175話 ダレリア王国軍対レイモンド軍
レイモンドと兵士団は、ダレリア王国内に入っていた。
国境での抵抗はなかった。王都へ向かう途中の村もレイモンドが触れを出し問題なく通過をしていた。
レイモンドはダレリア王国民への一切の略奪等の行為を禁止ていた。兵士たちも素直に従い各村人たちも一安心していた。これはアルから指示もあった。
ダレリア王国に入り順調に進軍をしていたが、やはりダレリア王国軍が待ち構えていた。国境より二日の距離であった。そこは平原が広がり戦場としては最高の場所だろう。
ダレリア王国軍は3万もの兵を繰り出していた。そこには少し事情があった。
ダレリア王国国王は、クレスタ王国へに進軍に激怒していた。こんな陳腐な策でクレスタ王国に侵略など考えられなかった。乗ってしまった貴族はすでに処刑していたが、それだけでは終わる事は無い。クレスタ王国の母体であるフェアネス王国が進軍してくることは分かり切っている。その対策を協議しなくてはならないのに、貴族達はやれ戦争は拙いだの、降伏して条件はとか、軍人たちは戦を推進している。まぁ好き勝手にほざいていた。
王は、アル自身がこのダレリア王国に来なかった事で少し安心していた。ここで一戦し勝つことでダレリア王国の強さを各国にしめす事が出来ると思っていたのだ。負けるとは微塵も思っていなかった。何せ進軍してきた兵が6000とワイバーンだけであると報告が来ていたからだ。ワイバーンは少し厄介だが、そんなに数が居なとの報告であったために見逃してしまっていた。
6000に対してこちらは3万も兵が用意できることで余裕が出来ていた。
5倍もの兵力差があり、アルがいない事で戦争に大きく舵を切ってしまった。
王は貴族達を一喝した。そして貴族達は王に従う姿勢を示す。好き勝手を言っていた貴族達であるが大国ダレリア王国は負けないと自負があった。小国群の国などに嘗められて殻に閉じこもる事等出来るはずがない。
此処は王を中心に一致団結してフィアネス王国軍をうち破る事になった。
此処でも小国を馬鹿にした意識が抜けてはいなかった。もう時代が違う事に気付いてもいなかった。
3万の兵はこの広い平原に3つの集団に別れていた。一つの集団で1万で布陣している。対するレイモンド軍は、1000の兵が6つに分かれていた。レイモンド自身も100人程度の兵を率いている。
レイモンドは1000人隊長6人を呼び出し指示を出す。1000隊3つで敵の左翼に当たる。もう3つは中央に当たる。残る右翼はワイバーン隊とレイモンドたちのが対応すると伝える。
各隊は作戦を決めて各自が対応をするとした。
各兵団長(隊長)達は作戦を煮詰めていった。そして愈々戦闘が始まろうとしていた。
兵士団たちは中央と左翼に向かって一斉に駆けだす。それを見ていた敵の2つの集団も兵団へと向かっていった。両集団は真正面からぶつかった。3000隊10000の真正面からの激突でダレリア王国軍は直ぐに決着が着くと思っていたが敵3000に押されている事に気付き慌てた。まさかたかが3000に一万の兵が押し込まれるとは思わなったようだ。
3倍以上の兵がいながら力で負けてしまっている。この事実に敵軍指揮官は納得が出来なかった。まぁ納得が出来ないからと言って結果が変わる訳ではない。事実を受け止め対応しなければならないのだ。だがそれが一歩遅れ、また一歩遅れていく。納得できない事が更に納得できなくなっていき、一歩も二歩も対応が遅れていった。そして徐々に崩壊していく。
兵士たちは、剣と槍で相手の騎士や兵士を次々と串刺しにしていく。面白いようにブスブスと刺さっていく。最初は兵たちも何かの作戦かと思っていたようだが、敵が弱兵だと分かるとそれまで以上に勢いがついて行った。
アルのフェアネス兵団は強い。もうその辺の騎士や兵では絶対に敵わなくなっていた。身体強化は独自で取得する者も多く、剣のスキルも独自で取得する者が約半数を占めている。スキルオーブも貰えるが、どうしても自力で取れない者達がだけが使用しているのだ。真の実力者たちがこの集団となっている。そこに鱗の盾は強制で使われている。守りも出来、攻撃職は強力とあれば負ける事がない。3倍程度ならば一人3人殺せば終わりであった。
そしてこの戦いでも兵団たちの競争となっていた。先頭集団はいい、敵が豊富なのだからだが後ろを走ってきている者達はいくらは走っても敵にたどり着くとが無かった。前を走る味方が皆殺しにしているのだ。敵に遭遇する事はできない。
1万の兵力で真正面から当たったが真面に戦う事の出来ずに兵たちは逃げ出した。それを追う形になった兵団も各小隊に別れ追撃に入る。各小隊は10人から20人の集団となり各地に散らばっていく。
残りのもう一つの1万もレイモンド率いる100人とワオバーンたちに翻弄されていた。レイモンドは正面から100人で斬り込んでいった。敵1万の兵士たちは100人で向かってくる集団を余裕を持って待ち構えたが、突然上空からワイバーンの攻撃を受け大混乱になった。ワイバーンからは火球が撃ち込まれパニックとなっていた。
火球をうち込み、敵襲集団に急降下で襲い掛かる。そのすきをついてレイモンドと100人が敵1万へと突入した。レイモンドたちは皆、達人級の者たちであった。走りながら敵を斬る。斬る。斬る。そしてとまらない。戦い中走り回る。10人20人と斬ると剣はもうボロボロとなってしまう。その剣は捨て、アイテムボックスクスから新しい剣を取り出し又敵を斬り殺していく。流れるような作業はもはや芸術的であった。
1万の敵は逃げ出したいがワイバーンが周りを包囲するように飛び回っている事で逃げ出す事も出来なくなっていた。そして1万の兵たちは、3000迄減り、2000になり、1000にまで減ってしまっていた。そこでレイモンドたち100人が敵本陣にたどり着いたのだ。敵本陣は1000人で守っていた。ぐるりと円形に陣を組んでいた。逃げる事を諦めているようだ。ここで最後まで戦う事を決断したようであった。