246話 ガリレオ王国の喜劇
アルはかなり忙しい。ギルバート王国の事もあるが、今一番の事はガリレオ王国が揉めている事だろう。何で揉めているのかそれは、ガイア大陸に多くの貴族達が移ってしまい、今ガリレオ王国には若い世代しか残っていない状態となっていた。復讐の為にガイア大陸へ行ってしまったのだが、ガイア大陸の10分の3を支配するようになってしまい。帰る事が出来なくなってしまっているのだ。帰れないだけではなくガリレオ王国からさらにごっそりと抜けて行ってしまっている。そんな状況でまともに国の運営が出来るはずもなく。ガリレオ王国は存亡の危機にあった。
そんな状況を助けてくれたのがギルバート家であった。国の重鎮や有力貴族が抜けていく状況で、人の補充や、ゴーレムの貸し出しをしてくれたのがギルバート家である。もう足を向けて寝られないと思う王妃であった。そう今のガリレオ王国には王が不在なのだ。王はガイア大陸から戻ってきていないのだった。何度手紙を出してももう少しという返事しか返ってこないのだ。
ガリレオ王国の王妃は、毎日ハードに仕事を熟している。ガリレオ王がガイアへ旅立ってからは王妃が国の舵取りを行なっている。城の家臣たちの多くが、新しく雇った者達だ。この者達も必死で仕事を覚えているが、国の運営を任せる程にはまだまだである。
王が抜け、宰相がいないこの国は、本来であれば真面な運営が出来ないだろうだが何とか国としての体裁を整えガリレオ王国としてやっているのは王妃の力とそれを支えている貴族のご婦人たちであろう。
貴族と騎士がいなくなり、女だけとなったこの国で、ご婦人たちは立ち上がった。
男の仕事であった政治を行ない。騎士の仕事、税収の計算、外国との付き合いとありとあらゆる事をご婦人たちが変わって仕事を行なっている。
最近ではガリレオ王国には男がいないと噂になっている。まぁ半分事実であることでガリレオ王国は否定も肯定もしていない。
それでも人が全く足りていないところをギルバート家が埋めてくれている。人はギルバート家も枯渇している為に最低限の人数を派遣してくれているが、ゴーレムや機人の派遣はもう神かと思う程であった。
機人は、政治のプロ並みの知識と判断力でスムーズに進み、ゴーレムは壊れてしまった街道や、王城の修繕に役立っている。今ガリレオ王国に職人も少ない状態なのである。
そして素人の女性ばかりであるために、仕事の進み具合も遅くなっているのである。
このガリレオ王国内での一番の問題は跡継ぎがいないと言う事だろう。ガイア王国によって王太子と王子が殺されてしまい。ガリレオ王国を継ぐ男がいないのだ。王の子供はまだいるが全てが女しか残っていない。そのためには王と王妃の間に子を儲けるしか解決策がないのだが、肝心の王が不在となっている。
王妃の怒りは臨界点に達していた。
そしてついに行動へと出てしまった。ギルバート家の支援でワイバーンのスキルを貰った王妃は女性騎士を連れてガイア大陸へ渡っていった。そこ迄はまぁ普通にあり得ると思うのだが、そこからが悲劇であった。王は復讐の為にガイア大陸へ渡り、見事復讐を果たして多くの領土を獲得する事が出来た。素晴らしい話である。だが王は、癒しの為に現地妻と言うべき者を囲ってしまっていた。王自身は癒しのためであり決して王妃を裏切るつもりは少ししかなかった。だがタイミングと言う物があり、まさに最悪のタイミングであった。
王妃がガリレオ大陸に到着して、急ぎ王の元へと向かった、必死に止める王の家臣たちを振り払い王の元へと着いたのだが、王は裸であった。そして隣には見知らぬ女がいたのだった。
そしてそれからは修羅場と言っておこう、何も言葉に出来ないのが残念だが、王は弱かった。
翌日、王はパンパンに腫れた顔で大人しく政務を行なっていた。王妃は何事もなかったように知らん振りをしている、家臣たちは怖くて聞く事が出来なかった。
そして王妃が家臣たちに対して最も恐れていた言葉を告げてしまった。ガイアの地で調査を行ないます。万一妻たちを裏切伝手いた場合は、爵位剥奪も在りえますと告げていた。ガイアにいるガリレオ貴族達全員が身震いをしていた。妻を裏切っていない貴族が一人もいなかったのだ。みんな見事に現地妻を娶り楽しい日々と送っていたのだ。
そしてこの騒動はガリレオ王国だけではなくリーフ王国とロング帝国の仲介で話し合う事となった。ガリレオ王がリーフ王国に泣きついたのだ。だがリーフ王は嫌がりロング帝国と共同で仲介を引き飢える事になっていた。
対する王妃側はギルバート家を間に挟み交渉をお願いしてきた。
ギルバート家も最初は腰が引けていたがリーフ王国とロング帝国が王側に着くと分かると王妃に味方すことにした。
壮大な夫婦喧嘩であるが、大国を交えた事であり民や商人たちの話題をさらっていた。
ガリレオ王国はガイア王国の被害者として同情的な見方がされていたが、この夫の現地妻問題でそれが全て吹っ飛んでしまっていた。夫の浮気が国を亡ぼすかと話題はもう民たちの笑い話となっている。
多分だがガイア王国の貴族達は戻ってきても庶民にも馬鹿にされる未来しかないだろう。
そんなガリレオの男たちは、以前のままでありそれ程追い込まれているとは全く思ってもいなかった。ガリレオ王国に到着した男たちに向けられている白い眼を目の当りにしてこれは拙いと思ったのだろう。しおらしい態度となっていた。
そして、調停役のリーフ王とロング帝国宰相がガリレオ王国へとやってきた。ギルバート家は誰よりも早く到着していた。
話合いは、最初から躓いていた。リーフ王国もロング帝国も王たちの味方をして妻たちをなだめようとしているだけであり、何ら対策などを出してこなかった。その為に妻たちは、無言を貫いていた。
そんな中、アルがガリレオ王に質問をする。
アル「ガリレオ王はこれからどうするかを考えているのですか。」
王「どうするかとはこのガリレオ王国とガイアの領土の事か。」
アル「そうです。このガリレオ王国とガイアの土地を同じと考えるのかそれとも別と考えているのかお聞きしたいですね。」
王「余は一緒と考えているが。」
アル「それはさすがに無理があるでしょう。今の状態を延々と続けるのですか。」
王「いや、続けることは出来ない。余がこのガリレオ王国に戻り指揮を取るようにする。」
アル「そうですか、ならばガイアの領土は誰が見るのでしょうかそれも広大な領土です。」
王「・・・・・・」