22話 クリス、ラーク領へ
クリスは緊張している。
馬に乗りラーク領主館へ向かっている。
ラーク領との交渉は今占領している領地を手放なさせる事、ギルバート男爵の保護(寄子)に入れる事。この2点は確実に行わなければならない。
騎士「クリス様、着きました。」
クリスト護衛騎士6名が領主館の門に迫る。門前では領主と家族使用人たちが勢ぞろいしている。
領主「ようこそお出で下さいました。ラーク領、領主マルボロ・ラークです。妻のメイヤと嫡男のローラン、長女のカーラです。」
クリス「初めまして、ギルバート男爵家嫡孫 クリストフ・フォン・ギルバートです。」
領主「館をご案内いたします。」
クリス「ありがとうございます。」
領主の案内でクリス達は館に招かれる。一度休憩のための客室に通される。
騎士「歓迎させていますね。」
クリス「そうだね。クレイン軍を撃破した事は、ラーク領でも噂になっているからね。」
クリスは1時間ほど休憩した後、メイドに案内され応接室に通される。
領主「改めてご挨拶いたします。ラーク領 領主マルボロ・ラークです。今回はクレイン軍を撃退いただきありがとうございます。」
クリス「改めましてクリストフ・フォン・ギルバートです。」
二人はソファーに座る。二人以外にも領主の妻と嫡男がいる。クリスの方も騎士2名が後ろに控えている。
クリス「先ずは、今の状況説明からさせていただきます。」
ラーク領主はクリスの態度について考えていた。勝者として無理難題を言ってくるのではないかと警戒していた。(下手に出て、難題を伝えるのか、もしくは宣戦布告か。)
クリスの状況説明は客観的な説明であった。ギルバートに別に有利不利は無く事実だけを淡々と説明していく。
「とまぁー、王都で陛下との謁見中にクレイン軍との戦報告が飛び込んで来たのですよ。アハハハ。」
領主「陛下の謁見中ですか。それは又・・・」
クリス「私は隣の部屋でしたが宰相閣下の説明は聞くことが出来ました。いやーびっくりでした。」
領主「さ左様ですか。」(マルボロは、陛下に宰相閣下だと、こんな田舎で陛下だとそんなの知るかーーーと思っていた。そしてギルバート男爵家を恐れた。下手なことは出来ない戦争なんてぜったい無理だ。リーフ王国を相手にすることになる)
クリス「ギルバート男爵家としましては、元クレイン家が占領していた地域はうちが引き継ぎたいと思っています。ラーク領は今現在の領地を守って行ってもらいたいと思います。」
領主「宜しいのですか、現状の今のこの状況で領地を認めるという事ですか。」
クリス「はい認めます。一つ条件があります。ギルバート男爵家の寄子になっていただきます。」
領主「そんな条件で宜しいのですか。」
領主は少しホッとした、飲める条件であった。最悪は領地没収となると思っていた。クレイン軍に負け続け、もう虫の息状態であった事は誰もが解かっていた。ギルバート男爵家とクレインが戦をしなければ自分たち一家は殺されていただろう。
クリス「今のラーク領は領都(町)と村が5つで間違いないでしょうか
ラーク領図
|ーーーーーーーーーーーー|
| 村1 村2 |
|村3 村4 |
| 領都 村5 |
|1村 2村 3村 |
| 4村 5村 |
|6村 7村 8村 |
| 9村 10村 |
|ーーーーーーーーーーーー|
村1から村5までと領都をラーク領とします。1村から10村を新ギルバート領と致します。村の境を領境とします。丁度街道が通っていますから分かりやすいでしょう、後日役人を派遣しますの確認作業を願いします。
尚、布告後3か月の猶予を与え領地移住を許可いたします。」
領主「えっ、領民の移住ですか。」
クリス「ええ移住です。今回ラーク領とギルバート領に別れてしまいます。親兄弟親戚と離れる場合も出てくるでしょう。そのために猶予を与えて好きな方を選ばせます。」
領主はクリスの考えについて行く事が出来なかった。「・・・・」
クリス「南と東はギルバート領と接する事となります。今後の事ですが北と西の領主との関係はどうですか。」
領主「はい。問題はないと思います。敵対している訳ではありません。」
クリス「ホッそうですか、良かった。」
ラークとクリスは一度、休憩に入る。領地についての決定事項を紙に残す為、誓約書を作成する。
領主「何とか生き残れるか。フーー。」
ロー「父上、クリストフ殿をどう見ますか。」
領主「中々の青年だな。あの年でこちらに配慮してくれている中々できる事ではない。」
母「あなた、寄子になってから無理難題は来ませんの?」
領主「まぁそれは分からんが大丈夫だろう。向こうは男爵だ。噂ではかなり景気がいいようだ。うちに援助ぐらいしてくれるかもな。アハハハハ。」
ロー「凄いなー。まだ成人して間もないんだろなー。」
領主「噂では下の次男と3男もかなりの傑物みたいだぞ。何しろクレイン軍と戦ったのは次男と3男だそうだ。」
ロー「あっその噂聞きました。次男は一騎で1000の兵に突っ込んでいったとか。」
領主「まぁ、流石に1000の兵に単騎では行かんだろう。だがかなり強いぞその次男は」
クリス側
騎士「クリス様、おめでとうございます。」
クリス「まだ調印が済んでいないよ。」
騎士「いいえ。もう決定した様な物です。おめでとうございます。」
クリス「でも領主が話の分かる人で良かったよ。」
騎士「ここまで負け続けていますから、生き残り、半分でも領地が残ればラーク家としては万々歳でしょう。」
クリス「そうなのかもしれないけど、生き残れると分かれば欲が出てくるからね。ラーク領主は出来た人だよ。」
クリスはラークから夕食に招待された。調印を済ませ。今日は泊めてもらい明日帰る予定となっていた。
クリス「ご招待ありがとうございます。」
領主「何もありませんが量だけは用意しています。騎士の方々も遠慮なしで食べて飲んでください。」
クリス「お言葉に甘えご馳走になります。お前たちもせっかく用意していただいたんだ遠慮しないでいただこう。」
クリスの言葉で騎士達もご馳走と酒を心行くまで楽しんだ。
ワイワイ、ガヤガヤ
翌日
クリス「ラーク殿、これからも宜しくお願いします。」
領主「こちらこそ、宜しくお願いします。うちは戦で疲弊しています。助けを願う事もあります。どうぞ宜しくお願いいたします。」
クリス「その辺もこちらでも考えましょう。丁度ギルバート領は産業を色々と考えていますから何かラーク領内で出来る事を検討いたします。」
領主「おお、ありがとうございます。」
二人は固い握手を交わし別れた。