199話 妙案
アルは大声をあげて歩いていく。一応は停戦の紛争使者なのだ。
トリックは、ドラゴンがこの地に来たことで大体は把握した、どこかの国の停戦の使者だろうと予想を付けていた。一方のテトラ王国は違っていた。ドラゴン=ギルバードとの認識から援軍と勘違いしていた。
テトラ王国の兵士は追い詰められていた。自領が占領される寸前という事もあり兵士を斬り付けてしまった。正確には停戦合意も何もされてい事で何の問題にもならないのだが、皆が戦いを止めていた事で目立ってしまった。そして敵同士である事で争いが再発してしまった。
アルも見ていたがたまにあるよな、ぐらいの感じであった。
だがこの戦いの再発で多くの命が散ってしまった。それまでは捕虜として捕らえる事を中心に行っていたが、今は殺していく事に変わってしまっていた。そして戦闘が終わった時みは、テトラ軍の殆んどが戦死をしていた。
アルも一度、戦闘が始まってしまった事で静観してる。今何を言っても収まる事は無いと判断をしていた。
アルはトリックに近づいていく。
アル「私はリーフ王国、アルフォード・ギルバートです。貴方はサウストク王国の指揮官ですか。」
トリ「はい、サウストク王国、トリック・メイカーズです。」
アルはまずは勝者である。サウストク王国側と話を進めていく。
アルとしては此処で停戦してもらい、サウストク王国には兵を引いて貰うつもりでいたのだが、トリックの説明を聞いて眉をひそめていく。
それはテトラ王国と滅びた国の貴族も問題か話されたからだ、感情の問題なのだから自分で折り合いをつけるしか解決策はない。幾ら他人が言おうが、本人が納得しなければ何の解決しない事が分かっているからであった。
アルはその貴族達を呼んでもらい話すことにした。
その国は、100年と少し前にテトラ王国によって滅ぼされた国であった。テトラ王国が滅ぼされたミステリア王国に突然侵略をしてきたのだ、ミステリア王国はそれほど大きな国では無かった。こじんまりとした国で王も貴族も平民も身分の垣根は低かった。
テトラ王国に対して侵略に抵抗したが、戦力の違いから負けてしまう事は分かっていた。そこで王は降伏を選んだ。
ミステリア王は、テトラ王国に降伏の条件交渉を行なった。ミステリア王国民すべての者達はテトラ王国民として平等に扱う。
ミステリア王国はこの条件が守られるのであれば、降伏し王国の民と成る。
ミステリア王国国王は、テトラ王国に条件降伏となった。元ミステリア王国の者達は王が決めた事を素直に従った。条件降伏と言う事もありテトラ王国としても元ミステリア王国王を含め、王国民として平等に扱った。
王は侯爵となり、元ミステリア王国貴族は、一つ爵位をおとしてテトラ王国貴族となった。それに合わせて領地も半分に削られていた。
それでも占領支配されるよりもましな暮らしが出来ていたのだが、10年前にある騒動が生きてから変わっていったと言う。もとミステリア王の子孫がテトラ王国の社交界で見世物のように扱われ始めたのだ。侯爵と言う立場ではあったが、父が早死にをしたために子供であるまだ14歳の少女が爵位を継いでいた。それを貴族達がからかい半分で始めた虐めであった。少女が爵位を継いだことが面白くなかったのかは分からない。だがそのいじめがエスカレートしていった。元々テトラ王国貴族ではないとの認識から虐めても誰も助ける者がいなかった。
そして少女は自殺してしまった。自殺をする前に少女はテトラ王国貴族すべてに手紙を送っていた。自分の受けた仕打ちとミステリア王国との条件降伏の内容が綴られていた。
そしてテトラ王国は虐めを行なった貴族達に対して何の罪を問う事をしなかった。
その事で、侯爵家は、テトラ王国に対して抗議をしたが黙殺された、その後に後を継いだ弟の侯爵に対しても虐めを始めていた。侯爵は屋敷に閉じ籠り表に出る事がなくなってしまった。
元ミステリア王国の貴族の多くが、テトラ王国貴族より下に見られ、何らかの理由によって改易や爵位を下げられている。
サウストク王国の紛争問題も貴族達が騒ぎ進軍する事に決まったのだ、そして多くの兵は元ミステリア王国貴族達が出している。
アルはこの事実を全く知らなかった。まぁ普通は知る事は無いだろう偶々停戦の仲介を行なう為にこの地に来たのだ。知るすべはないだろう。
アルはテトラ王国に失望した。もっと真面な国だと思っていたからだテトラ王国はリーフ王国とも揉めていた。ダンジョンが国堺にある為に両国がダンジョンは自国の領地だと主張していたからだ。
アルは国境問題を解決するためにテトラ王国まで来たのだ。そこでアルは妙案を思いついた。
トリックたちにはこの地に留まり進軍しないように伝える。
アルは、サウストク王国の代表としてトリック、元ミステリア王国の代表としてドリスを連れてテトラ王国王都へと向かった。
テトラ王国王城ではドラゴンが飛んできたことで軽いパニックとなっていたがアルは気にせずに城の中庭に降りたいた。
テトラ王国もドラゴン=ギルバートと思っていたので,丁重にアルを向かい入れていた。
大広間の謁見の場に通されてアルは王に対して礼をするわけでもなく。普通に立ったままであった。王はアルに対して何か言いたそうであったが、普通ではない雰囲気を感じ取っていた為に何もいう事は無かったが、周りの者達はそうは行かない。アルに対して猛抗議を来なった、アルは何も言わず無表情であった。
アル「言いたいことはそれだけか。」
貴族「何だと小僧、・・・・・」
アル「テトラ王に告げる。このアルフォードは義によって元ミステリア王国貴族に味方する事にした。もし万一ミステリア王国の者達を害する事があればこの私が全て受けて立つ。」
王「ままま待ってくれどうしてそうなるのだ。」
アル「10年前に少女が自殺したことを聞いた、その事に同情したからだ。」
王「・・・・・・・」
アル「その少女の自殺の原因であった貴族は当然処分されたのだろうな。もし処分がまだであれば私が手伝ってやろう。」
王「・・・・・・・」
ざわざわざわざわざわざわざわ
この場にいるテトラ貴族達に中で不安が膨張していった。アルが動けば領地が増える。この言葉はリーフ王国だけではない各国が認識している事であった。
テトラ王国貴族達は当時の記憶を思い出していた。少女を虐めていた多くの貴族は伯爵以上の者達であったそれも2,30人はいたことを覚えていた。
王「ま待ってくれ。処分はする必ずするからアルフォード殿、少ししまってくれ。」