191話 キロエ王国建国
クラリス「どうして私を生かしたの。」
アル「どうしてだろう。勿体ないと思ったからかな。」
クラリス「勿体ない?。」
ミシェル・クラリスには、元伯爵家に仕えていた元家臣たちがいる。その元家臣たちにミシェルは大事に育てられていた。物心が付き周りが自分を大事にしてくれることを理解したミシェルは家臣たちに本当のことを聞き出し、両親や兄弟の復讐を幼い頃に誓った。
そして成人して行動にでる。
家臣たちはミシェルの事を止める事が出来なかかった。生まれたばかりで親と兄弟を殺され天涯孤独となってしまったミシェルを復習をするために必死に努力をしている姿に家臣たちは涙を流していた。出来る事ならば復讐を止めさせたい、だが貴族として復讐はやらなければならない事であった。いくら平民になろうが貴族の矜持は失われてはいない。伯爵家の家臣たちも貴族と言う物を分っていたのだ。だからこそミシェルを止める事は出来なかった。
ミシェルが貴族達に近づく為の金や衣装などは全て家臣たちが用意したものであっった。
家臣たちは少ない賃金から必死に捻出した物であった。
ミシェルも大事な金だと分かっている。無駄金は使えないのだ1回の勝負で片を付けなければ家臣たちが破滅してしまう。
そしてミシェルは、ゴーマンを追い詰め殺すことが出来た。
アル「そうだよ勿体ないと思っているんだ。言葉一つで人を誘導できる。生半可な者には出来ない芸当だね。それにミシェルはかなり政治にも精通しているよね。」
ミ「そうね。政治を色々と学んだわ。そういしないと計画に支障が出たもの。」
アル「ミシェル、今度ロング帝国内に属国だけどキロエ王国が建国される。そこの宰相に成らないか。」
ミ「はっ、アルフォード様、貴方馬鹿ですか私が慣れる訳ないでしょう。」
アル「えっそんなことないでしょう。ミシェル・クラリスは先ほど処刑されたんですよ。もういないんですよ。」
ミ「います。ここにいるんですよ。アルフォード様の温情によって生かされました。家臣たちがアルフォード様に嘆願でもしたのでしょう。」
アル「よく分かっているね。クラリス家はいい家臣たちを持っているね。伯爵が死んでも忠義を貫いているんだ願いは聞いてあげたいでしょう。」
ミ「そうですね20年、家臣たちは苦労を掛けています。アルフォード様、私がその宰相を受ければ家臣たちにも爵位と領地をあげてもよろしくて。」
アル「嗚呼、宰相閣下の裁量内であれば問題はないよ。」
ミ「フフフフ、やりますわ。家臣たちは恩に報いてあげたいですもの。」
アル「そんな家臣たちであればキロエ王国は繁栄するだろう。クラリス家をキロエ王国の侯爵として宰相に任ずるよ。」
数日後、ダルメシア王国から約100人もの人々が国外に出ていった。その者達は、酒場店主、城の兵士、洋服店の者、日雇労働者や農民と職業はバラバラであった。だが皆笑顔で一緒に国外に出ていた。
そして長い旅を終えたその者達は、キロエ王国にたどり着いた。
キロエ王国はこれから始まる国である。噴火によって疲弊し、疲れている民を導いていかねばならない。その導き手が彼等である。
アルの用意した。城へと入り女性に戻ったミシェルの元へと向かう。
ミシェルを見つけると約100人の家臣たちは一斉に項垂れる。
ミシェル「よく来てくれました。」
宰相となったミシェルは、家臣一人一人に感謝の言葉をかけていく。そして爵位と領地を授けていった。領地と言っても噴火の傷跡の残っている領地である。領地経営でまた苦労をさせるのだ。ミシェルは少し申し訳に気持ちになるが、みんなで一緒に乗り越えれば豊かな土地となる事は分かっているのだ。
ミシェルは笑顔で家臣たちに話をする。
ミ「これからもお願いね。私はあなた達がいなれば生きてはいなかったでしょう。これからは貴方たちの子供や孫の為に私は尽くしていきましょう。今まで支えてくれてありがとう。」
ミシェルは家臣たちにお礼を言っていた。今まで言葉にする事は無かった。伯爵家として家臣にお礼をするなど家臣たちがゆるさなったのだ。
だが今はキロエ王国の宰相となった。本物の貴族となった事で初めて礼をしても家臣たちはもう何もいう事は無かった。
ミシェルが宰相となりキロエ王国の復興事業は加速していく。宰相と家臣団が一致団結している国である。復興が進まない訳がない。
ミシェルは、ゴーレムと民衆を巧みに使い分けて復興を進める。総人口の少ないキロエ王国であるが、人を集中的に投入していく手腕はロング帝国の役人たちをうならせていた。自分たちも同じ条件で復興を行なっていたから分かるのだ。この宰相はただ者ではない事が分かりロング帝国へと報告がなされていく。
ロング帝国もミシェルに注目するようになっていく。
突然現れた凄腕の宰相の噂は遠くダルメシア王国に迄広がっていった。男と女の違いはあるが名前が同じことである伝説が生まれていた。
平民に落とされた幼い主君を守り、育てていく物語であった。笑いあり、苦労ありのその物語は幼子が成長していき、最後は宰相に迄上り詰めるサクセスストーリーであった。ある一つの劇団がこの物語を各地で公演していったことで世界中で劇として公演されていく。人々は豪快でお涙ありのハッピーエンドで終わるこの劇が好かれていた。
そしてこの劇の事を知ったある一人の女性は恥ずかしさで悶えていたと言う。
家臣たちは温かい目で見ている。その家臣たちが主役である劇も公開され家臣たちも何と言ってよいのか微妙な表情であった。
そんなキロエ王国であるが、やる時はきちんとやっている。ロング帝国の視察やティナス連合国家との同盟締結など国として着々と力をつけていく。特にロング帝国に対しては一歩も引かず強気でグイグイ行く姿がキロエ王国の民衆に受けている。この宰相ならば信頼できると早くも民衆を味方に付けてしまっている。
アルもさすがだねと褒めていた。
このサクセスストリーの他にキロエ王国建国期を題材にした活劇が、20年後に公開される。その劇は、世界中の勝算を浴びていた。宰相と100人の家臣団というタイトルであった。