177話 ダレリア王国
ダレリア王国で裁判が開かれた。その裁判は公にさらされ民衆の話題の的になっていた。
王と国の重鎮たちが裁かれることもあり、大勢の民衆が押しかけている。
この裁判前には、もう粗方の調べごとは済まされている。今日は判決を述べるだけではあるがその話題性もあって多くの注目を集めていた。
まず国の重鎮たちが民を陥れ、奴隷売買を行なっていた事だがこれは闇が深かった。もう何十年と続いていた。その間に被害にあった民の数は何千人にも上り調査も出来ない物も多くなっている。
重鎮達だけではなくこの奴隷商売は多くの商人たちも捕まり、ダレリア王国の一割の商家が無くなったと言われるほどに関係者が多岐に渡っていた。
これだけでもこの国の腐っていた物が大分浄化されただろう。
だがこの国はまだまだ多くの物が埋もれていた。
重鎮の中には貴族の娘の多くを囲っていた者も居た。地下牢に閉じ込め人としての尊厳を奪い、飼っていたのだ。助けだされた娘たちの多くは正気を失っていた。
他の重鎮たちの多くは、国と言う力、権力を使い地方の貴族家を使用人のように取り扱っていた。何故そのようになったのかそれは王が許していたからであった。この国の王は絶対権力を持っていた。少しでも逆らえば爵位を剥奪し王国軍に貴族領が蹂躙されてしまうのだ。地方貴族家一つが騒いだぐらいではどうにもならない事であった。貴族達は中央のいいなりとなり必死に税を集め貢物を納めていた。
その絶対権力の元、王族たちも好き勝手を行なっていた。ある王族は、王都でいい女を見つけて公開で犯していたと言う。そしてそのまま捨てると言う。犯されてしまった女はもう王都にも何処にも居場所がなくなり自殺をしたと言う。
またある貴族は、欲しいものが有り今金が無かった、だがほしいならばと商会を逮捕してしまった。罪はでっち上げだ。そしてそのほしい物を手に入れている。
その商会は勿論潰れてしまっている。
多くの罪が読み上げられその都度民衆から悲鳴や、喝さい何とも言えない声が聞こえてくる。
これ迄民衆は怯えて暮らしていた。王侯貴族に逆らえば一家皆殺しは当り前、よくて奴隷であった。
それがこの一月余りで大きく変わったのだ。レイモンド軍がダレリア王国と戦い勝利してから変わった。
レイモンド的には普通の事を行なっただけであった。法の下に全てをさらす。
小国群やリーフ王国では当たり前のことである。
法の下に国が存在しているのだ。たとえ王であっても法には従う事が当たり前である。
ダレリア王国では法の上に王と重鎮たちが存在していた。これでは国とは言えないだろう。
ダレリア王国は、各国に対して体裁を整えるために表面上は地方貴族達を大事に扱っているように見せていた。王都でのパーティーや各国を招いた催しに貴族達を参加させていた。裏を返せば強制であり金を搾り取っていたのだ。
地方貴族は、貧困で娘たちが売られることもあったと言う。
そんな事実をレイモンドが全て公とした救える者達は出来る限り救い出した。
もう死んでいる者も多くいたが、多くの者たちは助けられてもいた。
理不尽が通る国ダレリア王国は、王の処刑と重鎮たちの処刑を持って国として終わった。
その処刑は王都の広場で行われ多くの民衆と地方貴族達が見学に来ていた。苦しめられていた者たちが処刑される姿を見に来ていたのであった。
王や重鎮たちは処刑される寸前まで命乞いをしていた。あいつのせいだあいつが悪いとのたまわり必死に言い訳を行なっていた。その姿を見た民衆たちは怒り、そして減滅した。今までこの国の民としていたことが情けなくそして恥と思ってしまったのだ。
この奴隷売買で処分された者も多いが他に賄賂で処分された者が多かった。特に城に勤めている者達は、王都や地方のも達からの賄賂だけで豪邸が建つほどであった。何しろ賄賂を渡さなければ、貴族の貴族籍の取得も出来なかったと言う。ある貴族は、金が無く賄賂を払う事が出来なかった。その為に子供たちに貴族籍を与える事が出来なかった。そして自分が死んだときに子供たちは平民となり領地は全て没収されたと言う。こんなことが普通にまかり通っているのだ。
レイモンドは調べるだけで一月以上かかった。証拠の書類等は隠されていた物ではないすべて普通に書類として存在していた。この国では当たり前の事として行われていたのである。
新たな国としてレイモンドは、法律を王の上に置いた。法の下に王が存在すると民に告げる。そして国の運営は、貴族達の集まりによって決める事、そして平民の中から代表者を出し同じ協議を行なう事、これをティアナス連合国家と9連国が保証し監視する事を告げる。監視、指導はティアナス連合国家と9連国が各2名をこの国で常駐させると言う。決めた事の最終決定は、ティアナス連合国家の承諾が必要となる。
その為に下手なことは一切できない事になっている。いずれは完全に独立した議会が出来上がるだろう。
そしてこの初めての議会ではこの戦争の賠償問題が議題となり、国の約3分の1がクレスタ王国に割譲が決定した。この議論でクレスタ国に編入された方が国が豊かになると議論がなされていた。国の半分を割譲との話も持ち上がったが、これからダレリア王国を立て直そうと地方貴族がガンバて皆を説得していた一幕もあったと言う。
ダレリア王国の地方貴族達は自身の領地の為に身を犠牲にしてまで民の為に尽くしてきている。この国を愛していたのだ。その為に今新しい国の為に改めて尽くすのであった。
そしてこの新しい国の王はレイモンドとなっていた。アルに報告した時に、お前しかいないだろうの一言で終わってしまった。
レイモンドもこの国の行く末が気になった事もあり王となり導いていく事を決めた。余りに酷い国であった事でレイモンドとしても知らん顔は出来なかった。そして行方不明の者達の捜索もレイモンドが指導しなければ立ち消えになるだろうとの思いもあった。救える者がいなくなってはいけない。それがレイモンドの思いであった。
ダレリア王国は新たに生まれ変わりスタートを切った。