174話 セント王国の最後
ドバーン。大きな音を立てて扉が壊れる。
壊れた扉の先には、セント王国の重鎮たちが勢ぞろいしている。
アル達4人は、無言で重鎮達に近づいていく。重鎮たちは逃げ出そうとするが上手く体を動かせないようだ。恐怖で体が膠着している。
アルが重鎮の一人を斬り殺す。その重鎮は驚いた顔をしたまま首が床に転がっている。
その首を見た他の重鎮たちは、悲鳴を挙げていた。
「「「「ひぃ。」」」」
二人目を斬り殺そうとアルが重鎮たちを選んでいるとセント王が。アルに対して降伏の意志を伝える。
王セント王「ここ降伏する。」
アルの件がピタリと止まる。
狙われた重鎮は命拾いをしたが、下半身から水を噴き出していた為に恥辱の表情を浮かべていた。
見事な床に水たまりを造っていた。
アル「降伏するだと、誰が誰に降伏するのだ。言え。」怒りに満ちたアルの言葉に王は怯んでいた。こんな表情をしたアルを見た事が無かったのだ、いつも王たちの調整役をしている困った顔のアルしか知らなかったからだ、こんなに恐ろしい顔をいままで観た事が無かった。
王「セントお王国は、フェアネスおおお王国に降伏する。」
アルが、水たまり貴族の首を撥ねる。
王「えっ、ええええっ。」
アル「俺は、今クレスタ王国の人間だ。クレスタとは戦争中だ。」
王「えっあっああ、くくくクレスタ王国にこ降伏します。降伏します。」
アル「降伏の条件は。」
王「む無条件でここ降伏します。」
アルはこの場にイスとテーブルを用意させた。死体はそのまま放置状態だ。
アル達4人だけが椅子に座る。
アル「無条件降伏だ、王を含めすべて処刑とする。以上。」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
貴族「私はこの戦争を一貫して反対だった。だから助けてくれ。」
と一人が喋り出すと
貴族「わ私も反対だった。王は処刑でいいから。反対した者だけは助けてくれ。」
重鎮「王は処刑でいい、だだだが国を運営すには人が必要だ。助けてくれ。」
貴族「お助け下さい、何でもします。二度と逆らいません。お願いします。」
王「ふ普通はむ無条件こ降伏で、でもこ考慮するだろう。し処刑はないだろう。」
アル「無条件降伏の意味も分からんらしいな。お前は無条件降伏をしたんだ。」
王「・・・・だだが処刑とは・・・・」
アル「クレスタ王国に戦争を仕掛けてたのだ。セント王国が滅ぼされても仕方あるまい。」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
もうそれは酷い物であった。罵り合いは当り前、命乞いのためには何でもすると訴え、果てはアルの靴までなめると言う始末であった。誰も国の事等一切触れずにひたすら命乞いだけであった。
アルはクレスタ王を見る。クレスタ王も困り顔をしている。
ジョージ「アル様に全てお任せします。」
アル「命を助ければ何でもするのか。」
「「「「「します。何でもします。」」」」」
今この場には多くのも達がいる。アル達とセント王国諸侯と城で働く者達がいた。この王国諸侯の言葉に城で働く者達は少なくないショックを受けていた。
これが今まで出仕えてきた主の本当の姿だった事に幻滅をしていた。
アル「では戦争奴隷だな。」
「「「「・・・・・・・・・」」」」
アル「生きられるのだ。それでいいだろう。」
そして又アルに対して交渉?罵り合いなど騒ぎ出した。アルは少し面白くなっていた。これほど素直に重い通りの反応を示す者もそう居ないだろう。
この諸侯たちは処刑から戦争奴隷に格上げしたことでもう少し何とかなるのでは希望が湧いてきた。必死に他の貴族達をけなし蹴落とそうと罵る。王も負けてはいない。必死に自分は関係が無かったとアピールしている。
そして一般の平民して重労働となり、それでも必死に追いすがる貴族達にアルも困った顔を見せる。これは行けると判断した貴族達は又必死でお願いをしていく。
等々貴族達は勝ち取った。村一つの領主、爵位もない平民の領主だ。
それでもこの貴族達は非常に満足顔であった。処刑から戦争奴隷、平民の重労働から普通の平民、そして村一つの領主を己の交渉(?)で勝ち取ったのだ。満足顔も仕方がないだろう。
アルの誘導の元、貴族達は好きな村を自領とするために選ぶ。そして他は自ら放棄する書類にサインをしていく。王も同じだが王は村二つに格上げをしていた。王はもの凄く満足げな表情をしている。他と扱いが違う事に満足しているのだ。少しうれしそうであった。
そしてセント王国の降伏の条件が整った。王はセント王国王として最後の仕事を行なう。
降伏条文を各自が確認して記入する。
無条件降伏の特例として、王とこの場にて交渉を行なった13人の貴族は、平民となり村一つを所領とする領主とする。(王は村二つ)
王を含めた14人はある程度の資産も持ち出しの許可をだした。これは村の開発費も含めた資金であった。
この14人の中で生き残ったのは4人だけであった。14人は各村へと散っていったが、村の運営をきちんと行ったものは4人だけであった。
他は、今迄の生活から抜け出せなかったのか、村の事は後回しにして己の生活を優先していった。資産を持ち出したことである程度の生活が出来た。その為に己以外の事を考えていなかった、アルが支配したセント王国は急激に発展をしていく。一つの村はその発展から取り残され衰退をしていく村人たちはその村から一人抜け、二人抜けと段々と人が少なくなっていく。最初の頃はまだ一人、二人であったために気にも留めていなかった。だが領主が気づいた時にはもう遅かった。500人はいた村人が200人に迄減っていた。周りを見れば他の村は豊作が続いている、自分の村だけが不作となっている状態であった。
農地開発も何もしなかった事のツケが今この時にはっきりと理解できたのだった。
それからは、いくら頑張ろうが全てが遅かった。
そして最後には領主一人だけの村が残っていた。
生き残った4人は、先が少しは見えていたのだろう、持ち出した資産を農地開発に使った。アルの支配したセント王国の方針を素直に受け入れ必死に村の開発に邁進していた。村は他と同じように発展をしていった。領主の資産は無くなってしまったが、人も少しだけ増え税収もきちんと納められて少しだけ余裕のある生活が出来るようになったていた。
アルはセント王国を暫定的に自領とした。この後正式にクレスタ王国と話をしてからの決定とするためであった。




