304話 ローケン・カーメル男爵
カイン「たのもーーーーー。」
今カインはデスーズ男爵領の隣の領地である、カーメル領に来ている。領内の出入り口は固く門に閉ざされている為に大声で叫んでいる所である。
そんなカインに門兵だろうか門の上部から覗き込んでいる。
カイン「おッ、そこの門兵、俺はカイン・ギルバートだ。ここの領主に会いたい。」
門兵はギルバートという家名に反応していた。此処でもギルバートはかなり名が通っているようで、門兵は急ぎ領館へと伝令を走らせていた。その間にカインは門兵と駄弁っていたくだらない話をしていたがかなりの情報を聞き出すことが出来ていた。カイン自身は意識をしていなかったのだが、普段からクリスやアルといる事で自然と情報の有用性を理解していたのだろう。
そんな駄弁っていた所にカーメル男爵が現れる。
カインはカーメル男爵に対して「おーー、強そうだな。俺と戦わないか。」
カーメル「カイン・ギルバートだな、噂は聞いているかなりの戦闘狂のようだな。」
カイン「へへへへ、俺は強いぞ。」
カーメル「いいだろう、だが勝っても負けても今後カーメル領には手を出すな、それが条件だ。」
カイン「おう約束するぜ。」
カーメルは門から出てくる。カインを領内に入れるつもりは無いようで、門の外で戦うようだ。
カインはそんなことは全く気にすることなくウキウキしている。
そして戦いが始まるとカインの表情が引き締まっていく。それはカーメルが見た目以上に強いからだ。
序盤は軽くカインも剣を振っていたが全てを受け止められてしまったそこでカインもギアを一段上げて剣を振るがそれも全て躱されてしまった。カインはニヤリと笑い「行くぞ。」と言い放つと縮地を使いカーメルに迫るが、それも剣で受け止められた。
カイン「凄いな、俺がスキルを使って殺せなかったのは久しぶりだな。」
カーメル「俺も久しぶりに焦ったぞ。今度は俺からだ。」
カーメルがカインに迫るカーメルは右手に短槍、左手に剣を持っている。カーメルは短槍をカインに投げつける。カインは短槍を避けると避けた先にカーメルの剣がひり下ろされてきた。だがカインの防壁に阻まれカーメルの剣は折れてしまった。
此処で両者は後ろに飛んでいた。5M程距離が開いているが、又一瞬で距離が縮まっていた。
カキン、カキン、カキンと何度も剣がまじりあう音が聞こえているが早すぎて門兵たちは目で追う事が出来ていない。
カイン「お前凄いな、」
カーメル「そうだろう。この辺じゃ、俺の1強だったな。まぁいいか、続きは後でやろう。中(領内)を見てみるか。」
カイン「いいのか、敵になるかもしれないんだぞ。」
カーメル「敵にはならないな、最初の約束があるからな。」
カイン「そうだったな。へへへ忘れてた。」
カーメルは、まぁ戦闘狂はそんなもんだろうと気を取り直してカインを領内に入れて案内をしていく。
カーメル領は、かなり発展している。驚くカインをカーメルは嬉しそうに見ていた。
カーメル領は、農民も兵士たちも皆明るい表情をしている。豊作という事もあるが、税も安く物が豊富である事でかなり裕福な暮らしとなっているようだ。まるでギルバート領内にいるような錯覚をしてしまう。
カイン「領民が笑っているな。」
カーメル「おッ解るか、これが俺の領地だ。」
カイン「分かった。この領地には俺が責任をもって絶対に攻撃させない。約束する。」
カーメル「ありがとう。普通はこの領地を見ると欲しいと思う者が多いんだがギルバートは違うようだな。」
カイン「そうかな、みんなが笑っている領地はいい領地だろう。下手に侵略なんかしたら領民が不幸になるからな、俺たちは領民を大事にする領主には手を出さないぞ。」
カーメル「まぁそうだろうな、ギルバートはそうでなければこれ程の力はつかなかっただろうしな。」
カイン「まぁ俺は戦闘専門だからその辺は分からないけどな。へへへ。」
カインとカーメルはそれからカーメルの屋敷に招待され、そこでも何度か模擬戦を行ない。カインを宴に誘い一晩中騒いでいた。カーメル領内の騎士達も集めり戦いの話題で盛り上がったという。
カインはカーメル領で数日を過ごし満足してデスーズ領へと戻っていた。
戻ったカインはアルにローケン・カーメル男爵領には干渉しないと約束したと告げた。驚いたアルはカインに質問したが、カインはあいつはいい奴だの一言で終わってしまった。アルはその言葉を信じる事にした。カインの感は信用できることは分かっているからだ。それに戦闘狂のカインが、戦えないやつにそんな事は絶対に言わない事も分かっていた。かなり強力な領地であることはそれだけで想像できたことも理由だろう。
アル「そんなに強かった。」
カイン「おうかなりの強者だな。俺の攻撃を全て受け止められたぞ。」
アル「へーーー、それは凄いな。魔法はどうでした。」
カイン「・・魔法なしだったから分からない。今度は魔法ありで戦うかな。」ニヤリ
アル「カイン兄、交易も出来るように交渉をお願いしますよ。人を連れて行って交渉はそいつにやらせますから。」
カイン「いいけど、もうすぐ戦争だろう。それが終わってからでいいか。」
アル「もちろんですよ。」
アルは、海岸地方の進軍準備で大忙してなっていた。それはアルが戦争を行なうとギルバート内で噂となりギルバート領内の者達が押し寄せてきていたからだ。アルはカインに選別をお願いした。2000人限定として選別していく。ギルバート領内の農民,商人、冒険者などが集ってしまったからだ、さすがにギルバート家に仕えている者は来なかったが、クリスの元など各領主に出陣の嘆願が多く寄せられていたようだ。
何故、農民や商人、冒険者がこれほどあっ待ってしまったのか、それはアルが戦争した場合には領地が増えてしまうからだ。そしてその領地には新たな領主や騎士などが任命されていく。野心のある者達が集り武勲を挙げて貴族となり領主になる事を狙っているのであった。
アル「はぁーーっ。良くここまで集まったな。」
ヒロー「アル様、それは仕方がないですよ。ギルバートドリームですから。」
アル「ギルバートドリーム??」
ヒロー「あれアル様知らないんですか。有名な話ですよ。ギルバート側で参戦して武勲をあげれば騎士や貴族になれる。そして領主にもなれるって有名な話ですよ。だから大勢の者達が押しかけてきているんですよ。俺もデスーズで領地が貰えなかったらギルバートドリームにかけようと思っていましたから。」
アル「そう何か、初めて聞いたな。」
ヒロー「アル様はそのトップですから下々の噂は耳に入らないかもしれませんね。」
アル「んーーーー、どうだろうかな。俺の周りは元平民が多く仕えているからな。そいつらもほとんどが領主となっているからそんな噂がある事事態知らないかもしれないな。」
ヒロー「そうなんでしょうね。平民から貴族になってしまうとかなり忙しくなりますからね。俺ももうへとへとですよ。」
アル「まぁ仕方ないだろうな。その為にゴーレムを派遣したんだから。」
ヒロー「ですよねゴーレムがいないければ、いまだに机から離れられなかったと思います。」
そんな二人はかなり気が合うようでジョニーを含めた3人はかなり親密となっていた。




