく。
少数派閥の変人たちは無視とするが無所属の者達は取り込むか滅ぼすことに同意していく。話に取り残されていたヒローもやっと話に加わっていく。
ヒロー「あの派閥はジョニー兄が対応しています。」
アル「そうだったな。ならその内派閥は解体されるだろうから取り込みをヒローがやってくれ。」
ヒロー「えっ俺がやるの?」
アル「そうだよ、そこでヒローの派閥を造るんだよ小さくてもいいからつくってね。」
ヒロー「・・・・・」
侯爵「なぜ南を侵略しようとしたんだ。もう少し待てば南は争いになっていたと思うぞ。」
アル「だからですよ。戦力が疲弊してからでは遅いですからね。今ならばまだ力を残す事が出来るでしょう。昨日の戦いでも死者は少なかったでしょう。」
侯爵「最終目的は何だ。ギルバート家の支配か。」
アル「支配というより共同体ですかね。元ローマン帝国を分割で統治していく事で争いは少なくなります。その調整はギルバート家が行いますが、それ以外は各自で政は行ってもらいます。元ローマン帝国の様にい軍事力に特化した物ではなく内政を重視した国へと変わってもらいたいんですよ。余りに巨大国家となると小回りが利かないので南では3つに分割する事が望ましいと考えています。」
侯爵「フン、傲慢だな。世界を支配する気満々ではない。」
アル「少し違いますね。ギルバートは争いのない世界を目指しています。ですが争いが無くなる事は無いとも思っています。ならばその争いが少なく、過激にならない物にしなければなりません。そこで軍縮なんですよ。」
侯爵「小国となれば大きな軍事力は国家の負担になるからか、小賢しい考えだ。」
アル「小賢しいですが有効ですよ。」
侯爵「フン・・・・・・」
アル「南地方の中で各派閥(国)は交易で栄えるために同盟関係を結びましょう。戦う為ではなく金儲けのための同盟ですよ。」
ヒロー「金儲けってハッキリ言い過ぎでしょう。」
侯爵「悪くないな、今は戦争という事で他の大陸から敬遠されてしまっている。南が安定すれば交易の血として復活するだろう。」
カイン「へへへ、やっと話が付いたな。侯爵よぉ、俺と一度戦おうぜ。」
侯爵「フン、俺は強いぞ。」
カイン「へへへ、問題ないなまぁ負けて泣くなよ。」
アル「はぁぁぁぁぁーー、まだ話は終わっていないんですけどね、こうなったら仕方ありません侯爵とカインの模擬戦後に細かい事は詰めていきましょう。まぁ明日になる可能性が高いですねどね。はぁぁぁ」
カインと侯爵は他の者達を無視して外へ出て行ってしまった。残された者は地はお互い目が合うが皆無言であり、あきらめの表情となっていた。両者の者達はああなってしまってはもう何を言っても聞かないので仕方がないと思っているからであった。
アル「お茶でも飲んで待ちましょう。」
アルの一言でお茶とお菓子が運ばれてくる。その時にブラジリの騎士がアルに質問してきた。
騎士「アル様、お聞きしたいことがあるのですが宜しいでしょうか。」
アル「何でしょうか。」
騎士「アル様やカイン様の活躍はローマン帝国内で有名なのですが、何故今回の戦で初めから出てこなかったのでしょうか。」
アルは、正直の答えるか迷っていたがそこにヒローが口を挟んできた。
ヒロー「それは俺のためだよ。俺を鍛えるためにアル様とカイン様は見学しても貰ったんだ。まぁ負け戦で最後は助けてもらったけどな。アハハハ。」
騎士「エッ引き分けでしょう。」
ヒロー「えっどう見ても負けだろう。」
この二人は昨日の戦いをいや負けた、いいえ引き分けですとどちらでもいい事を白熱して言い合となっていたが、外で突風が吹き天幕が飛ばされた事で終了してしまった。
天幕が飛ばされてカインと侯爵の戦いが目に入ってくる。両者は楽しそうに戦っていた。




