26話 村の惨劇
アルは今各村を周っている。
視察を兼ねた遊びだ。トムとアスカ3人で視察にでてきた。
毎日毎日、陳情事で商人たちが押し寄せてくる。蒸留酒を手に入れようと毎日くるのだ。アルも疲れて息抜きとして村の視察である。
アル「いい天気だねー。」
トム「ホント部屋で眠りたいよー。」
アスカ「部屋にはいられないわよ。周りがうるさすぎよ。」
アル「だよねー。」
トム「あれ、あれが村でしょう。」
アル、トム、アスカの3人は村へと入っていく。よくある村の風景を観察しながら進んでいく。
皆農作業を行ない。アルたちのことなど誰も見向きもしていない。
そんな風景を見ながら進んでいくと子供たちが何やら固まっている。
よく見ると子供が倒れている。
アルは子供に駆け寄る。「如何した何があった。」
子供達「「「「・・・・・・」」」」
アル「はっきり言え。」
子供「遊んでいて、殴ったら動かなくなった。」
アルは子供に顔を近づける。もう息をしていない。死んでいる。
アル「トム、村長に連絡してくれ。」
そして村長と大人たちが集まる。
村長「りょ、領主様」
アル「この子の親はどこに。」
村長「・・・・・・・・おりません」
アル「ん、戦争で死んだのか。」
村長「・・・いいえ。元からおりません。孤児です。」
よく見るとかなり痩せている。
アル「誰が子供を殺した。」子供たちを睨みつける。
子供たちは一斉に一人の子供を見る。
アル「お前がこの子を殴り殺したのか。」
子供「・・・・俺、孤児は人じゃないって・・」
村長「ばかものーーー、そんな事、誰もいっとらんーー。」
突然の大声で子供は委縮してしまう。
アル「村長、この子供の親は?」
村長「・・・・私の孫です。」
それはひどい話だった。この村での孤児の扱いが家畜以下の扱いであった。村長が孤児を養うという事で孤児たちを集め、農作業をやらせていた。やせ細った孤児たちが10人も粗末な小屋に住んで居た。
今までも何人もの孤児がいじめられ、殴られ殺されていた。食べる物も家畜の食べ物だ。
アル「トム、村長一家を捕らえろ。アスカ、騎士と兵の派遣を要請だ。」
トムが行動しようと動くと村長が言い訳をする。
村長「今までこのやり方が認められていた。今後は気をつける。」
アル「はぁ、お前何言ってんだ。リーフ王国で殺人が認められているわけないだろが。」
村長、「ど、奴隷はひ、人ではありません。」
アル「あ”っ、奴隷だと、孤児は人だ。奴隷はリーフ王国において戦争奴隷と犯罪奴隷しかいない。」
村長「はっ、は犯罪奴隷でした。たた食べ物を盗み、どど奴隷としたのです。」
アル「証書は、奴隷証書を持ってこい。今すぐにだ。」
村長「・・・・・・・・」
その後、騎士達が村に駆けつけ村長一家拘束した。村を調査した所、かなりいびつな村であった。
村長一家はクレイン一族の関係者(遠い親戚)であった。
この村は、村長の権力で協力者を優遇している。協力者以外は小作人として重労働を課していた。
アル「村の人口430人で村長一派が50人、他380人が村長の為に働いていたという事か。孤児は含まずか。」
騎士「そのようです。」
アル「他の村も早急に調査隊を出せ。今日中だ。」
騎士「はっ。」
調査隊は町と村、アル領内、カイン領内を徹底的に調査を行った。
そしてこの村ほどひどくはないが孤児の扱はかなり酷い物であった。
アル「まず、村長一家は犯罪奴隷とする。その協力者は犯罪に応じて重労働の刑5年から10年とする。」
村長「まっ、待ってくれ。孫が殺したんだ。私は殺していない。無実だー。」
アル「そうだな。孫は殺人者だ。親も監督責任がある。祖父には無いな。」
村長「です。そうです祖父にはありません。」
アル「だ、が、な、村長はな村の管理責任があり、不正を見逃せば罰せられるんだ。一番罪の重いのはお前だ。公民として模範にならなければいけない立場なんだよ普通より罪が重いんだよ。」
アル「町の牢に入れろ。関係者全員だ。」
アルは村人たちを睨みつける。ギロリッ。
村人たちは全員が下を向いている。
アル「良いか、孤児は人だ。ただ親がいなくなっただけだ。家畜のような扱いは犯罪となる。今後気をつける事だな。今後の調査で分かったら罪が重くなるぞ。孤児たちから聞き取りも行うからな。罪を軽くしたいのなら騎士達に協力して正直に話せよ。」
アル、トム、アスカは孤児たちを連れて村を出ていく。残された村人たちは真っ青な顔をしている。
孤児を連れたアルたちは町の代官屋敷に着くとまず風呂に入れて綺麗にする。そして食事をさせる。怪我なども治療させる。
侍女「アル様、孤児たち全員が怪我をしておりました。」
アル「えっ全員が・・・」
侍女「信じられません。あんな扱いをされてよく生き残っていました。」
孤児たちが安心して暮らせるように数日様子を見る。
孤児たちも少し落ち着いてきた。ビクビクとした行動も少なくなり、笑い声も聞こえるようになっていた。
だが孤児たちは、遊ぶという事を知らなかった。
トムとアスカが一緒に遊ぼうとしたのだが、遊ぶという行為が理解されなかった。今まで遊んだことが無かったのだ。
トムとアスカは泣きながら遊びを教えていた。かくれんぼ、鬼ごっこ。縄跳びと孤児の子供たちは段々と笑顔で笑うようになっていった。
そんな孤児たちも、他の村から続々と集まってくる。町、村から総勢120人も集まってしまった。
戦争の影響もあったようだがアル領とカイン領だけでこの人数だ。全体の領地ならばこの倍はいるだろう。アルはレビンに手紙を出す。早急な対応をお願いするためだ。
とりあえずは孤児院などあるわけもないので、この代官屋敷を臨時の孤児院とした。
この館は、広さだけはある。3階建ての館は1階で業務を行い。2回はパーティーや客人を迎えるための施設(部屋)で3階は代官の居住スペースとなっていた。
アルは1階は業務を行うためそのまま、2階と3階一部を改装する事にした。
パーティールームなど大きな部屋は食堂と浴室、厨房を作り、後は全て部屋と造った4人部屋、6人部屋、ベビー部屋、単身部屋とかなりの部屋数となっている。今後増えることを見越して作っている。
(二人部屋×4、4人部屋×20、6人部屋×10 単身部屋×5)
アル「かなり狭いな。」
トム「仕方ないよ。後は庭に別に作るしかないよ。」
アル「ギルバート領でも引き取るみたいだから大丈夫かな。」
トム「ギルバート領は孤児なんていなかったもんね。」
アル「そうだね。600人の人口で殆ど親戚だし万一親が死んでも誰かしらが引き取って育てたのかもね。」