260話 要塞奪取
アルたちは都議次と襲い掛かってくるハマ王国の兵たちを拘束していく。
トム「アル、このままでいいの。」
アル「敵が来ているんだしかたないだろう。」
トム「でもこのままだと、敵兵を全部拘束しちゃうよ。」
アル「・・・・・・拙いよな。」
アスカ「拙いでしょう。カイン様たちが要塞攻略作戦を実施する前に要塞の兵士がいないんじゃ落としたも同じになるわよ。」
アル「仕方ない、俺は要塞に行って向こうの最高司令官と交渉してくる。兵士を戻す代わりに何か貰ってくる。」
アルはトム達を残して急ぎ要塞に1人で向かっていった。要塞に最高司令官が不在な事等知らないアルは、目立つようにドラゴンで要塞内に降り立ったのだが、要塞内には最低限の兵士しかいないために、もう大パニックとなってしまった。
アルは、要塞内で穏便に声をかけて交渉しようとしていたが、その目論見は脆くも崩れ去りアルを見ただけで逃げていく。そして要塞には誰も居なくなってしまった。
アルが要塞を落としてしまったのだ。
困ったアルは、仕方ないと割り切り要塞内を散策していく。
要塞内は普通の要塞であり特に変わった事もなく。しらけた感じで中を見ていく。
この要塞は5万もの兵士たちを収容できるだけあってかなり広く機能も充実している。要塞内には、小さな牧場まであり一つの街になっている。だが今はゴーストタウン状態となっているが。
一通り見たアルは、一度丘の上へと戻り拘束してしまった敵兵たちの中で一番偉い者を連れてこされる。
トム「アル、要塞に人を出しておくよ。一応今はギルバートの物だしね。」
アル「・・・・・拙いよな。」
トム「拙いでしょう。」
アル「・・・・・」
成り行きとはいえ、理想的なやり方で要塞を落としてしまったのだ。兵を全て拘束して無傷の要塞を手に入れている。カイン達の作戦では、要塞は無傷で手に入れる事は無理だろう。それが全く関係のないアルたちが敵を要塞から引きずり出し、兵を拘束しそして要塞に侵入して無傷で手に入れる。これほど鮮やかな作戦はないだろう。
それを成り行きで行い手に入れてしまった事でローマン帝国の面目は丸潰れとなる。気が重くなっていくアルであるが、落としてしまったのだから仕方がない。ローマン帝国に要塞を譲り早々に立ち退いてしまおうと思っていた。
アル「あなたが要塞の最高司令官ですか。」
将軍「・・・そうだ、見事な手並みであった。完敗だ。」
アル「・・・・・・・いやーあれは成り行きなんだ。ローマン帝国が要塞を攻略作戦を行なうのだが、その見物の為に丘から見ようとしていたんだ、それがわんさか敵が来るので拘束していっただけなんだ。」
アルは少し悩んだ、本当の事を伝えるべきか、それとも作戦として落としたことにすべきと一瞬だけ悩んだが、カイン達の手前作戦とはいう事が出来なかった。」
将軍「・・・・まさか。成り行きで要塞が落とされたのか。」
アル「すまん。」
アルはなぜか将軍に謝っていた。将軍は要塞に絶対の自信を持っていたのだろう。普通に軍が迫っていれば絶対に要塞から出る事は無っただろう。
アル「将軍、相談なのだが、拘束している兵士たちは解放しよう。」
将軍「何、解放してくれるのか。」
アル「あー、解放してもいいぞ。要塞をローマン帝国に引き渡した後に解放する。」
将軍「・・・・それならば何処か他の場所に解放をお願いする。高級軍人は祖国に戻るが一般兵たちはハマ王国ではなく何処か他の場所にしてもらいたい。」
将軍の話を詳しく聞いていくと、ハマ王国はかなり偏った考えの王であると言う。負けてしまった兵たちは国へ帰れば、捕虜となった事で一段下の扱いになり戦闘奴隷等に強制的に従事させられることになると言う。アルは将軍たちは大丈夫かと問うと、将軍は苦笑いを浮かべながら、責任を取る者がハマ王国には必要であり、他の者には任せられないと言い切っていた。
何とも人の命が軽い異世界だが、ハマ王国はそれに輪をかけた命の軽い国である。
そんな話を聞かされてしまったアルは、この将軍を何とかしてやりたいと思い。色々と考えてしまっていた。
そしてもっとも簡単な解決策にアルは至っていた。要はハマ王国が無くなればいいのだ。
物凄く単純だがハマ王国はかなり広大な領土であり、人口も多くローマン帝国がいまだに占領できな程の強国なのだ。アル達だけでハマ王国を滅ぼす事かかなり無理がある。そこでアルは将軍に話を持ちかける。兵士たちを助けるために独立をしないかと話を持っていったのだ。兵士思いの将軍はかなり悩み、ハマ王国への義理と天秤にかけていた。
将軍は幼い頃からハマ王国軍人として先代王から仕えている。今の王へと代替わりしたことで厄介払いをされてこの要塞に着任していた。そして長年この要塞で防衛に任に当たり守ってきていた。
ハマ王国内において要塞は重要施設であるが、誰も行きたがらない場所でもあった。辺境にあり戦死する確率が高く、高位の貴族達は要塞には一人もいない。
アルの説得もむなしく将軍は独立はしないと言い切っていた。ハマ王国に生まれ、そこで育った将軍はあくまでハマ王国人なのだ。もしハマ王国が滅ぶことになってもハマ王国人として一緒に滅ぶと言う。
アルは、将軍の意志を曲げる事が出来ないと分かり、将軍をハマ王国に還すことにした。
もし将軍が殺されるような事になればアルはハマ王国を滅ぼしてやると心に誓っていた。
数日後、アルはカイン達に会っていた。
アル「カイン兄、ごめん。」
アルはカイン達に謝っていた。成り行きで要塞を落としてしまった経緯を話し、ひたすら頭を下げていた。
将軍「アル殿、我らが準備に時間がかかってしまったのです。アル殿は悪くありませんぞ。」
カイン「アルだしな、仕方ない。」
傭兵「でその要塞は誰の物なんだ。」
将軍「それは落とした者に所有権がある。アル殿のものだ。」
アル「俺は要らないローマン帝国に譲る。」
将軍「ありがたい話だが、そう簡単には行かないだろう。もしアル殿が要塞をローマン帝国に渡すとなればそれ相応のなにか領土をローマン帝国はアル殿に渡さなければならない。アル殿も下手な飛び地よりあの要塞の方が使い勝手が良かろう。ローマン帝国の皇帝陛下もアル殿であれば要塞の任せると思うぞ。ローマン帝国に伝令を出すので少し待っていてくれ。」
アルは将軍からの回答待ちとなり当分の間は要塞を拠点とする事になってしまった。




