280話 グレイ
本格的な調査が開始されて10日余り経っていた。
この10日は、まさに研究者たちにとって刺激的な10日であったようだ。海底に沈んだこの遺跡は生きている(稼働中)のだ。
建物内は塵一つなく、明るい。これは何者かが清掃している証拠となっている為に研究者たちは必至になって調査を行なっているがいまだ見つかっていない。
この遺跡にまだ人が住んでいるのでは疑問も浮かんだのだが、人の気配すら感じられない事で研究者たちは、人ではなく魔法や魔道具によってこの建物の管理が行われていると推測していた。
そんな事を色々と研究者たちは毎日楽しそうに話をしている。そこにある研究者が駆けこんできた。
「たたたた大変だーーー。」
その駈けこんできた研究者は、ある部屋で眠る人?を発見したという。
皇帝とアルたちはその部屋へと向かい。驚愕する。
そこにはカプセルの中に眠る人人人であった。
カプセルの中で眠る人は人であって人ではなかった。今この世界にいる種族の物ではなく。おとぎ話に出てきたグレイであった。目は大きく全てが黒目であり、肌の色は名の由来となるグレイである。
身長は人より低いようで150センチぐらいだろう。
このカプセルは僅かに振動している事でまだ今カプセルが稼働している事が分かる。そしてその中にいる者達も生きているのだろう。その為に無理やりこのカプセルを壊して開ける事が出来ないでいた。
アル「当分はこのままで仕方ないでしょう。」
皇帝「仕方ないな。この部屋は24時間監視する。」
皇帝は新たに騎士を派遣して部屋の監視を行なうよう手配していく。
実はこのカプセルは冷凍冬眠中のグレイ達であった。アルたちがこの遺跡に侵入したと同時にカプセルは解凍作業に入りもうすぐ目覚める事になっている。この遺跡群は全て稼働中であり、侵入者であるアル達に分からないように動いている。
建物が稼働していることを知らせるために明かりを灯し、無暗に破壊されないようしている。
建物を管理しているモノはAIである。AIによってグレイ達は安心して眠る事が出来ていいた。長い眠りから覚めるためには後10日は時間がかかってしまう。その間アル達によって破壊されないために、AIは表に出ることなく静かにしている。
そんな事等全く知らないアルたちは毎日建物内を探索している。この建物だけでも巨大な物であるが他にも幾つもの建物が存在しているのだ。10日やそこらで終わる広さではないのだ。
何年も時間がかかる事が分かるとまずは全体像の確認作業へと移っていった。
遺跡の全容としては、中心地から半径1キロの変形であり、これが計画的に海の中に沈んだことが分かる証拠となっていた。自然災害などで沈んでしまったならば、遺跡が完全な円形を保っている事はかなり不自然であり外層に傷などが無い事も遺跡が意図的に沈められたことが解る。
そんな全体像の把握をしている頃、遺跡内で異変が起こっていた。
それは眠りについていたグレイ達が目覚め、見張りについていた騎士たちを拘束していたのだ。
そしてこの遺跡内にいる研究者たちも次々と拘束されていた。アルや皇帝の元にもグレイ達がやってきた。
皇帝はグレイ達に驚いたが、黙って従うようでアルも黙って従う事になってしまった。
アルは皇帝を見るとなんだかとてもウキウキしている。捕まった事が嬉しいのかと少し誤解してしまうが、それは違っていた。皇帝はこの後グレイ達と話せることが待ちどうしいのであった。
普段しかめっ面の皇帝がウキウキとしている姿はアルにとって子供かと怒鳴りたくなったいた。
そんなアルの感情などお構いなしにアルと皇帝は、まだ発見されていないエリアと連れて行かれた。そこはまさに謁見間であった。捕まっている研究者たちも皆いるようだ。
上座に位置する上段にグレイが表れる。
そのグレイは、他のグレイと違い少し着飾っている。
衣装を見ると女性のようだとアルは思った。何しろグレイは皆同じ顔をしている為に見分けがつかなかったのだ。多少は違うのだろうが一目では判断できないぐらいに皆似ている。
上段のグレイは話し出す。
グレイ「地上の者達よ、この海底都市の事をよく調べたな、少しは進歩したのか。」
そしてグレイにより4000年前の真実が語られていく。
4000年前に起こった悲劇の物語であった。グレイ達は外からやってきた宇宙人であったが、この地の者達に受け入れられて共に生きる事になった。ところが年月が経つにつれて状況が変わってきていた。
この星の者達の寿命がグレイ達と大きく異なり短い事で、初めに約束されていたことが変わってきてしまっていた。グレイ達から供給されている幾つもの魔道具を巡り人同士で戦争が始まってしまった。そしてその戦争の影響がグレイ達も降りかかり、何年も戦争を続けていたという。
そしてグレイ達は悩んだ末に海底に都市を沈め、眠りに着く事になったという。眠りに着く事は時間稼ぎだと説明された、別の星に移住するためには準備が必要でその間は眠るのだという。
このグレイ達の寿命は長いようだが永遠ではない。そしてグレイ達に人数はかなり少ない。
この遺跡内に眠っていたグレイ達は11000人であった。これがこの種族の全てである。
アルたちは、これほどの文明を築いた者が滅びる事があるのかと疑問を持ち質問していた。
グレイはかなしそうな表情をしながら語り出す。
グレイは遠くの星で戦いに敗れこの星まで逃げて来たという。
この星に到着するまでには長い年月と多くの同胞が命を散らせていた。
この星に到着後も数を減らせて行ったという。
そして星の元の住人たちは戦争に没頭していく中、一つの事が起きる。
地上のある国が、グレイ達の拠点(都市)を襲い、占領したことで地上の者達のバランスが崩れていったという。グレイ達の兵器は桁が二つは違っていた。地上の者達はその国に次々と滅ぼされるか降伏していった。そんな状況を黙ってみている事が出来なかったと事もありグレイ達は戦争に介入していく。グレイ達は本気で介入したことで、戦いはグレイ達が一方的に勝利してしまった。
グレイ達は、この星のものたちはまだまだ時間が必要だと判断した。人々がもっと賢く共存できるまでになるには時間がかかると判断したのであった。その結論として海底に沈み眠りに着く事が答えであったという。
海底に沈む前にはグレイ達の痕跡を出来るだけ残さないために回収していったというがやはりすべての物を回収する事等不可能だったようで、一部情報と遺物が残っていしまった。
その遺物やおとぎ話しによって今回の海底遺跡発展につながってしまった。
グレイ達のAIから報告を受けている為に全て分かっているとグレイは説明をしてくれた。




