257話 東の情勢
アル達の旅はゆっくりだが、順調に進んでいる。
時には魔物討伐、またある時には盗賊討伐をしながら東へと進んでいる。ローマン帝国内で急激にカイン一行の噂が広まってきている。
カイン達は全く知らない事だが、かなり広まってきていた。
そんな旅を続けていたアル達だが、ローマン帝国の東地方に入るとローマン帝国軍人の姿が多くなってきていた。
今、ローマン帝国は東の蛮族と言われている騎馬民族と激しい領土争いを行なっている。
この蛮族は、遊牧民族であり一定の場所に定着していない事でローマン帝国も手を焼いている。
ローマン帝国が蛮族を発見しても数日後には別の場所に移動している為に軍を送っても空振りとなる事が多く、中々倒すことが出来ないでいた。
遊牧民族である蛮族も昔からの生活を続けているだけであり、ローメン帝国がこの東に来る前から同じ生活をしているのである。ローマン帝国が悪であり、自分たちはただ昔からの生活をしているだけなのだ。
有るとしては遊牧民族に理がると思っているが、立場的にはローマン帝国側である為に何もいう事はしない。
ローマン帝国はこの蛮族(遊牧民族)だけではなく、東の国数か国と同時に戦争を行なっている。
その為、ローマン帝国の軍事力は東に集まっている。
アルは何故、此処までローマン帝国が領土の拡大に熱心なのかを考えていた。大陸の半分を支配しているローマン帝国は、大陸で一番の強者である。大陸の制覇を求めている事は分かっているが、西に存在しているリーフ王国やロング帝国のように同盟関係に近い状態であれば大陸制覇は直ぐにでも出来そうなのだ。それを行なう事をしないのだ、何か他に訳があることは分かっているのだが、その訳がいまだに謎である。何とか知りたいと幾度か探りを入れているがその糸口さえわからなかった。
1.ローマン帝国は、ただ単純に大陸統一を狙っている。
2.ローマン帝国はこの大陸内にある何かを探している。
3.ただの蛮行、何も考えていない。
アルは3はないなと思いながら、2が有力であると思っている。何かを探しているのであればこのこの無謀ともいえる数か国との戦争も頷ける行動ともいえる。只の大陸制覇であれば一か国一か国、一ずつ潰していく方が確実である筈だ。
その事が分からない皇帝ではないと思っている。
この大陸を見てみると西には、リーフ王国やロング帝国のようにかなり文化の進んだ国が多くあり、南はローマン帝国が殆んどを支配している為、文化的にも可もなく不可もなくな状態である。北には数か国の国があり、いまだローマン帝国と争っているがそれ程、戦闘行為は発生していない。さすがのローマン帝国も東の数か国と同時には相手に出来ないんだろう。
そして今戦争中まっただ中の東地方だが、遊牧民族と数か国の戦争は、ローマン帝国が少し有利な状態だ。これは遊牧民族が他の国と全く連携を取らず単独戦争を行なっている為、今のところローマン帝国が有利に戦争を進めている。遊牧民族と東の国が万一連携を取りローマン帝国と戦争と行っていればローマン帝国は今頃は撤退していた可能性が高い。東数国はローマン帝国に対して防衛線を繰り広げている。
基本守りだが、遊牧民族はローマン帝国内に入り村や町を荒らしている。遊牧民族は数百の部族があり、国を名乗ってはいない。各部族の集まりは有るが、部族は独立している為偶に滅んでしまう部族もあるようだ。
この遊牧民族を一つに纏める事はかなり難しい作業である。遊牧民族同士でも争う事もあり、部族が滅びるまで争い、引く事を知らない蛮勇なのだ。
そんな事を考えているアルであるが、今滞在中の街を散策していると軍人(騎士)と傭兵が争いを起こしていた。
普通は雇われている傭兵がローマン帝国軍人と争うことしない。雇い主ともめていい事は一つも無いからである。それをこんな街中で争う事はただごとではに事が分かる。
傭兵がローマン帝国の騎士をボコボコにしていた。そこにローマン帝国の騎士が駆けつけて助けようとしているがその騎士たちも傭兵にボコボコにされている。そして又援軍(騎士)が来るがそれも返り討ちとされてしまっていた。
カインが見かねてローマン帝国と傭兵の間に入る。
カイン「やめろー。」
カインがカッコよく止めようとしたが誰も聞いていなかった。カインは少し恥ずかしそうにしていたが、後ろから殴られ、恥ずかしさを紛らわすために、その殴って来た騎士を殴り返してしまった。
ローマン帝国の騎士であったが今のカインには、そんなこと関係がない。殴られたら殴り返す。
カインの掟なのだろが、余計に争いを増長させているだけになっている。
そして傭兵一人とカイン一人対騎士たちとなっていた。
傭兵とカインは言葉を交わしてはいないが、連携を取りローマン帝国騎士たちをボコボコにしていく。
もう100人以上をボコボコにしている。アルたちは見ているだけであった。
応援に駆けつけている騎士達であったがさすがに分が悪いと思ったのか、お偉いさんを連れて現れていた。
将軍「何事か、鎮まれーーー。」
将軍の大声で騎士たちが引いていく。カインと傭兵も周りに敵がいない事で戦闘を行なっていない。
ローマン帝国の将軍は、傭兵に対して謝罪していた。
傭兵とローマン帝国騎士の間での争いは、ローマン帝国騎士が傭兵に渡す金を横領していた事で傭兵が怒り騎士をボコボコにしていた。その事実を将軍が知った事で傭兵に対して謝罪をしている。
アルは中々出来た将軍と見直していた。こんな街中で謝罪が出来る貴族はいない。民たちが大勢いる中で貴族である将軍が一介の傭兵に頭を下げるなど普通ではありえない光景なのだ、それを臆面もなく謝罪できるこの将軍はかなりん出来者だろう。
そして何故か傭兵とカインと将軍は意気投合していった。民衆の見守る中3人は笑いながら歩きだし。一つの酒場へと入っていった。3人は、笑いながら酒を飲み、肉を食べながら大笑いしながら仲良く飲んでいく。
周りの者達は、この3人に何も言えずにいる。騎士たちは酒場の周りを警備している。そしてアルたち一行は、家臣達は自由行動、アルたちは同じ酒場の別テーブルで食事をとっている。
カインと傭兵、将軍の3人は普通に話しても十分に聞こえるのに大声で話をしている。




