299話 次なる戦いの準備
ヒローは今、元子爵領都の屋敷にいる。
ヒローと孤児たちが集まっていた。先の戦争で活躍した者達の功労賞を行なう為である。
ヒローは、男爵家の功労賞によって元子爵家の領都とその周辺も領地となっている。
周辺と言っても近隣の村堺までが領地となっている為にかなりの広さとなっていた。
そこでヒローは、新規の村を造り孤児たちに領地として分け与える事にしていた。
新規の村は3つ造り、取り敢えずは孤児たちの共同で統治させることにしていた。さすがに一人で統治を任せられることはまだ出来なかった。
村も軌道に乗るまではヒローが実質統治する事になるが、名目上は孤児たちの褒美としている。
孤児たちは、毎月給料が出る事の方が現実的で嬉しいようで、村は二の次のようだった。
そんな状況の中、元子爵領都を取り纏めしていた、商業ギルドの者達がヒローに面会を求めてきていた。
占領されたことにより領都の機能がマヒしている為だ。
占領後にすぐに通常の生活をするようにお触れを出したが、さすがに男爵軍が駐留している為に領民たちは普通の生活に戻るにはまだ時間がかかっている。
そんな状況の中、商業ギルドが出張ってきたのである。
ヒローは、商業ギルドと話し合い、取り敢えずは商業ギルドが中心となり町の運営を行なう事になった。通常であればヒローが運営するのだが、今は戦争中という事でヒローはこの領都に常にいる事が出来ないからであった。
ヒローは、商業ギルドに新規村の建設と街の治安維持と税の徴収を依頼する。1年間の契約で更新可とする契約であった。ヒローの読みでは1年あれば落ち着くと考えていた。
それは、長引けばギルバート家が介入してくると読んでいた。ギルバート家の介入時に味方となれば勝つことが出来ると読んでいる。嫡男との話で計画が進んでいる。
嫡男はヒローと同じで華奢な体である事で頭を使うようになっている。かなり変わり者であるが策謀に長けているようだ。
ヒローは次の戦いの為に急いで領都の財務状況を把握しなければならない、何しろ金も兵もないのだ。次の戦いでは兵力も期待されている事で早急に兵士を集めなければならなかった。
元領都の税は、5公5民であった。ヒローは当分このままを維持する事で軍費を賄おうと考えている。
元領都には衛兵や門兵が約300人いるがその内元子爵軍に加わり戦死ないし負傷した者が100人いた。元領都の治安維持の為に150人は残さなければならず残り50人と孤児たちが今の戦力となっている。後は募集によりどのくらい増やせるかはまだ未定である。
ぎろーとしてはあと150人は増やしたい。50人と孤児が30人、募集で150人とななれば230人の兵士となる。230人の内、弓兵を80人、槍兵を100人、遊撃隊(孤児たち)30人と騎士20騎とした。騎士20騎は元からの要る騎士達であり、元子爵家の者達である。
普通はまだ信用が出来ないのだがヒローには戦力が無い事と家臣が少ない事で雇う事にしたのだ。その為に騎士達には、最前線で戦う事を誓わせている。
そんなごたごたしている所に男爵家からの伝令が届く。男爵家の伝令は隣の領地を攻めるという物であった。
ヒローとしてはもう少し領地の事を行ないたかった打否の状況ではそうも行っていられない。周りは全て敵となっているこの状況で悠長に構えている事は出来ないのだ。
ヒローは急ぎ兵を集め出陣していく。
男爵軍と合流するとすぐに男爵と嫡男の元に行く。
天幕の中には、男爵と嫡男そして次男と三男もいた。
不思議そうな顔をしている事に気付いた嫡男がヒローに説明する。
要は庶子であるヒローが活躍して領地を手に入れた事で自分たちも領地を手に入れると意気込んでこの戦場にやってきたと説明された。ヒローとしては何とも言えない表情となっている。
嫡男「まぁ運が良ければ手柄をあげる事が出来るだろう。」
男爵「次男と三男には各50の兵を預ける。其れで功績をあげよ。ヒローの兵いかほどだ。」
ヒロー「230の兵を連れてきました。」
男爵「ほー、よくそれだけ連れて来たな。」
嫡男「流石だな。俺は領地から80人しか連れてこれななった。」
ヒロー「80人でも中身でしょう、ジョニー兄は予想ですが強者しか連れてきていないのでしょうね。」
嫡男「よく分かったな。かなりの強さだぞ。(傭兵)」
男爵「お前たちは負ける事は考えないのか、先の戦いでも負けると思わなかったのか。」
嫡男「負ける事は考えていますよ。ですが勝つことも考えています。今回の戦いも同じですよ。予想では勝ちますが勝ち方が問題となります。短期で圧倒する勝ち方でなければなりません。男爵家の力を見せつける事で今後の道が開かれます。」
男爵は考えていた。今までの戦い方では敵を圧倒など出来ない。嫡男は何か考えがあるのだろう。次代の領主である嫡男に任せてみようと思ったのだ。
男爵「ジョニーには何か作戦があるようだな。」
嫡男はニヤリと笑う。
嫡男の連れてきている傭兵団はフェアネス傭兵団との説明であった。ヒローは驚きで声が出てしまった。嫡男はヒローを見てニヤリとしたが男爵と次男三男にはその意味が解らないようであった。摘男はフェアネス傭兵団の説明から始まった。この傭兵団はフェアネス王国の者達が主体となり作り上げているという。
フェアネス王国はアルが統治している国である。多くの王国民は王国の兵となっているが、変わり者達は何処にでもいる。安定しているフェアネス王国であるが、戦いの場を求めて傭兵となった者達がいた。それはスキルオーブを手に入れて過激な戦闘を求めている集団であった。フェアネス王国民であるが傭兵を仕事としている。(かなりの高齢集団でありフェアネス王国の元兵士たちが多く所属している。)
そして嫡男はその傭兵たちに繫ぎも依頼していると説明していく。それはギルバート家との繋ぎであった。フェアネス王国民である傭兵たちは、ギルバート家(傭兵たちの子)との繋がりもあり協力要請も出来るという。嫡男はこの南の貴族連合との戦いにギルバート家に協力を仰いでいた。嫡男はローマン帝国南地域の価値をきちんと理解していた。その価値をギルバート家に傭兵団から伝えてもらったのだ。それはこの南は香辛料の宝庫であることだ。ギルバート家としても香辛料は貴重な交易品である。安定的に交易が出来るのであれば協力はするだろう。それも自分たちに有利な条件での交易となればギルバート家は必ず協力してくれると考えていた。まだ正式な返事はないが内諾は貰っていると嫡男は父である男爵に説明していく。
嫡男の説明に男爵は顎が外れたように大きく口を開けていた。




