263話 奇襲
カインは山間で待ち構えている軍の一つの後方迄忍び寄っていた。
カインを含めた6人は、ハンドサインで会話をしている。
今回の作戦は、ローマン帝国軍が山間に侵入した後に後ろから奇襲すると言う物であるが、コルテア王国軍がローマン帝国軍を攻撃する前にカイン達は攻撃しなければないために、カインと傭兵、そしてローマン帝国と時間をきっちり決めていた。ローマン帝国が山間の街道に入るのは昼調度としていた。ローマン軍全体が街道に全てはいるまでには2時間はかかるだろう。敵であるコルテア王国軍は、街道を封鎖するためにローマン軍が全て街道内に入らなければ攻撃はしない。その為に攻撃は2時間後となっていた。
ルビー「後30分で14時。」
カイン「了解。」
ガイス「今のうちに何か食べるよ。」
カイン「みんな腹半分にしとけよ。」
「「「了解」」」」
そして14時になるとカイン達6人は無言で敵に向っていく。足音すらさせないカイン達は無言で敵を切り殺していく。敵も叫び声さえ上げることなく倒されていく。その為に敵であるコルテア兵たちはカイン達に気付く事が遅れた。
同時期に山間の向かい側で戦闘が発生したことが分かったために、興味は山間の下と山間の向こう側に集中してしまっていた。その為に自軍の後方がかなりおろそかになっていた事もあり、無言で戦闘をしている事で気づく事が出来なかった。
カイン達は、一振り一殺で、敵兵を殺している。もう10分以上敵に気づかれてもいない。1秒で二人を殺している。剣を一振り一人、返す剣でもう一人も殺している。
6人でもう1000人も気づかれずに殺していた。だが等々敵に気付かれてしまった。
「ててて、敵襲ーーーー、敵襲ーー。」
コルテア兵は一斉に後方を見る、そしてその光景に兵達は唖然としてしまっていた。多くの兵の骸が転がっていたんだ。驚かない方が驚きだ。
気付かれてしまったカイン達はもう無言でいる必要もなくなった為、声を出しあって敵を倒すことに変更していた。
ルビーは、これで自由に戦えると嬉しそうに微笑みながら剣を振り回している。
ミールも走りながら笑っている。
ガイス、スミス、ユウレイは今までと変わらずに一振り一殺を行なっていた。
そしてカインは、今迄無言だった鬱憤を晴らすように一人で騒ぎながら斬り殺していた。
カイン「おりゃー、おりゃおりゃおりゃぁぁぁ。」
だがまだ敵は多い、敵襲を喰らってしまったコルテア軍であるが、1万の兵の内まだ8500は無傷である。その為に山間の街道側の兵たちは遠くの出来事のように感じている。その兵たちには最も重要な仕事が目の前に待っているのだ。後方の騒ぎを気にしている事はなかった。そして下の街道を通過しているローメン兵が駆け足となってる事でコルテア軍は攻撃の指示を出していた。
一斉に弓矢が放たれローメン兵に降り注ぐ。
数千もの矢はローメン兵を襲う。だがローマン兵に矢が刺さっている者はいない。ローマン兵は木の盾を頭上に掲げていた。山間からの攻撃は弓矢か投石以外に考えられないために、その対策を取っていただけであるが、コルテア軍はローマン帝国兵がほぼ無傷である事に驚き戸惑っていた。
山間の攻撃は奇襲であり、こちら側が一方的に攻撃するはずであったからだ、まさか気づかれているとは思ってもいなかったようだ。
そして罠に嵌めようとしていた所が逆に自分たちが罠にはまり壊滅の危機に瀕していた。
カイン達は順調に斬り殺しまわっている。傭兵たちもグリフォンを使い逃げれないように敵1万を囲み殺しまわっていた。
下を走っているローマン兵たちは、皆必死の形相で駆けている。
兵「盾が重い、もう走れない。」
兵2「これ出口まで走って戦うんだよな。むむ無理だーー。」
兵3「もう限界だ。」
ローマン兵たちは頭上に盾を持ち上げながら走っている為に体力の限界に近づいていた。これでは街道出口の5000の兵を蹴散らすことは出来ないだろう。
一緒に走っている(馬で)将軍は、少し考えていた。これでは兵たちは戦っても敵に殺されるだけと判断をしていた。ローマン帝国軍の兵たちは歩兵がほとんどあり馬に乗っている者は200騎程度しかいない。
200騎で街道出口に突撃で穴をあける事が出来るかを考えるが、今のローマン兵では無理と判断していた。馬に乗っている騎士たちは皆新米の騎士達であり、5000もの兵を目の前に僅か200で突っ込む事等出来なそうである。
仕方なしに両山間の戦いが終了するまで5000の兵と睨み合いをする事を選択する。
カイン達は6人は今バラバラに行動している。一人一人が強者であることから纏まる必要がないのだ。自分の得意な戦い方をするために一緒に居ない方が好きに戦う事が出来る。
カインの妻であるルビーは、カインのように一振りで斬り殺す事は無く、最小限の動きで敵を倒している。両手に細い剣を持ち、敵兵の首筋にスッと剣で斬っている。首を斬り飛ばすのではなく、動脈を切っているのだ。
剣を突くような感じでスッと数センチ切りだけで兵達は崩れ落ちていく。
リビーの剣技は芸術的であった、踊っているように舞い、動脈や腱など人の急所を突き動けなくしている。
カイン「おりゃーー、お前ら弱すぎだー。」
カインは独り言を喋りながら敵兵を切り殺していた。
カインを阻止しようとしトリの騎士がカインの前に立ちはだかる。
騎士「好き勝手にやってくれたな、許さん。」
カイン「おッ少しは出来そうだな。」
カインは、騎士に向って剣を振り下ろすが、騎士はカインの剣を受け流した。
騎士はカインの剣を受ける事をしなかった。受けていればそのまま真っ二つにされるだけと分かっているからだ、カインの剣は強引であり力の剣である。下手に受ければそのまま真っ二つなのだ。
カインの剣の対処としては避けるか受け流す事でしか対処できない。
この騎士はカインの剣の質を見極めているようで、きちんと受け流しを行なっていた。
カイン「おッ中々だな、それならこれはどうだ。」
カインは、剣を横一線で振り抜く。カインの剣は刃渡り120センチもある剣だが、殺傷範囲は2Mを越えている。カインの魔力が剣を伸ばしているのだ、一見ではそんな事は分からないために皆初見で殺されている。
横に振り抜かれたカインの剣だが、騎士は其れも転がりながら避けてしまった。




