293話 ジャスティの窮地
ジャスティ(男)は、かなり不機嫌になっている。
あの代官の画策に乗せられ周辺貴族を糾合し、かなり大きな集団となってしまっていた。
この群雄割拠の中央に突然正当性のある集団が生まれてしまっていた。周辺で国を興そうとするもの達にとってかなり脅威な存在となっている。皇帝の血筋という強烈な手札がある事で簡単に攻める事も出来ない。
そんな状況の中、ある貴族がジャスティと同じように皇帝の落とし子だと言い出したのだ。これには他の貴族他も飽きれて誰も信じなったのだが、言ったもの勝ちであった。
この貴族は、落とし子ではなく何の関係がない事は周りの貴族達は分かっている。だがその貴族に従う者達には関係の無い事で皇族の軍として人が集まるようになっていた。
そうなると他の貴族達も嘘でも皇族の血が流れているという風になっていく。
名乗ったものに兵が集まるのだ、みんな名乗るようになってきことは必然なのだろう。
そうなるとジャスティの存在感が薄れていく。周りが皆皇族に連なる者であるのだ必然だろう。
ジャスティへの高い壁が無くなった事で周りの貴族がジャスティ領へと攻撃をかける者が出てきたジャスティはそのすべてを撃退していく。そして潰した貴族領を糾合し大きな勢力となっていく。
中央の戦いもかなりこなれて来た様相があり、ジャスティと他3つの集団が台頭していた。
中央を中心としたこの4つの集団は、お互いに牽制する事で均衡を保っている。
争いの少なくなった中央は4つの勢力、西は貴族同士が一つに纏まっている。東は東ローマン帝国がある。
南と北は、ローマン帝国貴族が治めている領地があり争いは多少あるが各領主は概ね平和である。
その東西南北の元ローマン貴族達は中央の4つの勢力に注目している。この広大な領土を治めるのはローマン帝国の血筋でなければ無理だと皆が思っているのだ。たとえそれが嘘の血筋でもそれに縋るしかまとめる事が出来ないのだ。
今4つの集団は皆皇族の血筋を名乗っている。ジャスティは間違いなく皇族の血筋であるが他は自称である。
そんな4つの内3つが動いた。
ジャスティ領へ3つの集団が襲い掛かってきたのだ。
ジャスティが皇族に連なる者だという事は誰もが知っている事実だ。自称皇族に連なる者達にとってジャスティは邪魔なだけの存在である。そこで3つの集団はジャスティ領を占領して3つに分ける事で合意したのである。ジャスティ領を取り囲むように領地をもっていた3つの集団は利害が完全に一致していた。
今のジャスティの勢力は兵15000となっている対する3つの勢力は各20000から25000の勢力を持っていた。3つの勢力は各15000の兵を連れてじゃシティ領へと攻め込んできた。
3倍の勢力に対抗するためにジャスティは領民に逃げるように指示を出していた。同じローマン帝国であっても今は敵となっている事で略奪、強奪が当たり前となってしまっていた。大事な領民たちが殺されるたり奴隷となる可能性がある為に逃がすことにしたのである。
ジャスティはこれを東ローマン帝国に救援をもとめた。
東ローマン帝国はジャスティの申し出を快諾し領民たち避難を請け負った。
戦える男を残し、他を全て避難させていく。それはまるで焦土作戦のようであった。
人物金を綺麗に持ち去っていた。
広大な領地であるローマン帝国は、兵站を現地調達する事は当り前であった。領地からの兵站輸送はローマン帝国が健在であればこそ可能な事であり、今この時は現地調達が主流となっている。それはこの地が豊富な耕作地帯である事がそれを可能としていた。
3つの集団は豊富な作物があると思い込んでいる。それは仕方のない事でもあり作戦の失敗を示唆していた。
3つの集団がじゃシティ領へと進軍したが、村や町には人っ子一人ない事が判明する。そしてそこには麦一粒も残っていない事が分かると、3つの勢力は大騒ぎとなってしまった。
急ぎ本領から食料を手配するが、手持ちの物資でそれまで凌がなければならないのだ。3つの勢力はそこで一旦停止する。
それをただ見ているだけで済ますことなどしないだろう。ジャスティは、兵站の輸送部隊を襲い壊滅させていった。
実はまだこの時は完全に領民たちの避難は完了ていなかった。攻め込まれるジャスティ領の外縁部分は避難に間に合ったが他はまだ途中であった。3つの勢力が進軍を止めた事で余裕の出来たジャスティ達はゆとりをもって避難活動を行なえていた。
そんな事は全く知らない3つの勢力は怒り狂っていた。少なくなる物資と届かない物資で兵達が飢えが始まっていた。
少しでも現地調達するために兵士たちは村や町で食料を探し回る。狩りに出る者を多くもう軍とはいえない盗賊集団といえた。(実入りの無い盗賊)
そんな3つの集団各15000が足止めされている事と領地に対して増税が決定され農民たちは生きていけない状態となっていた。度重なる増税で農民たちはもう食べる者が無くなっていた。
街の商家などには大量に麦や大麦がある事は分かっている。だが農民の家にはもう食料は無くなっていた。
この作戦?は偶然の産物であった。同時に攻め込まれることが解るとジャスティは東ローマン帝国に領民の避難を依頼した。そして自らは自領で迎え撃つことで対抗しようとしたのだ。少しでも敵を削る為に兵站部隊を潰しただけであった。だがそれが大きな戦果をもたらしていた。
何度も兵站を潰された各勢力は何度も領地に物資を依頼していた為に農民たち(領民)の怒りを買い暴動まで発展している事となっていた。
領地は不安定となり各勢力は、引き返すことになるのだが兵が逃げ出していた。これで戻る事を告げてしまえば兵たちは勝手に抜けていくことは明白であり動く事が出来なくなっていた。
そんな状況の中、各勢力の農民たちは勢いを増していた。そこには東ローマン帝国の影が見え隠れしている。
農民たちが動きやすいように食料と武器、そして指導者を東ローマン帝国が手配していたのだ。これは東ローマン帝国が策した訳ではなく、農民たちの怒りが爆発したことに便乗しただけである。
まぁすぐに手配が出来るという事はその可能性を考慮していたのだがあくまで偶然であるとなっている。




