176話 ダレリアの闇
ダレリア軍本陣の抵抗は激しくしぶとかった。もう自分たちに生への執着は無くなっていた。ただの意地のみであった。敵に一矢報いる為に戦っていた。死ぬまで生き続けた、そう動けなくなるまで剣と槍を振り続けていた。
流石の兵士たちも死兵は相手に出来ない。そこはワイバーンたちに手助けをしてもらう。
死兵となってもワイバーンのは如何する事も出来なかった。口でパクリと銜えられてしまえば何も出来ない。火球で丸焼きにされてもいた。
1000人の死兵は虚しい最期を迎えていた。
3万の兵をうち破りレイモンドたちは又、王都を目指して進軍する。途中の村や町にはお触れを出し、略奪や徴収は行わない事を告げていく。告げる事で後方の反乱も事前に防げるだろう。地方の貴族達もレイモンドの軍を目にしては何も出来る事は無い。だまって通り過ぎるのを見おくていた。レイモンドも万一の事を考え貴族家から一人人質を取り従軍させた。
そして王都にたどり着くとそこにも又兵士が王都前に布陣していた。
だが少し様子が違っている。前の3万の兵士たちは兵として統率が取れていたが、今目の前にいる兵たちにはそれが見られない。答えは一つしかなかった無理やり兵として駆り出されているのだ。
レイモンドは怒りが込み挙がってきていた。かつて自分がいいように扱われ要らない物扱いを受けていた頃を思い出す。何も出来ない事で権力者にいいように使われて捨てられる。こんな事は許せない。貧乏でも個人の意思はあるのだ。必死に今を生きている者達なのだ。単なる使捨てにしていい命など一つもないのだと思うレイモンドであった。
レイ「私はレイモンドこの軍の大将だ。いいか良く聞けーーー。動かなければ見逃す。絶対に動くな。無理やり兵として連れてこられている民よ。動くなそうすれば生き延びられる。我が兵たちよ。動く敵を斬り殺せーー、突撃だーーーー。」
レイモンドのこの一言は、農民兵たちに生きる希望を見せた。単なる捨て石であったが、敵は見逃してくれることが分かったのだ。もうその言葉に縋るしか生き延びる道はなかった。農民兵たちは武器を持ったまま一歩も動かなかった。
農民兵たちをすり抜けて兵士たちは騎士や兵士に斬りかかる。騎士や兵士たちは真面な対応が出来なかった。騎士や兵士は城へ逃げ出していった。それを追う兵士団で大混戦となり混戦状態のまま城中へと突入していった。驚き混乱したのは城内者達だ。争いながら城の中に入ってきてしまっている。どうする事も出来ずに城内で戦闘が始まってしまったのだ。
もう誰も止める事は出来ない。城内では逃げ出す役人や侍女、メイドが走っている、その横で斬り合いっている。
そして抵抗している者も少なくなり、そしていなくなった。
レイモンドは城の中を捜索させる。王や重鎮たちを捕獲するためだ。
レイモンドは城中の重要そうな部屋でこの国の内情を探っている。
そして3時間ほどたった頃に兵士が確保したと報告が挙がってくる。レイモンドは書類を確認中のこともあり待たすことになる。
レイモンドは書類確認が意外に時間がかかり丸一日王や重鎮たちを放置する事になってしまった。その放置が以外と効果を上げていた。
放置されている事で王や重鎮たちの不安が蓄積されていた。悪い方向に考えが行ってしまうのだ。このまま処刑にされる。一生牢獄暮らしになる。餓死させられるなど有りとあらゆる悪い事を考えてしまっていた。レイモンドはそこ迄する考えはなかったが、一度悪い方へと考えが向いてしまうともう戻る事は無いのだろう。
丸一日が過ぎたころレイモンドは王と重鎮たちが捕えられている部屋へとやってきた。
レイモンドは書類で確認していた事の質問のためであった。ところが王や重鎮たちは死刑の宣告と勘違いしていた。
部屋に入って来たレイモンドに対して王や重鎮たちが言い訳を言い始めた。本当は戦う気は無かった。貴族が先走りクレスタ王国に攻め込んだ。王国は止めようとしていた。王国は悪くない。あの貴族はもう処分したから王国には罪は無くなった。と色々と言い訳をしていた。レオモン度は黙って最後まで聞いていたが、それが王たちには不気味に映っていた。何も言わないレイモンドにさらに言い訳をする王や重鎮たちの姿は大国の王ではなかった。
レイ「えーーっと、要は自分たちは悪くなと言いたいのですか。」
重鎮「そうだそうなんだ。」
レイ「悪くない訳ないでしょう。クレスタ王国に攻め込んで、3万の兵を戦わせたんですよ。国としての責任はあるでしょう、その国の貴方は重鎮ではないのですか。」
重鎮「・・・・・」
レイ「此処にいる者達は、基本裁判にて裁きます。罪を認めた者は減刑も検討します。認めない者はまぁそのままの処分ですが、家族も処分対象となります。それと、貴族爵位は剥奪、領地は没収となります。」
此処で王たちは大きな勘違いをした。裁判と言われた事で安心したのだ。この国の裁判制度は自国の自国の事だけあってよく知っている。権力と金さえあれば嘘が真実する事が出来るのだ。
だがその勘違いは直ぐに解る事となっる。
レイモンドは手配した裁判官はティナス連合国家の裁判官たちであった。
自国の裁判官ではなかった事は翌日に分かった。裁判の日時が決まり、伝えた所驚いていたのだ、自国の裁判官たちに根回しを行なっている最中の事であった。
正直他国から裁判官が来るとは思ってもいなかったようだ。考えれば当たり前のことである。自国の事を他国が関係してるのだ自国だけで処理できるはずがないのである。
そしてこの事実が分かると王と重鎮たちが騒ぎ出していた。自分たちの思惑が外れた事で焦ってしまったのだ。もう捕まった時点で全てが終わっている事に気付いてもいない。
まだ自分たちが国を動かしていると大きな勘違いをしているようだ。
レイモンドはこの戦争だけではなく、ダレリア王国の闇の中まで裁判の場で決着をつけさせるつもりであった。レイモンドが書類を調べていると色々な事が分かって来た。この国では闇で奴隷商売が成り立っていた。貴族達が手を結び民たちを奴隷として売りさばていた。その事は王族たちも知っているのだ、賄賂と言う利権を貰い。黙っていたのだ。他にも商人と結託をして幾つもの村を潰している。奴隷も確保できる、土地も確保でき一石二鳥であったようだ。取られた土地の貴族もかなり痛い目にあっていたようだ。王国の重鎮たちは一大派閥を形成して好き勝手に振舞っていたようだ。
その事実を公にするためにレイモンドは少し時間を掛けてしまっていた。